日光杉並木の保護(1)

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抄録

日光杉並木は,生育環境の悪化等により本数が年々減少しており,樹勢の衰退も進行している。道路敷確保のため掘り下げられて,根系生息域が犠牲になっている杉並木内において,道路機能を満たしつつ,根の張る領域を最大限に確保するため,新たな樹勢回復事業を実施することとなり,実際に事業で適用するための工法について検討した。根系生息域の拡大と道路機能を両立させる方法として,例えば,道路を橋梁構造にして,道路下に根の張る領域を確保し,道路機能との両立を図る方法がある。しかし,PC杭工法による橋梁の施工は,杭打機を含めた作業ヤードの確保が困難であり,単価も高く,施工性と経済性の両面から実施が困難である。そこで種々検討した結果,路床の支持体として中空コンクリートブロック既製品(商品名:ポカラ)を利用することにより,施工性・経済性が改善され,支持強度・根系生息域の確保とも十分な性能が得られた。このブロックは,一辺が120cmの立方体のコンクリートを,三方から直径95cmの円柱でくり抜いた形状をしている。一方,樹勢回復のためには,吸収根の生息域として深さ約1m程度確保されればほぼ十分と考えられる。並木内の道路の不透水層である舗装と側溝を破砕・除去し,砂基礎を固め,ポカラを敷設し,ポカラの内外を改良土壌で充填し,ポカラの上にコンクリート有孔床版を設置し,路盤に砕石を敷いた上を透水性舗装で仕上げる。ポカラの中と周囲は,改良土壌(牛糞堆肥10%,杉皮土壌改良材10%,粒状木炭5%,黒ボク土75%混合)を充填する。本工法の施工により,切土された部分を盛土・復元し,昔の道形に近づけられるため,街道景観の復元の観点からも,望ましい工法であると考えられる。中空コンクリートブロック工法による樹勢回復事業は,平成10年度~12年度に,日光杉並木保護財団により,今市市瀬川地区において,総延長255mが施工された。掘り下げられていた旧道敷部分が復元され,事業施工後には自然な杉並木街道に見えるようになった。

収録刊行物

  • 研究報告

    研究報告 (18), 43-61, 2003-03

    栃木県林業センター

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