カラマツヤツバキクイムシに関与する青変菌(Ophiostoma piceae(M[ÜNCH])H.and P.S[YDOW])に対するカラマツの樹体反応と萎凋枯死に関する研究

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著者

    • 山口, 岳広 ヤマグチ, タケヒロ

書誌事項

タイトル

カラマツヤツバキクイムシに関与する青変菌(Ophiostoma piceae(M[ÜNCH])H.and P.S[YDOW])に対するカラマツの樹体反応と萎凋枯死に関する研究

著者名

山口, 岳広

著者別名

ヤマグチ, タケヒロ

学位授与大学

北海道大学

取得学位

博士 (農学)

学位授与番号

乙第4978号

学位授与年月日

1996-03-25

注記・抄録

博士論文

カラマツヤツバキクイムシに付随してカラマツの樹体内に運ばれる青変菌の1種Ophiostoma piceaeをカラマツに接種することにより,この青変菌の侵入に対するカラマツの樹体の反応,特に辺材内部で起きている反応を明らかにするとともに,青変菌による枯死に至る経過を観察し,その機構について解明を試みた。また,青変菌のカラマツ樹体への侵入・病徴の進展に関与する環境条件を,接種実験により明らかにしようとした。青変菌0. piceaeをカラマツに接種すると,接種部周辺の辺材には通導が阻害された部分が生じるが,この部分をSEMで観察すると仮道管内の有縁壁孔の閉塞が見られ,未同定の不定形の物質が仮道管内に付着しているのが観察された。青変菌の菌糸は放射組織を通って放射方向へ侵入し,軸方向へは仮道管の壁孔対を通過して進展していた。しかし,点接種では青変菌はあまり広範囲には広がらないことから,樹幹を1周する接種を行なうことにより,木部圧ポテンシャルは急激に低下し,2ヵ月後には接種したカラマツは萎凋枯死に至った。接種したカラマツ辺材では仮道管の有縁壁孔の閉塞が起こっており,接種部周辺と接種部より上部では非常に高い率であった。青変菌をカラマツの枝に接種して,接種後の辺材の通導阻害部分および内樹皮の変色の推移を調査した。通導阻害部分は気温が低い時期を除き3日後には出現し,急激に拡大しだ後ほぼ2週間から1ヵ月でその拡大は停止していた。内樹皮の変色長もほぼ同様の傾向であった。仮道管の有縁壁孔の閉塞率も,ほぼ辺材の通導阻害部の拡大に対応した動向を示した。これらのことから,青変菌による辺材の通導阻害は,仮道管のキャビテーション(空洞化)による有縁壁孔の閉塞と深い関連があることが示唆された。青変菌の再分離結果から,菌の侵入に先立って辺材の通導阻害部分が形成され始め,また,青変菌の進展範囲は通導阻害部より狭い範囲に限られていることが明らかとなった。青変菌の侵入・カラマツの病徴の進展に関与する環境条件について調べるために,まず苗木に対する接種方法を検討した。カラマツ苗木に環状剥皮を行ない,青変菌の菌糸片を巻き付ける方法により,カラマツの木部圧ポテンシャルの低下,針葉の黄変落葉,萎凋枯死と成木と同じ病徴を再現できた。次に青変菌の胞子を用いて,まず接種方法の検討を行なった。その結果,環状剥皮により上下に連続しない隔離された樹皮部分をつくると,胞子接種によってより多くの苗木に病徴を発現させることができた。この方法を用いて,胞子濃度の差による病徴の発現について調査した。1×10^6個/mlまでの濃度では接種木はすべて罹病させることができた。病徴を発現させる胞子の最低濃度は10^3-10^4個/ml程度と推測された。苗木に環状剥皮をして青変菌の菌糸片を用いる方法で,5月から8月まで野外と温室で1月おきに接種を行ない,接種時期の違いによる感受性の差を調べた。その結果,5・6月は7・8月に比べ感受性が高い傾向があった。また,5月の野外では低温の影響により病徴の発現がやや遅れた。水ストレスや摘葉,あるいは剥皮処理による各種のストレスと,青変菌を接種したカラマツの反応との関係を調べた。水ストレスでは,湿潤な状況のカラマツ接種木の方が感受性であった。摘葉処理では,無処理のカラマツ接種木よりもやや感受性であったが,剥皮処理では処理部分より上部で肥大成長が増大し,病徴の発現が遅れた。これらのことから,カラマツの光合成産物量の減少が青変菌の侵入・病徴の発現を促進させることが示唆された。以上の実験から得られた結果をもとに,青変菌-穿孔虫のカラマツに対する加害に対して樹体内で起こる反応について考察を加えた。

目次

  1. 目次 / p1 (0002.jp2)
  2. 第1章 緒言 / p3 (0004.jp2)
  3. 第2章 既往の研究 / p7 (0008.jp2)
  4. 2-1 青変菌Ophiostoma piceaeの分類 / p7 (0008.jp2)
  5. 2-2 分布および生態 / p8 (0009.jp2)
  6. 2-3 青変菌と穿孔虫,樹木の防御機構 / p9 (0010.jp2)
  7. 2-4 日本における青変菌と穿孔虫の研究 / p12 (0013.jp2)
  8. 第3章 青変菌Ophiostoma piceaeを接種したカラマツの反応および青変菌の樹体内における動向のSEMによる解剖観察 / p15 (0016.jp2)
  9. 第4章 青変菌Ophiostoma piceaeの接種によるカラマツの萎凋枯死と木部圧ポテンシャルの推移 / p25 (0026.jp2)
  10. 第5章 青変菌を接種したカラマツにおける通導阻害部分・内樹皮変色の推移と有縁壁孔の閉塞 / p35 (0036.jp2)
  11. 第6章 青変菌のカラマツ苗木に対する接種試験 / p54 (0055.jp2)
  12. 6-1 カラマツ苗木への全周剥皮による菌糸片接種と水ポテンシャルの推移 / p54 (0055.jp2)
  13. 6-2 青変菌の胞子によるカラマツ苗木への接種-接種方法の検討 / p62 (0063.jp2)
  14. 6-3 青変菌の胞子によるカラマツ苗木への接種-胞子濃度の検討 / p69 (0070.jp2)
  15. 第7章 接種時期によるカラマツの反応の違い / p74 (0075.jp2)
  16. 第8章 各種ストレス(水ストレスおよび摘葉・剥皮処理)を加えたカラマツの青変菌接種に対する反応 / p87 (0088.jp2)
  17. 8-1 水ストレスの影響 / p87 (0088.jp2)
  18. 8-2 摘葉・剥皮の影響 / p96 (0097.jp2)
  19. 第9章 総合考察 青変菌Ophiostoma piceaeによるカラマツの枯死機構とそれに関与する環境条件 / p106 (0107.jp2)
  20. 9-1 青変菌の侵入によるカラマツの樹体内における反応と萎凋に至る機構 / p106 (0107.jp2)
  21. 9-2 カラマツへの青変菌の侵入に関与する環境要因 / p115 (0116.jp2)
  22. 9-3 カラマツ林の施業への対応 / p117 (0118.jp2)
  23. 要旨 / p120 (0121.jp2)
  24. 引用文献 / p123 (0124.jp2)
  25. 写真1 / 写真-1 / (0144.jp2)
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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000133045
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000967619
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000297359
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
    • NDLデジタルコレクション
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