環境こだわり農業における温室効果ガス排出のLCA評価

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抄録

滋賀県の環境こだわり農業における農産物栽培基準において,化学合成農薬の延べ使用成分数および化学肥料の窒素成分量を慣行の5割以下とする取組(以下,5割低減の取組)は,重要な栽培要件である(滋賀県,2010)。5割低減の取組は,国の環境保全型農業直接支援対策においても,地球温暖化防止を目的とした農地土壌への炭素貯留に効果の高い緑肥などの作付けとともに,支援要件に含まれている(農林水産省,2012)。そこで,5割低減の取組は,緑肥などの作付けと同様に地球温暖化防止に有効か否かという点にも着目する必要がある。これまで,わが国の農業分野における温室効果ガス排出に寄与が大である水稲栽培を対象として,環境保全型農業の環境影響評価が行われてきた(例えば,黒澤ら,2007;椛島・吉川,2010;Hokazono and Hayashi,2012)。先行研究のうち,椛島・吉川(2010)およびHokazono and Hayashi(2012)は,5割低減の取組を行う水稲栽培を評価対象に含めているが,5割低減の取組が水稲栽培の温室効果ガス排出にどのような影響を及ぼすのかという点に対しては,分析の焦点を当てていない。本稿の課題は,化学合成農薬の延べ使用成分数および化学肥料の窒素成分量を慣行の5割以下とする取組が水稲栽培の温室効果ガス排出に及ぼす影響を明らかにすることである。分析手法には,農業生産活動の環境影響評価に用いられているLCA(ライフサイクルアセスメント)を適用する。以下では,2008~2010年を対象年次とし,環境こだわり農業に取り組む滋賀県のA集落営農による水稲栽培(以下,こだわり栽培)と農林水産省「米生産費統計」の近畿地域平均(以下,慣行栽培)を評価対象とする。なお,本稿では,年次別に推計した温室効果ガス排出量の年平均値にもとづいて,両栽培体系間の比較を行った。

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