倉橋由美子『聖少女』論

書誌事項

タイトル別名
  • A Study of Kurahashi Yumiko's <i>Seishōjo</i>: The Masochist's Contract
  • 倉橋由美子『聖少女』論 : 契約するマゾヒスト
  • クラハシ ユミコ 『 セイショウジョ 』 ロン : ケイヤク スル マゾヒスト
  • ――契約するマゾヒスト――

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抄録

<p>本稿では、『聖少女』における「ぼく」とその姉、未紀とその父による二つの近親相姦を比較することで、少女が実の父への近親相姦的欲望を諦めることで父に似た別の男性と結婚するという、女性のエディプス・コンプレックスの克服を無批判に描いているかに見えるこの作品が、実はマゾヒストたる未紀が自らの求める苦痛=快楽のために父への近親愛や近親相姦の禁止という〈法〉さえも利用するラディカルな物語であることを明らかにした。更に、未紀は苦痛=快楽を得るために「ぼく」との結婚をマゾヒズム的な契約関係へすり替えもする。そうした未紀のマゾヒズムは、近親相姦の禁止という〈法〉が実は父権的な家族を維持するためのシステムにすぎないことを暴くと共に、男性中心的な快楽のありようや結婚という制度を内側から解体していく契機を孕んでいることを示した。</p>

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