退職期における人生の目標再設定を支援する「ケアウィルプログラム」の開発と評価

書誌事項

タイトル別名
  • Development and Evaluation of the “Care Will” Program: A Preretirement Support for Goal Resetting
  • タイショクキ ニ オケル ジンセイ ノ モクヒョウ サイセッテイ オ シエン スル 「 ケアウィルプログラム 」 ノ カイハツ ト ヒョウカ

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抄録

<p>【目的】高齢化の真っただ中にある日本では,高齢者が元気で活躍できる社会の実現が謳われている.「高齢者が生きがいを持てる社会の実現」というスローガンのもと,推進される施策においては,これまで健康政策が扱ってこなかった自律性や主体性といったテーマがその要となる.我々はこうした社会の背景を踏まえ,2011年より高齢者の生きがい作りとそれを支える健康と生涯発達課題に着目し,「ケアウィル」研究を行ってきた.とりわけ第2の人生のスタート地点になる退職期に着目しサポートプログラムを実行した.【方法】今回のアクション・リサーチは退職期の支援プログラム設定という研究目的に沿って,1)プログラムの開発と実践,2)課題の抽出とフィードバック,3)評価という一連のプロセスにて行った.【結果】退職期支援プログラムとして開発されたケアウィル講座は,潜在的な意識や価値を形式知化するというプロセスを経て,目標再設定のプランを作成し,参加者同士で共有するという知識創造プロセスに沿って実施された.3回に亘る実践の検証から,退職によっておこる居場所や関係性の変化への対応を中心となる課題と位置付けると共に,実践からのフィードバックによって実存的健康への支援の重要性を認識し,それらに重点を置いたカリキュラムを構成した.プログラムの評価においては一般性自己効力感と生きがい感の向上が認められ,生きがい感の中でも「自己存在の意味」得点が上昇した.更に講座の受講前後で退職後の生活に向けた意欲が向上した.【結論】今回,3年間にわたる退職期支援のアクション・リサーチから,老後の豊かな暮らしに向けた意志を支援する「ケアウィルプログラム」の妥当性が評価された.そして何よりも退職期の支援ニーズに多く見られた実存的不安への実践的なプログラムとして一定の成果が得られた.これらの一連の研究プロセスによって,居場所や役割の移行を伴う退職を転機とした新たな人生の入り口にて,高齢期のより豊かな生活に向けた支援の重要性と有効な方法が確認された.</p>

収録刊行物

  • 全人的医療

    全人的医療 16 (1), 2-16, 2017-12-25

    公益財団法人 国際全人医療研究所

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