ニワトリ胚角膜上皮の合成する硫酸化複合糖質の研究

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著者

    • 米倉, 秀人 ヨネクラ, ヒデト

書誌事項

タイトル

ニワトリ胚角膜上皮の合成する硫酸化複合糖質の研究

著者名

米倉, 秀人

著者別名

ヨネクラ, ヒデト

学位授与大学

名古屋大学

取得学位

理学博士

学位授与番号

乙第3471号

学位授与年月日

1988-11-04

注記・抄録

博士論文

発生における形態形成に、様々な複合糖質が関与していることが示されている。角膜の発生においても様々な複合糖質の関与が示唆されており、中でも、上皮が合成する硫酸化複合糖質の役割が注目される。形態形成後期において、角膜上皮は、重層化という大きな形態の変化と共にその角膜上皮の合成する硫酸化複合糖質も''an unidetified sulfated GAG''の出現と硫酸化グリコサミノグリカンの組成の逆転という大きな変化が報告されており(Heier, S. and Hay, E. D. Dev. Biol. 35,318, 1973)、その役割が特に注目される。今回、本研究において初めて、これらの硫酸化複合糖質を組織に存在しているままの分子として抽出、分就し、その性質を明らかにした。 19日ニワトリ胚角膜上皮を、[35^s]硫酸または[3^H]グルコサミンで標識し、トリトンX-100 および蛋白分解酵素阻害剤を含む4M グアニジン塩酸溶液で硫酸化複合糖質を抽出し、7M 尿素溶液に対して透析して平衡化した。この時、組織に取り込まれた35^S-、3^H-標識高分子および組織蛋白の95%以上が尿素可溶画分に回収され、角膜上皮の合成する硫酸化複合糖質を組織に存在しているままの分子として可溶化することに成功した。硫酸化複合糖質は、7M尿素存在下でのDEAE-Sepharose CL-6Bカラムにより、硫酸化糖蛋白(SGP)とプロテオグリカン(PG)とに分離された。 SGPは、角膜上皮が重層化する11日から19日の間で、合成が顕著に増大すること、そして、それは分子種の変化や硫酸化オリゴ糖鏡の構造変化をも伴っていることが明らかとなった。本研究での諸結果は、角膜上皮の重層化に伴うデスモソームおよびトノフィラメント形成の増加と並行して合成活性が増大する''an unidentified sulfated GAG''の本体がSGPであることを強く示唆した。このSGPは、N-グリコシド型と0-グリコシド型の二種の硫酸化オリゴ糖鎖を含んでおり、これまで報告されていなかった特異な硫酸化糖蛋白であることが明らかとなった。SGPは、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で、分子量の異なる以下の三群のSGP群に分離された。それは、1)分子量48,000-70,000を有し、角膜上皮のサイトケラチンと同一位置に泳動されるSGP(48K-70K SGP)、2)分子量75,000-150,000に、幅広いバンドとして存在するSGP(75K-150K SGP)、3 )分子量160,000-180,000付近に存在するSGP(160K-180K SGP)であった。本研究において、48K-70K SGPは細胞内に存在していることが示され、SDS-PAGEでサイトケラチンのバンドと一致すること、その生化学的性質および紳胞内局在が一致することから、48K-70K SGPはトノフィラメントの構成蛋白であるサイトケラチンの一部が硫酸化オリゴ糖鎖で修飾されたものであることが示唆された。また、75K-150K SGPは細胞外あるいは細胞表面に存在していることが示され、分子量とその性質が既報のデスモソーム構成糖蛋白と類似していることから、デスモソ-ム構成糖蛋白のオリゴ糖鎖が硫酸基により修飾されている可能性が示唆された。この結果、SGPの合成の増大とデスモソーム/トノフィラメント形成の増加との関係がより明確となった。160K-180K SGPは、細胞外に存在していることが示され、分子量が一致することから、基底膜を構成する分子のひとつであるエンタクチン様の分子であると考えられた。また、ニワトリ19日胚皮膚上皮も、上記の三群のSGPを合成していることが明らかとなり、上皮一般にこれらのSGPが存在している可能性が考えられた。 ニワトリ19日胚角膜上皮が合成している、もう一種の硫軟化複合糖質であるPGは、大部分がHS-PGであった。HS-PGは、いずれも鎖長約7,000-10,000のHSを持つ分子量約150,000、125,000-56,000および25,000-10,000の三種類の組織結合型HS-PGと鏡長釣4,700-7,000のHSを持ち培養液中に遊離される分子量約21,000-7,000のHS-PGの、分子量の異なる計四種類が単離された。これに対し、形態形成初期の9日胚角膜上皮が合成するPGは、それぞれ独立の分子として存在するCS-PGとHS-PGであり、CS-PGが主成分であった。CSPGは、HSと比較して顕著に大きな分子量のCSを持ち、PGとしてはHS-PGとほぼ同一の分子量を召していた。CS-PGとHS-PGは9日から11日の間でその存在比が逆転することが明らかとなった。 本研究より、角膜上皮のみならず、上皮一般で上皮の成果、完成とその維持に重要な役割を果たしている硫酸化複合糖質の化学的本体が初めて明らかとなった。

名古屋大学博士学位論文 学位の種類 : 理学博士(論文) 学位授与年月日 : 昭和63年11月4日

目次

  1. 目次 (5コマ目)
  2. 副論文 (81コマ目)
  3. 副論文 (92コマ目)
  4. 副論文 (135コマ目)
  5. 副論文 (178コマ目)
  6. 参考論文 (186コマ目)
  7. 参考論文 (199コマ目)
  8. 参考論文 (209コマ目)
  9. 参考論文 (221コマ目)
  10. 参考論文 (229コマ目)
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  13. 参考論文 (235コマ目)
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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000046772
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000046856
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000211086
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
    • NDLデジタルコレクション
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