物語談話を構成する能力の発達-8歳児・9歳児のFrog Storyの分析から-

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タイトル別名
  • モノガタリ ダンワ オ コウセイ スル ノウリョク ノ ハッタツ : 8サイジ ・ 9サイジ ノ Frog Story ノ ブンセキ カラ
  • The Narrative Discourse Structures of 8- and 9-Year-Olds’ Frog Stories

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抄録

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本研究では、8歳児と9歳児の物語文の発達過程をテキストマイニングにより頻出語、及び、頻出語の共起ネットワーク等を検出して考察した。その結果、8歳児と9歳児には以下の類似した傾向が見られた。先ず、登場人物等を表す言葉に固有名が登場した。この背景には、固有名を用いることで、登場人物に人格・性格・気質のようなものを吹き込み、いわゆるキャラクター化することで存在感の感じられるものにし、物語をより身近で、独自のものにしようとする概念の発達があると考えられる。次に、物語の設定、展開、結末に至るまでの本筋を語るのに必要な動詞の使用頻度が高く、物語の局所構造、全体構造が構成されていることが示唆された。頻出語の共起ネットワークの分析から、物語の設定、展開、結末までの個々の場面を構成する語の連鎖が検出され、さらにそれらは互いに連鎖し、複数の場面を関連づけていることが分かった。特に、物語の展開の後半であるクライマックスの部分から結末(解決)に至る部分に大きな連鎖が見られた。よって、語の関連づけからも物語の局所構造だけでなく、全体構造を構成する能力の発達が示唆された。さらに、物語の進行上、後から判明した新事実から先に起こった出来事の解釈を取り消して新しく解釈し直す力(撤回; backtracking)と後から判明した新たな事実を基に二つの出来事の因果関係を結びつけ直す解釈し直す力(再構成;reorganization)の萌芽も確認された。これは、局所構造を構成する能力の中で、概念的にも言語的にも複雑な能力であるが、この物語のクライマックスの場面の構成において、これに成功しているテキストが複数見られた。また、主人公等の思考・意図・心情等の内的側面の言及にも広がりがあり、物語を牽引するモチベーションになっていることが分かった。以上は、日本語を第一言語とする子どものこの物語における発達過程について結果であり、一般化するには更なる研究が必要である。

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