階層混交したスギ不成績人工林の構造と取り扱い方について

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タイトル別名
  • Management and Structure of Sugi (Cryptomeria japonica) Poor Plantation Stratified-Mixed with Native Tree
  • カイソウ コンコウシタ スギ フセイセキ ジンコウリン ノ コウゾウ ト トリ

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抄録

林種転換にもとづく不成績造林地は日本の各地に多くみられるが, その林分の実態はあまり明らかでない。本報告は1988年11月, 兵庫県中央部の山崎営林署赤西国有林に存在するスギ不成績林分の構造を解析し, その取り扱い方について論議したものである。本林分はブナを主体とした広葉樹に一部スギの混交した天然林を約82ha皆伐した後, スギを約3, 000本/ha植栽し通常の下刈り, 除伐を行なって30年を経過した林分である。斜面下部の調査林分は平均樹高が約13. 2mのスギ上層木でほぼ単層状に閉鎖し, 一般の平均的なスギ林分と同様の成長をしている。これに反し斜面上部においては, 植栽木のスギはほとんど生存しているが, 雪圧によって根曲がりしたり傾斜した成長の不良な被圧木が多い。また, 樹高5m以上の上層木は全本数の30%ほどで, 主として群状に成立し, その平均樹高は下部調査地の1/2程度の6. 8mである。さらにこの造林地には下刈り終了後再生した樹高3m以上の広葉樹が10, 000本/ha以上も全層にわたって混交している。上部調査地のスギの樹高および胸高直径の本数分布はL型で, ほぼ正規分布を示す下部とは明らかに異なり連続的な複層構造となっている。広葉樹もほぼL型分布で, 大きい樹高階ほど有用広葉樹の占める割合が大きい。樹幹析解による樹高および胸高直径の成長経過から判断すると, 下部調査地のスギは継続的に良好な成長をしているに反し, 上部調査地においては植栽直後から成長の悪いスギが多いようである。このような成長不良は土壌層が浅く石礫が多い貧弱な土壌に起因するようである。したがってこの不成績造林地は適地の判断の誤りによって発生した造林失敗地であるといえる。しかし上層木のスギや有用広葉樹はこの土壌環境に応じた成長をしているので, このままの状態で推移しても若干の人工スギと天然広葉樹との混交複層林になる可能性は高く, また有用木以外の広葉樹を適宜除伐することは林業上一つの有効な方法と考えられた。

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