Resonance Raman studies on chromoproteins and their model compounds 色素タンパク質およびそのモデル化合物の共鳴ラマン分光

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著者

    • 水谷, 泰久 ミズタニ, ヤスヒサ

書誌事項

タイトル

Resonance Raman studies on chromoproteins and their model compounds

タイトル別名

色素タンパク質およびそのモデル化合物の共鳴ラマン分光

著者名

水谷, 泰久

著者別名

ミズタニ, ヤスヒサ

学位授与大学

総合研究大学院大学

取得学位

理学博士

学位授与番号

甲第15号

学位授与年月日

1992-03-16

注記・抄録

博士論文

 学位申請論文は第I部「共鳴ラマン分光法によるフィトクロムの光変換機構に関する研究」、第Ⅱ部「共鳴ラマン分光法による高酸化状態鉄ポルフィリン錯体に関する研究」の二部からなる。<u>第I部「共鳴ラマン分光法によるフィトクロムの光変換機構に関する研究」</u> フィトクロムは植物の光形態形成に関与する光受容タンパクで、安定な二つの形[赤色光吸収形(Pr)と近赤外吸収形(Pfr)]の間で可逆的に光変換する。そしてこの光変換反応が遺伝子発現調節や膜機能調節のトリガーとなる。すなわち、Prが組織内で生合成され、それが光によってPfrとなることで情報伝達系にシグナルが送られる。従って、この光変換反応の機構を解明することはフィトクロムの生理学的作用機構を理解する上で重要となる。そこで本研究では共鳴ラマン分光法を用い特に発色団の構造に焦点をあてて光変換に伴うフィトクロムの構造変化を調べた。 <u>第一章</u> この章ではフィトクロムの生理学的機構、物性、光変換反応についてのこれまでの研究を概観する。そして併せて今後明らかにすべき問題点について述べる。 <u>第二章</u> フィトクロムは赤色光領域に強い第一吸収帯を持つが、この波長を励起光として用いると、Prより非常に強い蛍光が出てしまい、事実上共鳴ラマンスペクトルは測定できなかった。このため、これまでの測定例はいずれも非生理的条件におけるもののみてあり、生理的条件での成功例はなかった。出願者らは第二吸収帯付近の364nm、407nmの光を励起光として用いることによってこの蛍光を避け、初めて常温での共鳴ラマンスペクトルの測定に成功した。ここでは、まず精製の比較的容易なラージ・フィトクロム(インタクトなものに比べてN末端約6kDaのポリペプチドが欠損したもの)を用いた。ラマンスペクトルの測定とは別に、レーザー光照射下での吸収スペクトルを測定し、光定常状態にあるPr、Pfr、Ibl(腿色形中間体)の存在比を求め、観測されたラマン線の各成分への帰属を行った。この二つの励起波長を用いるとそれぞれPr、Pfrの発色団を選択的に観測できることがわかった。こうして得られた共鳴ラマンスペクトルを軽水中でのものと重水中でのものとでC=C伸縮振動領域を比較すると、Prでは同位体シフトを示すラマン線がみられるのに対し、Pfrではみられないことから、PrとPfrとでは発色団のプロトン化構造に違いがあることが示唆された。 <u>第三章</u> 次にインタクト・フィトクロムを用いて第二章で述べたものと同様の実験を行った。インタクト・フィトクロムにおいてもラージ・フィトクロムと同様PrとPfrの発色団の間にプロトン化構造の違いがみられた。ラージ・フィトクロムとインタクト・フィトクロムの結果を比較し光変換におけるプロトン移動に対してN末端6kDaのセグメントが果たす役割について考察した。また発色団のモデル化合物であるオクタエチルビリベルヂン(OEBV)を用いてPr発色団のプロトン化位置を調べた。プロトン化OEBVではPrと同様の重水素化シフトが観測され、このプロトン化位置は<sup>1</sup>H-NMRによって、OEBVのピロール窒素であると結論された。 <u>第四章</u> フィトクロムの発色団構造を振動分光の立場から詳細に議論するためには各バンドについての帰属が必要となる。しかし、これまでビリベルヂンについては詳しい振動解析は行われてはいなかった。そこでOEBVおよびプロトン化OEBVとその7種類の同位体置換体について共鳴ラマンスペク卜ルを測定し同位体シフトからバンドの帰属を行った。また、端のピロール環ひとつが還元され、フィトクロムの発色団により近い構造を持つジヒドロビリベルヂン(DHBV)についても同様に測定し両者の同位体シフトのパターンを比較した結果、還元によって振動モードは大きく変わっていないことが明かとなった。 <u>第五章</u> フィトクロムは光変換において発色団構造だけでなくタンパク構造も変化させる。ロドプシンなど他の光情報伝達タンパクをみてもこのタンパク側のコンフォメーション変化がシグナル伝達に直接的な役割をはたしている場合が多い。そこで、紫外共鳴ラマン分光法を用いてタンパク側の構造変化を調べた。Prでは多くのトリプトファン残基は親水性の高い環境にあるが、Pfrになるとそれら一部は疎水性環境に移ること、チロシン残基の多くはバルクのpHの影響を受けにくい位置にあることがわかった。<u>第Ⅱ部「共鳴ラマン分光法による高酸化状態鉄ポルフィリン錯体に関する研究」</u> 鉄ポルフィリンは酸素分子と反応して自動酸化されるがこの酸化過程ではいくつかの反中間体が存在する。また金属ポルフィリンを化学的あるいは電気化学的に酸化するとポルフィリンπカチオンラジカルが得られる。これらはへムタンパク質の反応過程において存在すると考えられている反応中間体のモデル化合物となるが、本研究では共鳴ラマン分光法を用いてこれらのキャラクタリゼーションを行い、また鉄-配位子伸縮振動およびポルフィリン面内振動についての帰属を行った。 <u>第一章</u> この章では高酸化状態のポルフィリン金属錯体についてのこれまでの研究を概観し、併せて今後明らかにすべき問題点について述べる。 <u>第二章</u> 鉄(Ⅱ)テトラメシチルポルフィリン(TMP・Fe(Ⅱ))は酸素分子と反応してTMP・Fe(Ⅱ)O2、TMP・FE(Ⅲ)- O-O-Fe(Ⅲ)・TMP、TMP・Fe(Ⅳ)Oを経てTMP・Fe(Ⅲ)OHとなる。この自動酸化過程において低温トラップ法により捉えられた中間体の構造を共鳴ラマン分光法を使って調べ、これまで溶液状態では報告例のなかった5配位錯体の酸素-酸素伸縮振動(ν(O<small>2</small>))、鉄-酸素分子伸縮振動(ν(F<br />e-O<small>2</small>))、鉄-酸素原子伸縮振動(ν(Fe=0))を初めて検出した。これらの値をこれまでに報告されている6配位錯休やへムタンパク質のものと比較して考察した。 <u>第三章</u> へムタンパク質の反応中間体のモデル化合物として重要な鉄ポルフィリンπカチオンラジカルの共鳴ラマンスペクトルを測定し、観測されたラマン線の帰属を行った。特にオキソ鉄(Ⅳ)μカチオンラジカルのFe=0伸縮振動やポルフィリン面内振動を同位体置換で帰属し、化学結合状態を詳しく考察した。またアメリカのグループからの報告との矛盾点を解決した。

目次

  1. Contents / p6 (0006.jp2)
  2. Preface / p1 (0003.jp2)
  3. Acknowledgements / p3 (0004.jp2)
  4. Publication List / p4 (0005.jp2)
  5. Contents / p6 (0006.jp2)
  6. Part I. Resonance Raman Studies on the Phototransformation Mechanism of Phytochrome / p1 (0007.jp2)
  7. Chapter I Overview:Physical Chemistry of Phytochrome / p3 (0008.jp2)
  8. Chapter II Resonance Raman Studies of Large Pea Phytochrome:Difference in Chromophore Protonation between Red-and Far-red-Absorbing Forms / p23 (0018.jp2)
  9. Chapter III Resonance Raman Studies of Intact Pea Phytochrome and Its Model Compounds: Evidence for Proton Migration during the Phototransformation / p37 (0025.jp2)
  10. Chapter IV Resonance Raman Spectra of Biliverdins and Their Isotopic Derivatives / p63 (0038.jp2)
  11. Chapter V Ultraviolet Resonance Raman Spectra of Pea Phytochrome: A Differential Molecular Topography of the Red-and Far-red-Absorbing Forms / p85 (0049.jp2)
  12. Part II. Resonance Raman Studies on Iron Porphyrins in Higher Oxidation States / p101 (0057.jp2)
  13. Chapter I Overview:Resonance Raman Studies on Metalloporphyrins / p103 (0058.jp2)
  14. Chapter II Resonance Raman Pursuit of the Change from[化学式]-O₂ to[化学式]-OH via[化学式]=O in Autoxidation of Ferrous Iron-porphyrin / p115 (0064.jp2)
  15. Chapter III Resonance Raman Characterization of Ferric-and Ferryl Porphyrinπ Cation Radicals and the[化学式]=O Stretching Frequency / p137 (0075.jp2)
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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000090605
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000090826
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • eng
  • NDL書誌ID
    • 000000254919
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
    • NDLデジタルコレクション
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