脳梗塞治療におけるリポソームDDS製剤の有用性

  • 福田 達也
    静岡県立大学大学院 薬学研究院 医薬生命化学
  • 浅井 知浩
    静岡県立大学大学院 薬学研究院 医薬生命化学
  • 奥 直人
    静岡県立大学大学院 薬学研究院 医薬生命化学

書誌事項

タイトル別名
  • Usefulness of Liposomal Neuroprotectants for the Treatment of Ischemic Stroke
  • ノウ コウソク チリョウ ニ オケル リポソーム DDS セイザイ ノ ユウヨウセイ

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抄録

<p>脳梗塞は本邦において死因別死亡率第4位,要介護に至る原因疾患の第1位である脳血管疾患の約6割を占め,世界的にも克服が望まれている。臨床では,唯一の世界的な治療薬である組織プラスミノーゲン活性化因子(Tissue plasminogen activator;t-PA)製剤を用いた血栓溶解療法が,標準治療として行われている。しかし,t-PAは脳出血や脳細胞傷害を惹起する危険性に加え,有効な治療可能時間(Therapeutic time window;TTW)が発症4.5時間以内とされていることから,適応患者が限定されている。また血流再開後に生じる二次的な障害,脳虚血/再灌流障害も患者予後不良に至る一因として問題とされている。ゆえに,上記問題の改善を可能とする新たな脳保護薬の開発が切望されている。脳梗塞時の特徴的な現象として,虚血巣周辺における血液脳関門(Blood-brain barrier;BBB)の透過性亢進が挙げられる。我々はこれまでに,脳梗塞により生じたBBBの間隙に着目し,ナノサイズのリポソームが脳虚血時,および再灌流後の早期から病巣部位へ移行することを見出してきた。また,再灌流後早期からのリポソームDDSによる脳保護薬デリバリーが,脳虚血/再灌流障害の治療に有用であることを,ラット脳梗塞モデルにおける検討から明らかとしてきた。さらに,t-PAによる血流再開を再現することが可能なモデルを用い,リポソームDDS製剤の血流再開前投与によって,脳出血への関与が知られるt-PAの有害効果を軽減,そしてTTWを延長できる可能性を示してきた。本稿では,我々が見出してきたリポソームDDS製剤を用いた脳梗塞治療の有用性について概説させて頂く。</p>

収録刊行物

  • Oleoscience

    Oleoscience 17 (8), 359-366, 2017

    公益社団法人 日本油化学会

参考文献 (18)*注記

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