森林生態系における生物多様性と炭素蓄積

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  • Biodiversity and carbon storage in forest ecosystems
  • シンリン セイタイケイ ニ オケル セイブツ タヨウセイ ト タンソ チクセキ

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抄録

近年、急速に生物多様性が減少しており、その影響が炭素蓄積等の生態系サービスに及ぶことが懸念されている。本総説では、森林の生物多様性と炭素蓄積の関係について、これまでの知見を整理した。生態系に含まれる生物多様性が増加すると、生物種が増えることで機能が増加し、その結果、生態系サービスが高まると考えられる(相補性効果)。光合成により固定された炭素は植物に蓄積され、森林の複雑な3次元構造や枯死木といった生息場所を供給することでほかの生物の多様性維持に貢献している。植物の多様性が炭素蓄積に及ぼす影響についてみると、草本生態系では草本の種多様性が、森林生態系では樹木とその共生菌の多様性が高いほど地上部現存量も増加することが示されている。しかし実際は種数の多寡自体よりも、種組成や機能群の多様性のほうが炭素吸収・蓄積機能に及ぼす影響が大きい可能性がわかってきた。一方、炭素排出過程である分解系では、枯死有機物中の植物種の多様性と分解速度の間や、分解者の多様性と分解速度の間には明確な関係がないようである。多様性の喪失は生物間相互作用の変化を介して生態系プロセスを変化させることから、森林生態系をセーフガードとして保全していくことが重要である。炭素蓄積の保全と森林の持続的利用を同時に管理することを目指すREDD+のような枠組みの評価にあたっては、生物多様性も含めたモニタリング方法を開発していくことが必要である。

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