いじめ概念の家族的類似性とその比較研究の方法

書誌事項

タイトル別名
  • How to Tackle the Family Resemblance Structure of “Bullying” in Comparative Studies
  • いじめ概念の家族的類似性とその比較研究の方法 : 定義と文脈を「セット」で捉える試み
  • イジメ ガイネン ノ カゾクテキ ルイジセイ ト ソノ ヒカク ケンキュウ ノ ホウホウ : テイギ ト ブンミャク オ 「 セット 」 デ トラエル ココロミ
  • ――A Trial Analysis Merging the Definition and Its Context as a “Set”――
  • ――定義と文脈を「セット」で捉える試み――

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抄録

<p>一九九〇年代以降、学校におけるいじめ現象を根源的に理解するために、国際的な比較研究が実施されてきた。しかし、いじめ現象は多数の社会で長期にわたって、多様な定義を加えられて研究されたり、取り組まれたりしているため、通文化的・通時的な意味の多様性を呈している。そのため、いじめの本質的属性と考えられる要素を抽出し、普遍的ないじめ定義を制定しても、その定義の適用性の問題が繰り返し指摘されている。 本稿は、多様ないじめ概念を共通の枠組みで捉えるために、「家族的類似」という考え方を援用し、従来の普遍的な定義を代替できる新たな分析道具、すなわち「いじめの認識・対策セット」という新たな分析道具を提案する。いじめの認識・対策セットとは、いじめの言語的定義と、その使用が依存している認識と対策という制度的・歴史的文脈を「セット」にして捉える分析道具である。 試験的な分析として、本稿は文部科学省によるいじめ定義の歴史的変化を対象にして、一九八〇年代から現在まで文部科学省に使用された「逸脱矯正」、「心理支援」、「リスク予防」という三種の「いじめ認識・対策セット」を整理した。 「いじめ認識・対策セット」の導入によって、いじめの言語的定義だけで表しきれない意味が読み取れるようになり、同じ文言であっても、異なった「いじめ認識・対策セット」の下で異なった意味が付与されたということが見えるようになった。また、それぞれのいじめ定義では、「行為の逸脱性」、「客観的に検証可能」、「主観的感覚」などの属性は、表現や意味合いを変えつつも共通して含まれている。いじめ概念はこうした多様な使用実践の中で、様々な定義を産出したのである。</p>

収録刊行物

  • ソシオロジ

    ソシオロジ 63 (3), 59-77, 2019-02-01

    社会学研究会

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