転写因子Bcl11bは腸管の恒常性維持に働き, Apc変異下の腫瘍発育を抑制する

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タイトル別名
  • テンシャ インシ Bcl11b ワ チョウカン ノ コウジョウセイ イジ ニ ハタラキ,Apc ヘンイ カ ノ シュヨウ ハツイク オ ヨクセイ スル
  • Bcl11b Transcription Factor is Required for Intestinal Homeostasis and Suppresses Adenoma Development after Apc Mutation

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抄録

Bcl11bはヒトT細胞性白血病やそのモデルであるマウス胸腺リンパ腫において, ハプロ不全ながん抑制遺伝子として発症に寄与することがわかっている. 本論文ではBcl11b機能低下モデルマウスおよびヒト大腸がん標本を利用し, Bcl11bが腸管腫瘍の発症に関与する可能性を検討した. Bcl11bの機能低下により, 小腸陰窩サイズの増大と絨毛細胞の増殖が認められ, また放射線照射後の腸管細胞増殖抑制の減弱が観察された. 腸管腫瘍発生にはβ-カテニンシグナルの関与が知られているが, 機能低下マウスでは核内β-カテニン発現細胞数が上昇する像, すなわちβ-カテニンシグナルの亢進がみられた. 培養細胞にBcl11bを導入した実験から, Bcl11bの転写抑制の標的にβ-カテニン遺伝子があることがわかった. 一方, ヒト大腸がんの74検体の変異検索を行い, 5検体に変異と15検体にLOHを見いだした. これら20のDNA変化では, LOHと変異の両方をもつ症例はなく, Bcl11bがハプロ不全ながん抑制遺伝子として働くことが示唆された. これらの結果から, Bcl11bタンパク質はWnt/β-カテニンシグナルを負に制御し, 細胞増殖抑制に働く可能性が示唆された. また, ヒト大腸がんでBCL11Bはハプロ不全ながん抑制遺伝子として働くことが示された.

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