豪雨災害の多発が市町村の防災体制改善に及ぼす影響

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  • Effect of Frequency of Heavy Rainfall Disasters on Improvements of Disaster Prevention System in Municipality Offices
  • ゴウウ サイガイ ノ タハツ ガ シチョウソン ノ ボウサイ タイセイ カイゼン ニ オヨボス エイキョウ

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抄録

<p>2004年の日本列島では多くの豪雨災害が発生し,これらの災害の被害や教訓は,繰り返し報道などで伝えられた.このような情報が,市町村の防災体制にどのような影響をもたらしたかを,市町村の防災担当者を対象としたアンケート調査によって調べた.調査票は,2004年11月に,全国の737市町村に配布し,364市町村から回答を得た.豪雨災害の頻発は,防災担当者の豪雨災害に対する関心を高めていると見なしてよい.たとえば,Yahoo!天気情報の参照頻度について,35%の市町村が「2004年の豪雨災害の前よりよく見るようになった」と回答している.また,豪雨災害による避難勧告の可能性を予想する市町村は,災害前後で10%増加している.しかし,このような関心の高まりは,具体的な対策にはつながっていない.たとえば,災害前,39%の市町村が指定避難場所の選定に浸水の影響を考慮していなかったが,災害後,見直しを行ったのはそのうち12%にすぎない.また,2003年に熊本県水俣市で発生した土石流災害では,夜間休日の市役所における初動対応についての多くの教訓が報道されたが,これらの教訓をもとに水俣市が行った対策は,ほとんど他の市町村に波及していなかった.体系的な防災研修には,15%の回答者が参加していたが,21%の回答者は研修参加経験が全くなかった.体系的研修参加者は,研修非参加者より,2004年の豪雨災害後に指定避難場所の見直しを行う率が高いなど,研修参加は一定の効果を上げている可能性がある.個々の市町村による独自の防災体制の改善,教訓の収集には限界がある.被災市町村の教訓の整理や発信とともに,国などによる教訓を生かした制度の構築が重要であろう.</p>

収録刊行物

  • 災害情報

    災害情報 4 (0), 50-61, 2006

    日本災害情報学会

被引用文献 (1)*注記

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