制度の遂行性から見た知的資産認識への課題と胎動

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  • セイド ノ スイコウセイ カラ ミタ チテキ シサン ニンシキ エ ノ カダイ ト タイドウ

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抄録

企業の知的資産は実践的観点から論じられることが多いが,本稿は主に学術的な遂行性の理論に基づき,知的資産の認識や開示を検討する。まず,特定の社会的動態を表す言説が諸制度により遂行されるという分析視座を概説し,知的資産の認識・開示に向けた制度化を捉える。その結果,例えば多くの企業に一律に適用される財務会計制度は,IFRS の任意適用の数が増加するなど,いわゆる社会のグローバル化や金融化を遂行する形で変遷を遂げてきたと解釈し得るが,知的資産の認識・開示に関する制度に関して,同様の解釈は困難であると指摘する。  その上で本稿は考察対象を拡大し,国内における人的資産情報の「見える化」と国外における「資産化」の動向を分析する。両言説(「見える化」と「資産化」)はともに修辞的に名詞化され,社会の動態をある程度描写すると考えられる。おのおのの取り組みを検討した結果,前者に関して,情報の送り手である企業と受け手である投資家の間で,期待する情報やその効果についてミスマッチが生じている点が明らかになり,社会もしくは資本市場に不可欠であるというよりは,むしろ課題が浮き彫りになった。後者については,社会学者らがあらゆる事物の資産への転換を強調しており,大きなうねりとなって社会的に受容され,関連する制度化に影響を与える可能性を秘めていると考えられる。

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