高等菌類による難分解性環境汚染物質の分解

  • 森 智夫
    静岡大学農学部応用生物化学科 〒422-8529 静岡市駿河区大谷836

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タイトル別名
  • Biodegradation of recalcitrant organic pollutants by higher fungi
  • コウトウ キンルイ ニ ヨル ナン ブンカイセイ カンキョウ オセン ブッシツ ノ ブンカイ

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抄録

木材腐朽担子菌や昆虫病原性子嚢菌などの子実体から胞子を放出する高等菌類の菌糸体は,生態系における分解者として機能している事が知られている.これら高等菌類は,リグニンやクチクラといった芳香族あるいは脂肪族高分子に対する優れた分解機構を保持している.高等菌類による有機汚染物質分解に関する報告は様々あり,木材腐朽菌や冬虫夏草菌による残留性有機汚染物質(POPs)―例えば,ダイオキシン類やその類縁化合物,塩素系農薬,多環式芳香族化合物(PAHs)およびネオニコチノイド系殺虫剤―の分解は既に実証されている.これらの反応では,多くの場合でチトクロムP450 酵素が初期反応を触媒しており,汚染物質の構造を変化させ,その毒性を低減する.さらに,食用キノコであるヒラタケや薬用キノコであるサナギタケが,土壌中のDDT やPAHs を分解できることも明らかになっている.この様に,キノコを含めた高等菌類は環境中のPOPsを代謝可能であることから,将来的には生物的環境修復技術の微生物源としてキノコ廃菌床の応用利用が可能となるかもしれない.

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