農山村移住・新規農林業就業をめぐる情報媒体と仲介組織

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  • ノウサンソン イジュウ シンキ ノウリンギョウ シュウギョウ オ メグル ジョウホウ バイタイ ト チュウカイ ソシキ

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抄録

近年、団塊世代の定年退職を契機に農山村への移住や二地域居住志向が高まっている。全国では農林業への就業相談会や体験ツアーが開催される他、田舎暮らしのノウハウや不動産情報を提供する雑誌等のメディアも多く見られるようになった。しかし、Iターン者や農林業就業に関する研究は積極的に成されているものの、農山村居住意向を持つ都市住民を対象にした調査分析はほとんど見られず、その全体構造は不透明である。そこで本研究では、都市住民の情報利用媒体の分析と移住希望者数の推計を行い、農山村に対する様々な需要構造の全体的把握に努めた。まず、就農林フェア来場者を対象に農山村移住志向調査を実施した結果、フェア参加者の5割以上が5年以内の移住を希望し、就農希望者では20歳代と30歳代、就林希望者では30歳代で特にその傾向が認められた。また、情報利用媒体は49%がインターネットであることが分かった。さらに、農林業就業や移住情報を提供するホームページのカウント数および雑誌の発行部数、関連する統計データを用いて都市住民の農山村居住希望者を推計した。都市住民のうち、約3,000万人が居住を希望し、彼らの情報収集媒体の内訳はインターネットが1,500万人、雑誌購読が450万人、知人・その他の情報媒体利用が1,100万人であった。一方、都市住民の農山村居住を進めるためには、情報や住居等の仲介・斡旋を行う主体の存在が不可欠である。それらの個別的な紹介は行われているものの、やはり全体像の提示が行われておらず、問題状況の把握も不十分であった。そこで西日本を中心に、居住支援に取り組む仲介組織に聞き取り調査を行い、行政、NPO、民間(企業・集落)の組織タイプ毎に利点と課題を分析した。その結果、各組織間で情報流通の齟齬が生じ、居住支援が十分でないことが明らかになった。そこで今後必要な仲介組織を検討し、円滑に移住等が進むためにはそれぞれの仲介組織、都市住民および農山村住民との連携と情報共有に努める新たな仲介組織像を提示した。

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