日本人女性労働者の就労上課題となる生物心理社会的な要因,制度利用状況,期待する職場での研究テーマのニーズ:患者・市民参画(PPI: Patient and Public Involvement)の枠組みを用いたインターネット調査による横断研究

  • 佐々木 那津
    東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
  • 津野 香奈美
    神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科
  • 日高 結衣
    東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
  • 安藤 絵美子
    国立がん研究センターがん対策研究所
  • 浅井 裕美
    東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
  • 櫻谷 あすか
    東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座公衆衛生学分野
  • 日野 亜弥子
    産業医科大学産業生態科学研究所産業精神保健学研究室
  • 井上 嶺子
    北里大学医学部公衆衛生学単位
  • 今村 幸太郎
    東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 アムステルダム自由大学行動運動科学部臨床神経発達心理学
  • 渡辺 和広
    北里大学医学部公衆衛生学単位
  • 堤 明純
    北里大学医学部公衆衛生学単位
  • 川上 憲人
    東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Expected research in the workplace among Japanese female workers: A cross-sectional online survey based on the framework of patient and public involvement
  • ニホンジン ジョセイ ロウドウシャ ノ シュウロウ ジョウ カダイ ト ナル セイブツ シンリ シャカイテキ ナ ヨウイン,セイド リヨウ ジョウキョウ,キタイ スル ショクバ デ ノ ケンキュウ テーマ ノ ニーズ : カンジャ ・ シミン サンカク(PPI: Patient and Public Involvement)ノ ワクグミ オ モチイタ インターネット チョウサ ニ ヨル オウダン ケンキュウ

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抄録

<p>目的:本研究では,医学研究における患者・市民参画(PPI: Patient and Public Involvement)の枠組みを用いて日本人女性労働者の就労上の悩みと期待する職場での研究を把握し,研究の課題発見と優先順位を決定する.対象と方法:日本の女性労働者を対象に,インターネット調査を利用した横断研究を行った.独自の調査票を用いて「女性労働者の就労上課題となる生物心理社会的な要因(身体症状,精神症状,月経の悩み,妊娠・出産の悩み,ワーク・ライフ・バランスなど)」,「女性労働者が活用できる制度の利用状況」,女性労働者が「期待する職場での研究テーマのニーズ」を尋ねた.「就労上課題となる生物心理社会的な要因」と「期待する職場での研究テーマのニーズ」は基本的属性(年齢,配偶者の有無,子どもの有無,未就学児同居の有無,勤務形態,職種)別にχ2 検定および残差分析を行い,また期待する職場での研究テーマとして頻度の高い4項目に関して症状の有無との関連をχ2 検定で検討した.調査は2019年7月に実施した.結果:本調査では416名から回答を得た.就労上課題となる生物心理社会的な要因として,なんらかの就労に支障がある症状を持つ者の割合は,身体症状(89%),月経に関する悩み(65%),精神症状(49%),ワーク・ライフ・バランスの悩み(39%),妊娠出産に伴うキャリアの悩み(38%)の順で多かった.制度利用の状況として,回答者本人の利用率は不妊治療連絡カード(0%),フレックスタイムやテレワーク(1~3%),生理休暇(4%),短時間勤務制度(8%)であった.期待する職場での研究は,「肩こりや腰痛をやわらげる研究」(45%),「女性のメンタルヘルスを向上させる研究」(41%),「月経と仕事のパフォーマンスに関する研究」(35%),「ワーク・ライフ・バランスを向上させる研究」(34%)の順に多かった.20代/30代・配偶者がいない・こどもがいない・フルタイム勤務という要因をもつ対象者では「メンタルヘルス」と「月経」に関する研究への期待が高かった.未就学児同居の対象者では「産後の精神的な支援」「産後の身体的な支援」「産後うつ予防」の研究への期待が有意に高かったが,「ワーク・ライフ・バランス」に関する研究への期待は有意差がなかった.月経の悩みやワーク・ライフ・バランスの課題を抱えていることと,それらの研究を期待することには有意な関連が見られたが,有症状者のうち介入を期待した者の割合はいずれも48%であった.男性労働者にも共通する心身の課題を除くと月経に関する悩みは最も頻度の高い女性労働者の就労上課題となる生物心理社会的な要因であった.考察と結論:就労上困難を感じる症状として月経に関連したものは頻度も高く,女性労働者の健康課題として婦人科に関連した心身の状態は今後研究の対象となることが期待された.しかし,悩みや困難を抱えていることと職場での研究を希望しているかどうかについては,個別の文脈で慎重に検討する必要があると考えられる.</p>

収録刊行物

  • 産業衛生学雑誌

    産業衛生学雑誌 63 (6), 275-290, 2021-11-20

    公益社団法人 日本産業衛生学会

参考文献 (7)*注記

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