ユーラシア大陸の乳加工技術と乳製品(第2回)西アジア-シリアの牧畜民の事例

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  • ユーラシア大陸の乳加工技術と乳製品 : 第2回 西アジア—シリアの牧畜民の事例
  • ユーラシア タイリク ノ ニュウカコウ ギジュツ ト ニュウセイヒン ダイ2カイ ニシアジア シリア ノ ボクチクミン ノ ジレイ

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本稿では,西アジアの乳加工体系として,シリアのアラブ系牧畜民の事例を紹介する。当時,筆者は大学院を休学して,JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊に参加し,シリアで3 年間を過ごしていた。1993 年から1996 年のことである。当初は過放牧が自然環境に与える影響をアセスメントすることを目的として牧野で植生を調査していたのだが,牧野で牧畜民に出会い,その牧畜民の家畜管理の技法や生き方に魅せられ,次第に彼らの生活にはまり込んでいった。人生は出会いできまる。以後,一貫して乾燥地帯での乳文化を研究することになったのも,ベドウィン(アラブ系牧畜民)との出会いによる。シリアは牧畜の本質に乳があることを気づかせてくれたフィールドなのである。  シリアは地中海岸沿いこそ年間降水量が1000mm もあるが,内陸に入るに従って少なくなり,最も乾燥した地域では100mm を下回る(図1)。シリアは,わずか100km ほどの間に湿潤地帯から乾燥地帯までが共存している。年間降水量200mm 以下の地域では天水ではいかなる作物もできない。年間降水量200mm 以下の地域はシリアでは実に国土の55.1% をも占めており,シリアの大部分は乾燥地帯に位置している。そして,もう一つシリアの自然環境で特徴的なことは,シリアは地中海性気候にあり,乾期と雨期とがあることである。乾期に入る5月から雨期が再び始まる10 月までは降雨はほとんどない。このように,シリアの自然環境の特徴は,大部分は乾燥地帯に位置しており,夏は高温乾期・冬は低温雨期にあるといえる。  ここで紹介する乳加工体系は,シリア北東部ハッサケ市近郊の乾燥地帯での事例である。年間降水量は200 〜300mm で,天水では大麦のみ栽培が可能な地域である。この乾燥地帯で,アラブ系牧畜民バッガーラ部族Baqqara が,ヒツジ・ヤギを飼養して生業を営んでいる(写真1)。バッガーラは,アラビ半島からシリア北東部へ移動して来た当時,ヒツジ・ヤギおよびラクダを飼養する遊牧民であった。しかし,1950年頃からラクダを売却して自動車を購入し,同時にオオムギの耕作を始め,泥土の民家を建てて半定住を始めだした。本稿では,このバッガーラの乳加工体系を紹介する。

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