北西太平洋の台風通過に伴って生じる気象庁準リアルタイム版全球海面水温解析のバイアス

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  • Bias in Near-Real-Time Global Sea Surface Temperature Analysis of Japan Meteorological Agency Associated with Tropical Cyclone Passages in Western North Pacific

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抄録

<p> 気象庁の全球日別海面水温解析の準リアルタイム版(以下、R-MGD)では、解析時間の前に得られた観測データに短時間スケールの変動を落とすようなフィルタを適用している。そのため、台風の通過に伴う急激な海面水温の変化がバイアスを生むと考えられる。本研究では、R-MGDの現場観測に対するバイアスを、北西太平洋における台風の通過に沿って定量化した。初めに、2020年8月~9月にかけて立て続けに接近した3つの台風に関し、事例解析を行った。R-MGDは3つの台風の通過直後では2℃以上もの正バイアスを生じており、最後の台風が通過して1週間以上経過したのち負バイアスが観測された。R-MGDと係留ブイの比較を行ったところ、短時間スケールを落とすフィルタリングと解析時間の前に得られたデータを用いていることで、バイアスが説明できた。次に、2015年5月から2020年10月の期間でコンポジット解析を行ったところ、台風最接近の1日前から4日後までに統計的に有意な正バイアス、台風最接近の7日後から14日後までに統計的に有意な負バイアスが、台風から500 kmの範囲内で検出された。正バイアスは、冷たい亜表層の水と激しい台風の通過に伴って生じやすく、とりわけ、黒潮と黒潮続流域を除く中緯度帯で大きくなっていた。また、R-MGDの解析時間の72時間前までに得られた現場観測を追加の最適内挿法で同化することにより、バイアスは軽減されることが分かった。これは、この過程により短周期の変動が復元されたためである。台風予報への影響評価および最適内挿法の独立な観測に対する検証も実施した。</p>

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 100 (2), 321-341, 2022

    公益社団法人 日本気象学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (37)*注記

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