殻の弾/粘塑性変形問題に関する研究

この論文にアクセスする

この論文をさがす

著者

    • 垰, 克己 タオ, カツミ

書誌事項

タイトル

殻の弾/粘塑性変形問題に関する研究

著者名

垰, 克己

著者別名

タオ, カツミ

学位授与大学

名古屋大学

取得学位

工学博士

学位授与番号

乙第3511号

学位授与年月日

1989-01-13

注記・抄録

博士論文

殻は機械構造物の構成要素として、従来から多方面に数多く使用されている。特に、高温高荷重の過酷な条件下では、殻は粘弾性変形や粘塑性変形をひきおこす。構造要素の安全性、信頼性と共に高経済性を追求するためには、使用材料の特性を十分把握すると同時に、材料の特性を十分生かして利用する設計が必要であり、材料の粘性の影響を考慮に入れた解析が望まれる。本研究の開始当初(1973年頃)には、殻に静的な荷重が作用する場合のクリープ変形問題や弾塑性変形問題についての多数の研究結果が報告されていたが、材料の塑性領域における粘性の影響を考慮に入れた研究は、まだ報告されていなかった。また動的荷重を受ける殻の応答問題に関しては、ひずみ速度が大きくなるため、塑性領域において粘性を考慮に入れることが必要不可欠となるが、それまでなされてきた研究のほとんどが、弾性(粘弾性)理論かあるいは塑性領域で材料の粘性を考慮しない古典的塑性理論に基づくものであった。そこで本論文では、強度上ならびに加工の容易さ等の点ですぐれた利点を持ち、過酷な条件下で数多く使用されている回転対称殻をおもに取り上げ、塑性領域における材料の粘性の影響を考慮に入れて、静的及び動的な荷重が作用する場合の弾粘塑性応答問題の理論解析を展開し、この解析法による数値解析と考察、さらに実験による解法の妥当性の検討を行った。はじめに、本論文の解析に際して、おもに以下の仮定を設けた。(1)固体は塑性変形時だけにひずみ速度依存性を示し、弾性域では依存性がないと仮定する。この変形特性は『弾/粘塑性応答』とよばれ、実際に多くの金属材料の非弾性変形挙動をモデル化するのに適用されている。(2)薄肉殻の応答問題に対しては、Kirchhoff-Loveの仮説に基づくSanders,Jr.の殻の曲げ理論を、また厚肉殻については、殻厚方向のせん断変形の影響を考慮に入れたNaghdiおよびReissnerの曲げ理論を採用する。(3)構成式には、塑性ひずみ速度が超過応力の任意の関数形として表されるPerzynaの式、および動的応答問題の一部では、関数形に指数関数を用いたFyfeの式を適用する。(4)温度等の諸環境条件は一定とする。(5)数値解法にはすべて差分法を適用する。また時間に関しては、微小時間内で粘塑性ひずみ速度を一定とし、逐次積分法により解を求める。本論文は11章から成り、第1章では、本研究の背景と目的、基本方針、および論文の構成について述べた。続く第2章から第4章では、回転対称殻に静的荷重が作用する場合の弾/粘塑性変形問題を解析し、定常状態(最終状態)に至るまでの遷移状態の様子を明かにした。構成関係式には塑性領域で粘性の影響を考慮したPerzynaの式を採用した。また計算の際の時間間隔に、Zienkiewiczらの式を用いて、計算の無駄を少なく、また誤差を小さくした。はじめに第2章では、非軸対称荷重を受ける薄肉回転対称殻の変形問題の解法を示した。Sanders,Jr.の弾性微小変形殻理論に基づくBudianskyらの数値解法を、弾/粘塑性問題に拡張した。計算例として、両端支持のアルミ円筒殻の端部に、非軸対称な曲げモーメントが時間に対して階段状に作用する問題を解析した。その結果、荷重が大きくなり降伏領域が広がってくるにつれて、粘性の影響が顕著になり、全変形中クリープ変形の占める割合が大きくなることがわかった。第3章では、殻厚の主曲率半径に対する比が1/20から1/5程度の中程度の厚さの回転対称殻に、非軸対称荷重が作用する場合の問題を取り扱った。Reissner-Naghdiの理論(ひずみ一変位関係)を採用して基礎式を導いた。計算例として、殻厚と半径の比が0.2の両端支持アルミ円筒殻を取り上げ、時間に対して階段状の局所的分布荷重が、その中央部に作用する問題を解析した。その結果、第2章で得られた知見の他に、せん断変形の影響を無視した薄肉殻理論(第2章の解法)による計算結果と比較すると、荷重が大きくなり変形が進むにつれて、変形量の大きい領域で内力の円周方向成分および変位に、両理論による差が顕著に現れ、殻厚方向のせん断変形の影響を考慮に入れた解析が不可欠であることが認められた。第4章では、直交異方性材料からなる中程度の厚さの回転対称殻の変形問題の解法を示した。第1節では軸対称荷重が作用する場合に限られるが、幾何学的非線形を考慮に入れて、比較的大きな変形問題に適用可能な解法を示し、第2節では第3章の解法を拡張して、変形量は小さいが、非軸対称荷重の場合にも適用可能な解法を示した。両者とも構成関係式には、Hillの直交異方性理論に従って、Perzynaの式を直交異方性の場合に拡張したものを用い、厚肉の場合に考慮すべきせん断変形には、Reissner-Naghdiの理論を採用した。また、第1、2節の両理論について、両端自由のチタン円筒殻中央部に、軸対称荷重を加えた実験ならびに局所的分布荷重を加えた実験を行い、円筒殻外表面のひずみの時間的変化を求め、計算結果との比較検討を行った。その結果、実験値と計算値は、ひずみの分布ならびに各点のひずみの時間的変化とも、荷重負荷部近傍を除いてかなりよく一致しており、解法の妥当性が確かめられた。さらに薄肉殻理論による解と本理論による解との間には差が見られ、その大きさは、応力とひずみが共に大きな値を示す位置で大きく、殻厚と半径の比が0.12程度の円筒殻では、せん断変形の影響を考慮に入れた厚肉殻理論の適用が不可欠であることが明かになった。さらに第5章から第10章では、動的荷重を受ける殻の弾/粘塑性応答問題を取り扱った。第5章では薄肉回転対称殻に、さらに第6章では一般の任意形状を有する薄肉殻に、一般の非軸対称な衝撃荷重が作用する場合を取り上げ、その弾/粘塑性応答の解析方法を示した。殻の運動方程式には、Sanders,Jr.の非線形理論式に慣性項を加えたものを用い、またひずみ一変位式には、膜ひずみに殻の回転の項を考慮した。計算例として、両端固定のアルミ円筒殻および楕円筒殻の半周部分に、衝撃外圧が作用する問題を取り上げ、内力および変位の時間的変化の様子を解析した。その結果、変形はまず荷重側が半径方向に変位し、続いて横側が突出し、最後に荷重の反対側が半径方向に変位すること、内力は、円筒殻では固定端および横側を除いた部分で、楕円筒殻では荷重が作用する領域の反対側の部分で、ほぼ膜応力状態になっていること、さらに楕円筒殻では、荷重を受けない領域では変形量が極めて小さく、衝撃荷重の影響はほぼ荷重側の部分に限られることがわかった。次に降伏後変形とともにひずみ硬化する材料では、応力反転後のバウシンガー効果を考慮しなければ、十分正確な解を得ることばできない。そこで第7章では、ひずみ速度依存性とバウシンガー効果が表現可能な弾/粘塑性OverIayモデルを用いた、薄肉回転対称殻の動的応答問題の解法を示した。殻の運動方程式ならびにひずみ一変位式には、第2章で用いたSanders,Jr.の薄肉殻理論式を採用した。慣性項にはHouboltの後退時間差分式を用いた。計算例として、頂点に開口部を有する球殻、円環殻および円筒殻からなるアルミ容器に、衝撃内圧が作用する問題を取り上げ、内力および変位の時間的変化の様子を解析し、等方硬化モデルによる計算結果と比較した。その結果、応力が反転して再降伏が生ずると、変位、内力成分とも両モデルの結果に差が現れ、特に面内力成分に顕著な差が現われることがわかった。続いて第8章では、中程度の厚さの回転対称殻に、一般の非軸対称な衝撃荷重が作用する場合の解法を示した。準静的応答問題を取り扱った第3章の基礎式において、平衡方程式に慣性項を加えて、動的応答問題に発展させたものである。計算例として、両端固定のアルミ円筒殻の半周部分に、衝撃外圧が作用する問題を解析し、せん断変形を考慮しない薄肉殻理論(第7章の解法)による結果と比較検討した。その結果、変位成分には、両理論による差はあまり認められなかったが、内力成分の差は大きく、特に降伏領域で顕著な差を示した。殻厚と半径の比が0.15程度の厚さの円筒殻でも、せん断変形を考慮に入れた解析が必要であることが認められた。第9章では、第8章の解法を拡張して、さらに回転慣性を考慮に入れた解法を示した。厚肉の場合に考慮すべき殻厚方向のせん断変形と回転慣性には、Naghdiの理論を採用した。計算例として、衝撃内圧を受ける両端固定の厚肉円筒殻の問題を取り上げ、回転慣性の影響を考察した。その結果、殻厚と半径の比が0.05程度の円筒殻でも、変位と内力のほとんどの成分にわずかながら回転慣性の影響が見られ、殻厚が増すにつれてその影響が大きくなること、また曲げモーメント成分の方が、面内力成分よりも回転慣性の影響を強く受けること、さらに回転慣性の影響よりも、せん断変形の影響の方が大であることがわかった。\n第10章では、これまで提案してきた動的応答問題に対する解法の妥当性を調べるため、両端自由の薄肉アルミ円筒殻に局所的な衝撃荷重を加えて、円筒殻外表面の荷重負荷部近傍のいくつかの点のひずみの時間的変化を調べた。第7章で取り上げた弾/粘塑性Overlayモデルによる解法を用いて計算を行い、実験結果と比較し、解法の妥当性、有効性を検討した。その結果、第4章の静的問題の場合ほどではないが、計算結果と実験結果は比較的よく合う傾向を示した。第11章では、本研究で得られた結果の総括を行っている。

名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (論文) 学位授与年月日:平成1年1月13日

0アクセス

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000052228
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000052344
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000216542
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
ページトップへ