血液神経関門と感覚神経伝導検査

  • 桑原 聡
    千葉大学大学院医学研究院神経内科学

書誌事項

タイトル別名
  • 血液神経関門と感覚神経伝導検査 : Abnormal median-normal sural sensory responsesについて
  • ケツエキ シンケイ カンモン ト カンカク シンケイ デンドウ ケンサ : Abnormal median-normal sural sensory responses ニ ツイテ
  • Abnormal median-normal sural sensory responsesについて

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抄録

<p>末梢神経系の毛細血管には, 血液脳関門と同様の血管内皮細胞間のtight junctionが存在し, 血液神経関門 (blood-nerve barrier: BNB) と呼ばれている。このBNBが機能しているために全身循環中の自己抗体 (免疫グロブリン) などの大分子量物質は末梢神経幹には到達できない。逆にBNBは遠位部神経終末と神経根では解剖学的に欠如しており, 末梢神経を標的とする自己抗体は神経終末と神経根とに選択的にアクセスすることになる。脱髄型ギラン・バレー症候群や慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーなどの免疫介在性脱髄性ニューロパチーにおける末梢神経伝導検査では, 正中・尺骨神経の感覚神経伝導が高度に障害されるのに対して浅橈骨・腓腹神経の感覚神経活動電位は保たれる「abnormal median-normal sural sensory responses」という特殊な所見がみられ, これは検査部位と血液神経関門の位置関係により説明される。正中神経の感覚神経伝導検査では示指上に記録あるいは刺激電極を配置するが, この部位は指神経の終末部であるため脱髄病変が生じており, 電極直下で起こっている病変を反映して感覚神経活動電位は低振幅となり神経伝導速度は低下する。一方, 腓腹神経の感覚神経伝導検査における刺激・記録部位は下腿部・足首部で, 神経終末である足の外側より近位であるために, 感覚神経活動電位は正常に記録される。感覚神経伝導検査において, 免疫介在性ニューロパチーの脱髄病変部位がBNBによって規定されていることを念頭に置くことは電気診断上重要であり, 病態の理解を深める上でも有用である。</p>

収録刊行物

  • 臨床神経生理学

    臨床神経生理学 45 (4), 186-189, 2017

    一般社団法人 日本臨床神経生理学会

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