長野県南軽井沢に広がる浅間火山テフラに覆われた更新世最末期の埋没林

書誌事項

タイトル別名
  • Latest Pleistocene forests buried by Asama tephra in the Minami-Karuizawa basin, central Japan

この論文をさがす

抄録

浅間火山の東南部に位置する長野県北佐久郡軽井沢町の南軽井沢において,更新世最末期の埋没林の樹種を検討した。ここには浅間火山を起源とする過去25,000年にわたる多数の降下テフラと火砕流堆積物が堆積し,盆地状の地形の底にあたる部分に,標高950 mほどの平坦な面が広がっている。降下テフラ層や火砕流堆積物層の間には泥炭あるいは泥炭質の堆積物や土壌が堆積しており,しばしば埋没林を含んでいた。埋没林は浅間-雲場軽石流堆積物(As-Kb)の下位からMK-15の上位の更新世最末期の堆積物中に見られ,浅間-板鼻黄色軽石(As-YP;13,320±130~13,710±130 yBP)直下でとくに発達していた。浅間-板鼻黄色軽石(As-YP)直下の埋没林はトウヒ属とハイマツ近似種を主体とし,ネズミサシ属が伴っていた。埋没林は苔泥炭上と比べて草本泥炭上のほうが発達していた。トウヒ属とハイマツ近似種の植生が発達しない地域や層準では,トウヒ属とモミ属,カラマツ属が優占しており,乾いた立地上には現在の亜高山帯の針葉樹林のような森林が成立し,より湿った立地上にトウヒ属とハイマツ近似種の林が成立していたと想定された。As-YPで埋積された群馬県前橋市の同時期の木材化石群ではトウヒ属が優占し,カラマツ属とマツ属単維管束亜属がともなう組成となっており,この時期,針葉樹を主体とした森林がかなりの標高に渡って広がっていたことが想定された。

収録刊行物

  • 植生史研究

    植生史研究 13 (1), 13-23, 2004

    日本植生史学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ