岩手県盛岡市の交信攪乱剤設置リンゴ園におけるモモシンクイガの被害と補完防除の効果

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抄録

モモシンクイガCarposina sasakiiは幼虫がリンゴの果実内を食害する。この害虫により加害された果実は商品価値がなくなる(4)。さらに外観は健全に見えても内部を食害された果実が発生することがあり,このような果実が市場で販売された場合,産地の信用問題にもなる。このようなことから,リンゴではこの害虫の防除が最も重要視される。モモシンクイガの幼虫は果実内に,老熟幼虫は果実から脱出後土中に生息し,そこで蛹化するため,これらステージを通常の薬剤散布で防除することができない。このため,成虫の産卵防止,卵,ふ化直後の食入前の幼虫が防除対象となる。本種成虫は6月から8月にかけてほぼ絶え間なく発生し産卵することから,成虫の発生期間中10~15日間隔で殺虫剤を散布して防除する必要がある(4)。近年開発された複合交信攪乱剤アリマルア・オリフルア・トートリルア・ピーチフルア剤(コンフューザーAA)はモモシンクイガに対しでも登録があり,本剤を利用することでモモシンクイガ密度が低い時期の防除を省き,殺虫剤の散布回数削減につながることが期待される。慣行防除条件下では通常モモシンクイガ密度が低く抑えられていることから,そのような圃場において交信攪乱剤を設置しモモシンクイガの発生にあわせた減農薬防除体系に変更しでも問題は少ないと考えられるが(2,5),このことを調査した報告例はまだ少ない。今回コンフューザーAAを設置し,補完防除を実施した圃場と未実施の圃場でモモシンクイガの被害を2年間調査し,防除未実施の圃場では2年後に本種による被害が多発したが,当該圃場を翌年以降3年間にわたって補完防除を実施することで被害を抑えることができたことから,その結果を報告する。

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