The Commodification of Linguistic Landscape of Food Culture of Chinatown in Singapore

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  • シンガポール・チャイナタウンにおける食文化の言語景観の商品化

Abstract

<p>Ⅰ.エスニックタウンの商品としての言語景観</p><p></p><p>地理学・社会言語学で行われてきた言語景観研究は,景観において一定の同質性を有する地域に注目し事例調査を行ってきた.例えば,ワシントンD.C.のチャイナタウンに注目したLeeman and Modan(2009)は,言語景観の商品化を明らかにした.また,多文化社会であるシンガポールのチャイナタウンに注目した柿沼ほか(2021)は,ショップハウス群における商業的利用の現況と言語景観の地理的分布を明らかにした.これらの先行研究から示されるのは,エスニックタウンにおいて言語は商品となり得るということである.言語と同様にシンガポールのチャイナタウンにおいて顕著である食文化の言語景観に注目すると,観光客向けの店舗が中国語で表記される傾向にあることがみえてくる.</p><p></p><p>食文化の商品化に関しては,観光人類学や文化地理学分野において,その商品化の観点から述べられてきており,池田(2013)は食文化の商品化のプロセスとその特徴を明らかにした。しかし景観的側面に着目した研究は少ない.そこで,本研究では,シンガポールのチャイナタウンにおける食文化の商品化において言語景観が果たす役割を明らかにする.</p><p></p><p>Ⅱ. 調査対象地域と調査方法</p><p></p><p>チャイナタウンはシンガポールの歴史保存地域に指定されており,4つのサブゾーン(Kreta Ayer,Telok Ayer,Bukit Pasoh,Tanjong Pagar)により構成される.本調査では,調査対象地としてAmoy St(以下A.St),Mosque St(以下M.St),Tanjong Pagar Rd(以下 TP.Rd),Nankin St(以下N.St),Keong Saik Rd(以下KS.Rd)の計5通りを選出し,Google Street Viewを用いてオンライン調査を実施し,業種,看板店舗で表示される言語数・言語種,食ジャンル・料理種について情報を得た.なお,言語表記の判別方法はShang and Guo(2016)を参考に,主言語・副言語の2分類を行った.なお,本研究の萌芽的調査である柿沼ほか(2021)では,シンガポール歴史保存地域である3街区(Telok Ayer,Kreta Ayer,Tanjong Pagar)における主要3通り(A.St,M.St,TP.Rd)の調査報告を行ったが,本発表は加えてBukit Pasoh街区の代表的通りであるKS.Rd,およびチャイナタウン北東部に位置するN.Stを補足した点にデータの新規性がある.</p><p></p><p>Ⅲ.言語景観にみるエスニックタウンの食文化</p><p></p><p> 調査対象とした飲食店は127件であり,料理店をジャンル別にみると,中華料理店28件(約22%),韓国料理店24件(約19%),日本料理店13件(約10%),その他の料理店(イタリア料理店が最も多く4件,次にインド料理店が3件,フランス料理店が2件)で36件,カフェ・バー26件(約20%)が所在する.なお,その他の料理店は,融合料理やインドネシア料理,ベトナム料理などその種類は多岐にわたる.そのうち主言語として中国語を使用する中華料理店は22件と中華料理店全体の約79%を,また,主言語として韓国語を使用する韓国料理店は16件と韓国料理店全体の約67%,日本語を主言語として使用する日本料理店は12件と日本料理店全体の約92%を占める.その他の料理店では,イタリア料理店においてイタリア語を主言語として使用している店舗が3件と,イタリア料理店全体の75%を占める.以上から,料理店ジャンルと言語景観には一定の相関関係がみられる.英語を主言語として使用している店舗が26件とその他の料理店全体の約72%を占める.また,カフェ・バーでは主言語が英語の店舗が24件と約92%が英語を使用する.</p><p></p><p> 今回の調査では,食文化が多様であるチャイナタウンの料理店ジャンルと言語の関連性が確認できた.今後は,言語種にとどまらず,カタカナやローマ字といった言語表記の判別を進める.</p>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390571007537005568
  • NII Article ID
    130008093120
  • DOI
    10.14866/ajg.2021a.0_77
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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