首都直下地震がマクロ経済に及ぼす影響についての分析

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  • Simulation analysis of macroeconomic impact of large scale earthquake in Tokyo
  • シュト チョッカ ジシン ガ マクロ ケイザイ ニ オヨボス エイキョウ ニ ツイテ ノ ブンセキ

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抄録

中央防災会議がまとめた「首都直下地震」(東京湾北部地震M7.3)の被害想定によると、その経済的な被害は甚大となり、建物・インフラ設備の損害だけで復旧費用は66.6兆円、間接被害を加えると、経済被害は約112兆円(国内総生産の約2割)に達すると試算されている。しかし、①事実確認としての資金調達が金利、為替、物価水準などマクロ経済に与えるインパクト、②政策提言としての公債を円滑に消化するための仕組みなどについて十分な検討がなされていない。本稿では、簡単なマクロ計量モデルを用いて、首都直下地震が金利、物価、為替、失業などマクロ変数に及ぼすインパクト、具体的には、災害による資本ストックの減失、復旧・復興事業による国内需要の増加(合わせて借入の増加に伴う財政の悪化)がマクロ経済に与える影響について分析する。その際は、我が国の固有の課題への留意が必要だろう。即ち、①現行の公的債務の累積であり、②社会の高齢化(労働人口の低下)である。災害の被害の程度はこれらの進行度合いにも依存することになる。結果、「平均的」にみれは、首都直下地震の影響は限定的なことが示された。ただし、インパクトの「分布」で評価すれば、金利の急上昇、財政の破たんの確率を総じて高めることも示された。例えば、財政破綻の確率は2015年に震災のある場合、2020年時点で震災のないケースの12%から43%まで急激に高まることになる。本稿では、巨大災害の影響を抑える事前の対策とその効果についても検証する。事前策として取り上げるのは、①災害基金(キャプティブ)の積み立て、及び②財政再建である。前者は、災害の直接被害を補てんするもので、迅速な復興を促す。他方、後者は復興需要の増加による金利の上昇圧力を緩和する効果を発揮する。

収録刊行物

  • 経済分析

    経済分析 184 120-140, 2011-01

    内閣府経済社会総合研究所

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