日本-南アフリカ通商関係史研究
この論文にアクセスする
この論文をさがす
著者
書誌事項
- タイトル
-
日本-南アフリカ通商関係史研究
- 著者名
-
北川, 勝彦, 1947-
- 著者別名
-
キタガワ, カツヒコ, 1947-
- 学位授与大学
-
総合研究大学院大学
- 取得学位
-
博士 (学術)
- 学位授与番号
-
乙第58号
- 学位授与年月日
-
1999-03-24
注記・抄録
博士論文
資料形態 : テキストデータ プレーンテキスト
コレクション : 国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
本研究は、諸外国と日本の実に多面的な国際関係についての歴史的研究の一部をなす日本-アフリカ関係を経済関係ないしその発展から考察している。また、本研究は、第一に、戦前期日本の「領事報告」 第二に、戦後、海外市場調査に重要な役割を演じた日本貿易振興会から刊行された『通商弘報』に依拠して進められてきた。 具体的には、日本と南アフリカとの経済関係の歴史に焦点をあて、第一に、戦前期日本の南アフリカへの経済的関心がいつ頃から生まれ、南アフリカに関する経済情報がどのように収集され、それを日本国内の当該業者に報知するどのようなシステムが形成されていたのか、また、戦後の日本ではどのように南アフリカの経済情報が収集され、それを関連業者に拡散させるどのようなシステムが形成されたのか、を明らかにした。第二に、戦前と戦後において、日本と南アフリカの貿易はどれほどの展開を示していたのか、また、日本と南アフリカの通商関係とその展開の中で、それぞれの段階でどのような問題が生じ、さらに、日本の対南アフリカ貿易を促進するために、どのような市場獲得政策が展開されたのかについても明らかにしている。 本論では、第二次世界大戦を挟んで二つの時期にわけて考察した。第1章では、日本が海外へと進出しはじめ、しかもアフリカ大陸各地域に対する経済的関心を有するにいたった時期には、いったいどのような国際経済関係が展開されていたのか。ここでは、何ゆえに海外経済情報収集の制度的枠組の構築が急がれ、海外経済事情調査が行われたのか、その背景について考察した。 第2章では、戦前期の日本において、南アフリカに関する経済情報の報知に重要な役割を演じたのは、当時発行された「貿易雑誌」であった。まず、戦前期に外務省通商局が刊行した南アフリカ連邦に関する経済調査報告書の中で重要と思われるものを概観し、次に、戦前期において海外経済情報の国内への報知(情報の拡散)に大きな役割を演じた「貿易雑誌」に掲載された南アフリカ経済情報を整理した。 第3章では、南アフリカ連邦形成期から第二次世界大戦の勃発に至る約30年間に、日本の商品がどのような経路で南アフリカに輸出され、南アフリカではどの地方のどのような人々にどのような経路でもたらされ消費されたのか、他方、南アフリカの商品がどのような経路で日本に輸出され、日本ではどのような経路でいかなる地方のどのような人々に利用されるにいたったのか、その具体的な状況を描き出そうと試みた。しかし、両大戦間期における日本の対南アフリカ貿易とそれにかかわりをもった日本企業の活動の考察にとどまっている。 第4章では、1930年代の世界恐慌期における日本-南アフリカ通商関係の展開とそれににともなってあらわれてきた諸問題について考察した。第一に、当時の南アフリカ市場に関する情報収集の一端を担った朝日新聞記者による南アフリカ市場調査を紹介し、第二に、ケープタウン在住日本領事のもたらした通商報告に基づいて世界恐慌期番こおをする日本の対南アフリカ貿易の展開を概観した。第三に、ダーバン在住の名誉領事からもたらされた通商報告に依拠して南アフリカ市場への日本品の進出から生じた具体的な通商問題の一端を明らかにし、第四に、世界恐慌期に南アフリ力連邦でとられた通商政策と日本の対南アフリカ通商政策について当時の領事報告番こ依拠して明らかにした。第5章では、両大戦間期における日本-南アフリカ通商関係史のなかで、とくに1930年10月の『南阿入国居住其他二関スル日阿取極』締結の時期に焦点をあわせて、本『取極』とその背後で展開された「南阿羊毛購入対策」について、主として日本領事報告と外交記録に依拠しながら考察した。第2部では、戦後の関係を扱っているが、まず、第6章で番よ、第二次世界大戦の終結から1980年代までの国際経済、日本経済および南アフリカ経済の展開を簡単にふりかえっている。次いで、第7章では、第一に、戦後日本の海外市場調査機関として今日にいたるまで重要な役割を演じている「日本貿易振興会」(JETRO)の設立経過をふりかえり、第二に、JETRO発行の『通商弘報』(日刊一こ転載された南アフリカ市場調査を概観した。第三に、この『通商弘報』その他の資料に依拠して戦後日本の対南アフリカ貿易の展開過程を概観し、戦後日本-南アフリカ通商関係番こみられた問題を提示している。 第8章では、過去の関係の継承とこれまでには見られなかった新たな関係の展開とが混在している日本・南アフリカ関係の現状を観察しようと試みた。その場合、とくに1980年代の対南アフリカ経済制裁期からマンデラ政権誕生にいたる時期を取りあげ、(1)日本・南アフリカ貿易の現状、(2)日本の対南アフリカ投資、(3)日本の対南アフリカ通商政策について順次考察した。 南アフリカでは、最初の非人種的民主的選挙後、「暫定憲法」の下で樹立された「国民統一政府」(Government of National Unity)を中心にして、「虹の国家」の建設が始まった。第9章では、第一に、マンデラ政権誕生後の南アフリカ経済の動向を概観し、第二に、日本と南アフリカとの貿易関係の現状について考察した。次いで、第三番こ、投資市場としての南アフリカの変化と最近の日本企業の対南アフリカ投資の動向を明らかにし、第四に、南アフリカの通商戦略とそれに伴って現れてきた対日要求の意味について検討している。 ところで、本研究では、2つの付論を設けている。付論Iでは、サハラ砂漠以南のアフリカのなかで、対象とする地域を英領熱帯アフリカに限定し、第二次世界大戦前の日本との通商関係の発展を考察した。すなわち、戦前期の日本と英領熱帯アフリカの貿易はどれほどの展開を示していたのか、また、英領熱帯アフリカへの日本製品の進出が諸外国との関係ににおいでどのような問題を引き起こすことになったのか、という点について考察している。
application/pdf
総研大乙第58号
目次
- 目次
- 序-本研究の目的-
- 第1部 19世紀末~第二次世界大戦までの日本-南アフリカ通商関係史
- 第1章 日本・アフリカ・国際経済-1880年代~第二次世界大戦-
- 1 日本-アフリカ貿易の概観
- 2 日本・アフリカ・国際経済
- 3 南アフリカ経済小史
- 第2章 戦前期日本の南アフリカ経済事情調査
- 1 戦前期日本の外務省通商局による主要な調査報告書
- 2 『貿易雑誌』にみられる南アフリカ経済情報
- 第3章 戦前期日本の対南アフリカ貿易と日本企業の活動
- 1 日本の対南アフリカ貿易の展開
- 2 日本-南アフリカ貿易にかかわった日本企業
- 第4章 世界恐慌期における日本-南アフリカ通商関係史
- 1 南アフリカ市場調査の一端-『朝日新聞』の報道から-
- 2 日本の対南アフリカ貿易-1930-1936年-
- 3 南アフリカ市場の日本品と「東洋の脅威」論-ダーバン駐在名誉領事の報告に基づいて-
- 4 日本の対南アフリカ通商政策
- 第5章 『日阿取極』と南アフリカ羊毛購入問題
- 1 『日阿収極』への動き
- 2 南アフリカ市場と日本製綿布
- 3 南アフリカの通商政策と日本品をめぐる通商摩擦
- 4 日本の南アフリカ羊毛購入対策
- 第2部 第二次世界大戦後の日本-南アフリカ通商関係史
- 第6章 日本・アフリカ・国際経済-第二次世界大戦後~1980年代-
- 1 戦後の国際経済の変化
- 2 戦後の日本経済の変化
- 3 戦後のアフリカ経済と南アフリカ
- 第7章 戦後日本の対南アフリカ貿易
- 1 南アフリカ市場情報の収集と報知のシステム-「日本貿易振興会」の設立
- 2 『通商弘報』にみられた南アフリカ市場調査の概観
- 3 戦後日本の対南アフリカ貿易の展開と通商問題
- 第8章 1980年代における日本-南アフリカ通商関係の新展開
- 1 日本-南アフリカ貿易の現状
- 2 日本の対南アフリカ投資
- 3 日本の対南アフリカ通商政策の新展開
- 第9章 新生南アフリカの誕生と日本-南アフリカ通商関係の新潮流
- 1 マンデラ政権誕生後の南アフリカ経済の動向
- 2 日本-南アフリカ貿易関係
- 3 投資市場としての南アフリカの新動向と日本企業
- 4 南アフリカの通商政策と日本
- 付論I 1930年代の英領熱帯アフリカ市場における日本製品-日本領事報告に基づいて-
- 1 英領熱帯アフリカ市場への関心-『貿易雑誌』の調査に基づいて-
- 2 日本の対東アフリカ貿易-1926~1939年-
- 3 日本の対西アフリカ貿易-英領西アフリカを中心にして-
- 4 熱帯アフリカ市場をめぐる日英貿易摩擦
- 付論II 新生南アフリカにおける黒人企業の動向
- 1 マンデラ政権誕生後の南アフリカ
- 2 「復興開発計画」(RDP)と中小黒人企業の育成-持続的発展の枠組-
- 3 ポスト・アパルトヘイトのブラック・ビジネス
- 結び