中性子照射した面心立方金属の損傷欠陥発達過程の研究

この論文をさがす

著者

    • 向田, 一郎 ムコウダ, イチロウ

書誌事項

タイトル

中性子照射した面心立方金属の損傷欠陥発達過程の研究

著者名

向田, 一郎

著者別名

ムコウダ, イチロウ

学位授与大学

広島大学

取得学位

博士 (工学)

学位授与番号

乙第3091号

学位授与年月日

1998-07-09

注記・抄録

博士論文

原子炉構造材料においては中性子照射損傷による欠陥生成により力学的特性の劣化を導く。その損傷組織発達原子レベル過程を理解することは原子炉材料の評価および耐照射性に優れた材料の開発において非常に重要である。特に核融合炉の材料開発においては、将来の商業用核融合炉の運転環境における14MeV核融合中性子照射ができないことから損傷欠陥の形成を平均1.5MeVの核分裂中性子照射のデータから外挿する必要がある。現在進行している核融合炉材料開発においては既存の軽水炉・高速増殖炉・加速器等の照射設備を用いた実験から原子レベルでの損傷欠陥発達過程の理解が不可欠である。本研究においてはJMTR(Japan Materials Testing Reactor: 日本原子力研究所材料試験炉)において開発された照射時の試料温度を制御して、中性子束一定で照射量が変化できる多段多分割型温度制御リグを用いた中性子照射実験を行い、その損傷組織を電子顕微鏡観察した。その結果は原子レベルの微小点欠陥集合体挙動のコンピューター・シミュレーションと比較検討して照射損傷欠陥発達過程の理解する事を目的とする。 第1章では照射損傷研究の歴史およびこれまでの研究成果を調査し従来の考え方をまとめた。また、本研究で用いた多段多分割温度制御照射リグの開発経緯と、従来報告されている温度制御照射の結果についてまとめた。第2章では損傷欠陥形成にはガス原子の効果が大きいことに注目して、試料中の残留ガスを除去した試料を作製して比較のためにas-received試料を同時に中性子照射実験を行い、また損傷組織観察の方法についてまとめた。第3章では中性子照射を行った試料の電子顕微鏡観察結果をまとめた。その結果、純銅、銅希薄合金、純ニッケルにおける原子空孔集合体・格子間原子集合体形成の過程を実験的に明らかにした。第4章においては微小点欠陥集合体の分子動力学コンピューター・シミュレーションによって実験では観察できない集合体の挙動を明らかにして集合体形成の素過程を検討した。第5章では以上の中性子照射実験とコンピューター・シミュレーションの結果から研究の総括を行った。この実験結果は中性子照射した金属中でのボイド形成に関して従来の考え方を覆すものである。 最も照射量が少ない場合(5.2x1018n/cm2)においてはas-received、残留ガス除去試料の両者においてボイドの数密度・サイズ共に変わりがなかった。低照射量領域ではボイドは試料中に均一に形成していた。中性子照射量の増加と共にボイドの数密度は減少し、ボイドのサイズは大きくなる。一方、格子間原子は局所的に集合して照射量の増加と共に次第に拡がっていき転位組織を形成する。格子間原子は集合体の領域に吸収されるため原子空孔がマトリックスに残ってボイドが成長する。分子動力学コンピューター・シミュレーションにおいては格子間原子集合体は<110>クラウディオンの束に緩和するため低い移動エネルギーで移動する事が可能である。また格子間原子集合体の移動はわずかな歪み場の影響で運動する。この結果は格子間原子集合体が局所的に集合してコロニーを形成することを示唆する。極微小サイズの原子空孔集合体は集合体として動きやすい構造に緩和する事がコンピューター・シミュレーションにより明らかにされた。このような極微小サイズの原子空孔集合体の移動・合体により次第に大きな集合体が形成する。これらの集合体は熱的活性な準安定状態のマイクロボイドに成長する。この過程においてはガス原子の寄与なしに起こる。マイクロボイドは集合体のままで移動を繰り返し、その途中でガス原子をトラップする。多くのガス原子をトラップしたボイドは移動度が低下することにより安定なボイド構造が形成される。

1.緒論 / p1  1.1 照射損傷研究の歴史 / p1  1.2 カスケード損傷衝突過程 / p1  1.3 点欠陥研究 / p2  1.4 ボイドスエリング / p4  1.5 温度制御中性子照射 / p6 2.実験方法 / p7  2.1 残留ガス除去した試料の作製 / p7  2.2 JMTR(材料試験炉)温度制御中性子照射 / p7  2.3 電子顕微鏡観察 / p8  2.4.点欠陥集合体動的挙動のコンピューター・シミュレーション / p9 3.実験結果 / p10  3.1 純銅における損傷欠陥発達過程 / p10  3.2 銅希薄合金における損傷欠陥発達過程 / p13  3.3 純ニッケルにおける損傷欠陥発達過程 / p14 4.考察 / p15  4.1 原子空孔集合体のエネルギー計算 / p15  4.2 高温における格子間原子集合体の動的挙動 / p15  4.3 高温における原子空孔集合体の動的挙動 / p16  4.4 中性子照射した金属での損傷欠陥発達過程 / p17  4.5 ボイド形成におけるガスの効果 / p18  4.6 温度変動照射におけるガイド形成 / p19  4.7 銅希薄合金におけるボイド形成 / p20  4.8 照射損傷欠陥形成のモデル / p20 5.結論 / p22 6.参考文献 / p24 図表 / p27 謝辞 / p126

目次

  1. 目次 / (0004.jp2)
  2. 1.緒論 / p1 (0005.jp2)
  3. 1.1 照射損傷研究の歴史 / p1 (0005.jp2)
  4. 1.2 カスケード損傷衝突過程 / p1 (0005.jp2)
  5. 1.3 点欠陥研究 / p2 (0006.jp2)
  6. 1.4 ボイドスエリング / p4 (0008.jp2)
  7. 1.5 温度制御中性子照射 / p6 (0010.jp2)
  8. 2.実験方法 / p7 (0011.jp2)
  9. 2.1 残留ガス除去した試料の作製 / p7 (0011.jp2)
  10. 2.2 JMTR(材料試験炉)温度制御中性子照射 / p7 (0011.jp2)
  11. 2.3 電子顕微鏡観察 / p8 (0012.jp2)
  12. 2.4.点欠陥集合体動的挙動のコンピューター・シミュレーション / p9 (0013.jp2)
  13. 3.実験結果 / p10 (0014.jp2)
  14. 3.1 純銅における損傷欠陥発達過程 / p10 (0014.jp2)
  15. 3.2 銅希薄合金における損傷欠陥発達過程 / p13 (0017.jp2)
  16. 3.3 純ニッケルにおける損傷欠陥発達過程 / p14 (0018.jp2)
  17. 4.考察 / p15 (0019.jp2)
  18. 4.1 原子空孔集合体のエネルギー計算 / p15 (0019.jp2)
  19. 4.2 高温における格子間原子集合体の動的挙動 / p15 (0019.jp2)
  20. 4.3 高温における原子空孔集合体の動的挙動 / p16 (0020.jp2)
  21. 4.4 中性子照射した金属での損傷欠陥発達過程 / p17 (0021.jp2)
  22. 4.5 ボイド形成におけるガスの効果 / p18 (0022.jp2)
  23. 4.6 温度変動照射におけるガイド形成 / p19 (0023.jp2)
  24. 4.7 銅希薄合金におけるボイド形成 / p20 (0024.jp2)
  25. 4.8 照射損傷欠陥形成のモデル / p20 (0024.jp2)
  26. 5.結論 / p22 (0026.jp2)
  27. 6.参考文献 / p24 (0028.jp2)
  28. 図表 / p27 (0031.jp2)
  29. 謝辞 / p126 (0130.jp2)
8アクセス

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000185293
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000185575
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000349607
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
    • NDLデジタルコレクション
ページトップへ