3/4filledバンドを有する擬2次元有機伝導体の低温構造と絶縁相

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著者

    • 渡邉, 真史 ワタナベ, マサシ

書誌事項

タイトル

3/4filledバンドを有する擬2次元有機伝導体の低温構造と絶縁相

著者名

渡邉, 真史

著者別名

ワタナベ, マサシ

学位授与大学

岡山大学

取得学位

博士(理学)

学位授与番号

甲第1886号

学位授与年月日

1999-03-25

注記・抄録

博士論文

本研究では,有機分子BEDT-TTFからなる有機伝導体のうち,バンドが3/4filledであり,2次元的なフェルミ面を持ちながら低温で非金属状態となる物質を含む2タイプの結晶構造に関してX線回折の手法により実験をおこない,電子状態の研究を行った.κ型結晶κ-(BEDT-TTF)(2)Cu[N(CN))(2)]X[X =Cl, Br]では,BEDT-TFF分子の2量体(ダイマー)化によってバンドが分裂し,伝導バンドは実効的に1/2 filledと見なせる.これまで提案されてきた"ダイマーモデル"では,ダイマーを1サイトと考え,ダイマー上のon site Coulomb反発U(eff)が2量体化の程度に左右され,系がMott絶縁体となるか否かはU(eff)と伝導バンドの幅W(u)との比で決定されるとしていたが,構造的な証拠が存在しなかった.X=Cl, Brの水素(h8)体,重水素置換(d8) 体について低温で精密結晶構造解析をおこない,"ダイマーモデル"が系統的に成り立つかを研究した.この結果,結晶構造の温度変化が大きく,低温構造が本質的に重要であることが明らかになった.つまり,低温で反強磁性体となるととが知られているCl塩では構造不安定性が小さく順調に格子が熱収縮し,低温でダイマー性が強くなる.これに対し,低温で金属から超伝導体になるBr塩では,2種類の構造変化が200~220K近辺,80K付近で生じる.前者ではきわめて弱い2c周期の変調構造が陰イオン間の相互作用により形成されるが,層間のカップリングが弱く2次元的な秩序に留まる.BEDT-TTF分子にはほとんど影響がなく電子状態への影響は小さい.しかし,80Kでは陰イオンとBEDT-TTFのフラストレーションにより,BEDT-TTFにも配置の変化が起こりon site Coulomb反発U(eff)の程度に影響を与える.この2種類の変化は独立であり,そのいずれもが,これまでの予想とは異なり,BEDT-TTF終端のエチレン基の配向度とは直接関連していない.今回,低温で得られた原子座標と既存の原子座標とを用いてバンド計算をおこない比較した結果,(1)h8体のBr塩を除き,絶縁体から金属まで,低温構造から見積もられるU(eff)/Wで整理され,ダイマーモデルで理解できること,(2)Cl塩とBr塩とではハロゲン原子の置換が80Kの構造変化の有無をひき起こし, 80K以下で2量体化の程度が大きく拡大しU(eff)に差が生ずること,および,(3)d8-Br塩の急冷状態が絶縁体なのはU(eff)の差ではなく,80Kの構造変化が不完全になりダイマー問の移動積分(つまりはバンド幅)が小さくなるためであることがわかった.h8-Brでは,d8-Brの急冷状態とほぼ同じ傾向が観測された.これは徐冷時には金属(11.6K以下で超伝導)になることと一見矛盾するが,発表されているh8体のBr塩の構造データは,温度因子が低温でも大きく,構造的には急冷相であると考えられるので,実はダイマーモデルでも理解可能である.第2の物質系であるθ-(BEDT-TTF)(2)CsCo(SCN)(4)では,金属状態ではBEDT-TTF分子の2量体化がなく,したがって単一の3/4 filledバンドをもち,フェルミ面も常圧では楕円型に近い単純な形状をしている.アニオン中の金属原子を化学置換したものでは金属ー絶縁体転移温度が系統的に増加する.この化学置換により分子間の2面角が変化する結果バンド幅Wが減少することから,絶縁相がMott相であり,低温では2量体が形成されると予想されていた.たしかにθ-(BEDT-TTF)(2)CsCo(SCN)(4)の低温非金属状態では2倍の超格子構造が形成されることが発見されたが,その振幅,相関長から,ダイマーモデルのMott相としての取り扱いは困難であり,むしろ最近接クーロン反発の効果による電荷秩序相と考えた方よいことがわかった.なお,物理的な圧力を加えると,分子2面角θが増加するときに,化学置換の効果と逆にバンド幅Wは増加する.このように,物理圧効果と化学置換効果とは,体積の減少という点では似ているが本質的には異なることが明らかになった.更に10.7kbarの物理的圧力下では,衛星反射の観測により他に類例のない圧力誘起の2k(F)CDWを発見した.これはバンド幅の増大と擬1次元的なフェルミ面の形成の双方に起因するものとして理解される.

目次

  1. 要旨 / (0003.jp2)
  2. 目次 / p1 (0004.jp2)
  3. 第1章 序 / p4 (0006.jp2)
  4. 1.1 BEDT-TTF系有機電荷移動錯体 / p4 (0006.jp2)
  5. 1.2 κ-(BEDT-TTF)₂Cu[N(CN)₂]X系有機超伝導体 / p10 (0009.jp2)
  6. 1.3 θ-(BEDT-TTF)₂MM'(SCN)₄系有機導体 / p30 (0019.jp2)
  7. 1.4 本論文の構成 / p39 (0023.jp2)
  8. 第2章 実験 / p42 (0025.jp2)
  9. 2.1 試料 / p42 (0025.jp2)
  10. 2.2 実験装置 / p42 (0025.jp2)
  11. 2.3 測定と解析の方法 / p50 (0029.jp2)
  12. 第3章 κ型有機伝導体 / p54 (0031.jp2)
  13. 3.1 実験結果 / p54 (0031.jp2)
  14. 3.2 考察 / p79 (0043.jp2)
  15. 第4章 θ型有機伝導体 / p97 (0052.jp2)
  16. 4.1 実験結果 / p97 (0052.jp2)
  17. 4.2 考察 / p105 (0056.jp2)
  18. 第5章 結論 / p109 (0058.jp2)
  19. 第6章 謝辞 / p111 (0059.jp2)
  20. .1 R-factor,Rw-factor,Goodness of Fitの定義 / p117 (0062.jp2)
  21. .2 温度因子の定義 / p118 (0063.jp2)
  22. .3 原子座標 / p119 (0063.jp2)
3アクセス

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000174268
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000174544
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000338582
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
    • NDLデジタルコレクション
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