ユーラシア大陸の乳加工技術と乳製品 : 第3回 西アジア―シリアの都市部・農村部の事例

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  • ユーラシア タイリク ノ ニュウカコウ ギジュツ ト ニュウセイヒン ダイ3カイ ニシアジア シリア ノ トシブ ノウソンブ ノ ジレイ

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本稿では,シリアの都市と農村での事例を中心にして,乳製品の種類とその製造法,そして利用のされ方について紹介する。紹介する内容は,都市の乳加工についてはシリア北西部アレッポ市で1993 年から1996 年まで長期滞在していた際に下宿していた大家家族やスークと呼ばれる商店街での聞き取り,農村に関してはアレッポ市近郊での聞き取りにもとづいている(図1)。水牛の乳を用いた乳加工は,シリア北東部のカミシリ市とマルキーエ市の農村での聞き取りによる。大家家族はアラブ系のクリスチャン家族であり,農村民はアラブ系およびクルド系のイスラム教徒である。  アレッポや首都ダマスカスなどの大都市は年間降水量300mm から400mm に位置している。これらの地域では乳牛が大規模集約的に飼養されており,農家での少頭数飼養と合わせて,年間を通して牛乳が都市に供給されている。また,シリアの大部分を占める乾燥地帯ではヒツジやヤギの飼養が中心となり,搾乳シーズンの1 月から9 月頃にかけては,羊乳(実際には山羊乳が一部混入している)でできた乳製品が都市に供給される。一般的に西アジアでは,牧畜民はもとより都市や農村の人々も,ウシよりもヒツジの乳を尊重し,ヒツジの乳製品に愛着を持っている。羊乳でできた酸乳やチーズなどの乳製品の方が牛乳のものより,こってりして美味しいという。実際に羊の乳脂率は平均7.9% であり,牛乳の平均3.8% よりも高い(Jenness and Sloan,1970)。牛乳よりも羊乳への嗜好性は確かにあるが,牛乳も羊乳も乳加工技術や乳製品はほとんど変わりない。

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