典型的命令文と非典型的命令文の意味論・語用論とその棲み分け

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タイトル別名
  • Division of Labor between Semantics and Pragmatics of Canonical and Non-canonical Imperatives

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抄録

<p>近年の命令文研究における議論の主な争点として,「命令文がその意味表示(semantic denotation)としてモーダル(modals)を持つか否か」というものが存在する。いわゆるミニマル理論(Minimal Theories)では,命令文のための語用論的オブジェクトを仮定し,発話文が指示(directive)の言語行為として解釈されるメカニズムを語用論の領域で説明する(Portner 2004, 2007, von Fintel and Iatridou 2017など)。これに対してモーダル理論(Modal Theories)では,命令文の意味表示としてモーダルを仮定する立場を採用し,主として意味論の領域から命令文の振る舞いに分析を与える(Han 2000, Kaufmann 2012, Condoravdi and Lauer 2012, 2017など)。本稿では,まず,二つの異なる形式を持つ命令文の間に見られる多様な振る舞いの差を提示する。その上で,命令文における意味論的意味と語用論的意味が棲み分けされた形式的枠組みを提案し,各命令文の意味の違いを「文がモーダルを持つか否か」の観点から捉えられることを示す。本研究は,従来対立していた理論間の競合を解消し,両理論の背後にあるアイディアを統合した第三の理論として位置付けられる。また,このような理論的貢献に加えて,本研究はこれまでに焦点が当てられてこなかった典型的命令文と周辺的命令文の差異を形式意味論の見地から包括的かつ仔細に観察したものとして記述的価値を持つ。</p>

収録刊行物

  • 言語研究

    言語研究 160 (0), 155-182, 2021

    日本言語学会

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