ファジーハフ変換によるロバスト画像処理

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著者

    • 岡田, 正之 オカダ, マサユキ

書誌事項

タイトル

ファジーハフ変換によるロバスト画像処理

著者名

岡田, 正之

著者別名

オカダ, マサユキ

学位授与大学

九州芸術工科大学

取得学位

博士 (工学)

学位授与番号

甲第41号

学位授与年月日

2000-03-17

注記・抄録

博士論文

画像処理やコンピュータビジョンでは,例外値を含むデータからでも安定に信号値やモデルのパラメータを推定することが要求される。線形画像処理では推定結果が例外値の影響を受けて真の信号値から大きく逸脱したり,パラメータ推定が不安定になったりする。このような問題に対処するためにロバスト統計に基づく画像処理が用いられるようになった。ロバスト統計は当初画像の平滑化に主に使われていたが,最近では画像処理やコンピュータビジョンの分野でのモデル推定のための標準的な一手法とみなされるようになってきている。しかしロバスト統計に基づく推定な非凸な最適化問題であるので多数の局所解を持ち,最適解を求めるのは一般に困難である。そこで本論文ではこれらの手法とは異なるアプローチの推定法を提案する。従来の手法が画像の濃淡値を画像平面の関数として表していたのに対し,本論文では画像平面と濃淡値とを合わせた空間での確率分布として表現する。この拡張空間での推定にファジーハフ変換を用いることによって濃淡値の不連続や隠蔽などが自然に扱えるようになる。 /  本論文は,ファジーハフ変換アルゴリズムの開発,およびそれに基づく関数回帰法を画像の平滑化や動画像からの運動検出などに応用した結果をまとめたものであり,8章から構成されている。 /  まず第1章では,本研究の背景と扱っている問題を示し,あわせて論文の概要について述べる。 /  次に第2章では,本論文の基礎となる非線形な関数回帰の大域的最適近似解を求める手法について論じる。まず,非凸な画像復元の最適解を求めるアナログ的手法であるGNC法をM推定とLTS推定に応用し,メジアン選択をアナログな非線形計画問題として定式化してこれらの推定解を求める。また,M推定よりもスケール変動に関してロバストな最小2乗トリム推定解を,ホップフィールドネットワークの解法に似たアナログ解法に基づく決定論的アニーリング法で求める方法を提案する。続いて,エッジを保存する平滑化法について考え,M推定における閾値のようなパラメータを含まない方法としてLMedS推定に基づく平滑化法を提案し,簡単な実験を通して最小2乗法,M推定,メジアンフィルタなどと比較検証する。 /  第3章では,この章以降の基礎となるロバスト回帰の1種であるファジーハフ変換を提案する。ハフ変換がテンプレートマッチングやロバスト回帰と等価であることを最適化問題による定式化から導いて,この最適化問題の目的関数にエントロピーに似た関数を付け加えることによりファジーハフ変換が得られることを示す。また,テンプレートが高次の関数で表される場合のように,データ点とテンプレートとの距離が解析的に表せないような場合に対する近似解法も導く。 /  第4章では,ファジーハフ変換による関数回帰の有効性を示す。画像処理やパターン認識での関数回帰では,ノイズの平滑化とエッジに対応する関数値の不連続の保存が重要である。ここでは関数回帰をテンプレートマッチングとして捉え,独立変数と従属変数とを合わせた空間を画像平面と同一視し,関数をこの空間でのテンプレートとみなして陰関数として扱う。この関数回帰法を,疎らなデータからの画像復元に基づくデータ点の削減,クラスタリングによる領域分割,ステレオ視などに応用する。 /  ファジーハフ変換においてもファジー度の設定や初期値設定など実際の適用において難しい問題がある。ファジーハフ変換のこのような難点を解決するために,第5章ではファジーハフ変換を整数計画問題として定式化してアニーリングを導入する。これにより,ファジーハフ変換におけるファジー度の設定や初期値設定の問題が解決されるだけでなく,複数個のパターンを抽出することも容易になる。 /  第6章では,ファジーハフ変換を動画像からの運動検出に応用する。まず最初に,運動知覚のニューラルネットモデルを提案し,バーバーポール錯視の例について心理実験結果を再現する。続いて,ファジーハフ変換に基づいて動画像から主要な動きを逐次に抽出する方法を提案する。アニーリングハフ変換で各運動領域のアフィン変換動きパラメータの大域最適解を求め,それに属するデータを順次に除去していくことによって複数個の運動パターンを抽出する。本方法は大域的動き領域分割を与え,運動領域分割と各領域の運動推定の2つを同時に行うことができる。 /  第7章では,カラー画像のエッジを保存する非線形平滑化フィルタとしてモードフィルタを提案する。カラー値をCIE―L*a*b*座標に変換して,ユークリッド距離に基づくカラー画像の非線形平滑化法としてのファジーハフ変換からモードフィルタを導出し,カラー画像のある種の情報圧縮であるスケッチ画像を得るのに有用であることを示す。 /  第8章では,本研究で得られた成果をまとめて今後の課題を述べる。

目次 第1章 序論 第2章 ロバスト回帰による画像処理 第3章 ファジーハフ変換 第4章 ファジーハフ変換による画像処理 第5章 アニーリングファジーハフ変換 第6章 ファジハフ変換による運動検出 第7章 モードフィルタ 第8章 結論

目次

  1. 目次 / p1 (0003.jp2)
  2. 第1章 序論 / p1 (0006.jp2)
  3. 1.1 研究の目的と背景 / p1 (0006.jp2)
  4. 1.2 論文の概要と構成 / p4 (0009.jp2)
  5. 第2章 ロバスト回帰による画像処理 / p7 (0012.jp2)
  6. 2.1 まえがき / p7 (0012.jp2)
  7. 2.2 GNC法による非線形回帰 / p9 (0014.jp2)
  8. 2.3 最小2乗トリム回帰のアナログ解法 / p15 (0020.jp2)
  9. 2.4 ロバストエネルギー最小化によるエッジ保存平滑化 / p25 (0030.jp2)
  10. 第3章 ファジーハフ変換 / p38 (0043.jp2)
  11. 3.1 まえがき / p38 (0043.jp2)
  12. 3.2 可変型テンプレートマッチング / p38 (0043.jp2)
  13. 3.3 ファジーハフ変換 / p41 (0046.jp2)
  14. 3.4 むすび / p44 (0049.jp2)
  15. 第4章 ファジーハフ変換による画像処理 / p49 (0054.jp2)
  16. 4.1 まえがき / p49 (0054.jp2)
  17. 4.2 ファジーハフ変換による関数回帰 / p51 (0056.jp2)
  18. 4.3 代表点による補間 / p60 (0065.jp2)
  19. 4.4 画像の領域分割 / p64 (0069.jp2)
  20. 4.5 ランダムドットステレオ視 / p66 (0071.jp2)
  21. 4.6 連想記憶 / p74 (0079.jp2)
  22. 4.7 むすび / p75 (0080.jp2)
  23. 第5章 アニーリングファジーハフ変換 / p78 (0083.jp2)
  24. 5.1 まえがき / p78 (0083.jp2)
  25. 5.2 アニーリングファジーハフ変換 / p81 (0086.jp2)
  26. 5.3 ニューラルネットによるファジーハフ変換 / p91 (0096.jp2)
  27. 5.4 むすび / p94 (0099.jp2)
  28. 第6章 ファジハフ変換による運動検出 / p96 (0101.jp2)
  29. 6.1 まえがき / p96 (0101.jp2)
  30. 6.2 運動知覚モデル / p96 (0101.jp2)
  31. 6.3 動き検出 / p117 (0122.jp2)
  32. 第7章 モードフィルタ / p128 (0133.jp2)
  33. 7.1 まえがき / p128 (0133.jp2)
  34. 7.2 モードフィルタ / p128 (0133.jp2)
  35. 7.3 むすび / p134 (0139.jp2)
  36. 第8章 結論 / p137 (0142.jp2)
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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000189230
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000189513
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000353544
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
    • NDLデジタルコレクション
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