独立行政法人減損会計の課題と展望 ―適用から10 年を経過して―

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  • ドクリツ ギョウセイ ホウジン ゲンソン カイケイ ノ カダイ ト テンボウ : テキヨウ カラ 10ネン オ ケイカ シテ

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<p> 独法減損会計は,①貸借対照表に計上される固定資産の過大な帳簿価額を減額すること,②適切な業務遂行を行わなかった結果生じた減損損失を損益計算書に計上すること,③固定資産の有効利用を促進することを達成するために設定された。これらの目的が達成されているかどうか検証したところ,①と②については,減損処理の影響は貸借対照表にも損益計算書にもほとんど現れていなかった。また,③については,財務諸表に開示された会計情報の大部分は使用しないという決定を行った固定資産に関するもので,当該資産には有効利用の余地がなかった。</p><p> 評価結果の要因を明らかにするため,独法減損基準とIPSAS 21 との比較分析を行ったところ,独法減損基準は,使用中止となった固定資産しか減損処理を行わないこと,固定資産に生じた減損額の一部しか損益計算書に計上しないこと,回収可能サービス価額の回復に起因する減損の戻入れを行わないことが,課題となっていた。これらの課題を解決し,減損会計適用の効果を最大限に発揮させるために,会計基準については,IPSAS 21 を包含したIPSAS を基礎に新たな独法会計基準を設定することが考えられる。</p><p> 減損損失は,固定資産の将来の経済的便益又はサービス提供能力の損失を意味するため,その計上は,当該資産によって提供されているサービスに対する需要又は必要性の低下を意味する。このため,減損損失は独立行政法人にとっては業務運営の失敗を認めることになるが,財務諸表の利用者にとっては当該法人の業績を評価する上で重要な会計情報となる。独法減損会計が当初の目的を達成するとともに,業務運営の効率化と業績の適正な評価に資する会計情報を提供するためには,独法減損基準だけではなく,独法会計基準も含めて見直す必要がある。</p>

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