幼児における筆記具操作の発達に関する研究 ヨウジ ニオケル ヒッキグ ソウサ ノ ハッタツ ニ カンスル ケンキュウ

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著者

    • 尾崎, 康子 オザキ, ヤスコ

書誌事項

タイトル

幼児における筆記具操作の発達に関する研究

タイトル別名

ヨウジ ニオケル ヒッキグ ソウサ ノ ハッタツ ニ カンスル ケンキュウ

著者名

尾崎, 康子

著者別名

オザキ, ヤスコ

学位授与大学

筑波大学

取得学位

博士 (心理学)

学位授与番号

乙第1907号

学位授与年月日

2003-02-28

注記・抄録

博士論文

問題と目的子どもは,幼児期に筆記具操作を発達させていくが,その筆記具操作の発達には,上肢運動発達とそれを支える高次中枢機能の発達が反映されていると考えられる。従って,筆記具操作の発達メカニズムの解明のためには,系統的多面的な検討が不可欠である。しかし,従来の研究では,行動計測が簡略であったり,筆記具の操作段階の設定が粗かったりと,詳細な筆記具操作が系統的に検討されてない。また,筆記具操作と高次諸機能との関係についての検証もされていない。そこで,まず,描画時の筆記具操作の様子を4方向から同時撮影し,そのVTR録画画面を多面的に検討することにより,幼児の筆記具操作を筆記具持ち方,上肢の安定性,上肢運動の側面から調べ,幼児の筆記具操作の発達変化を系統的に明らかにする。次に,筆記具操作の発達が子どもの象徴,認知,行動制御などの高次諸機能の発達と如何なる関係を有しているか検討し,筆記具操作の発達メカニズムを明らかにすることを目的とした。なお,研究方法として,横断的研究と縦断的研究を行うことにより子どもの行動発達を捉えていくことを目指した。筆記具操作の発達変化30ヶ月から69ヶ月の幼児に対して,円塗課題を遂行している際の筆記具操作の発達変化を調べた。その結果,加齢に伴い,子どもは筆記具持ち方を握力把握から三面把握へ,机と接触する上肢部位を近位から遠位へと移行することが示された。これら筆記具持ち方と上肢部位の机との接触状態は,それぞれ単独に推移するのではなく,互いに呼応しながら発達推移していった。また,上肢運動は,近位の運動から遠位の運動へと移行し,最終的には最も遠位の運動である指の動き獲得に至ることが示された。これら上肢運動の発達経過は,上肢運動系の内的拘束が次第に獲得されていく過程であり,さらに内的拘束は子どもが机に上肢をつけることによって強化され,遠位の上肢運動が引き出され易くなっていた。このように子どもが加齢に伴い筆記具持ち方と机の接触状態とを呼応しながら変えていくことは,上肢運動を近位から遠位に引き出していき,最終的には最も微細な指の動きを発現させるための先導的な役割を担うものと考えられた。筆記具操作と円塗りつぶし行動円塗課題については,子どもが塗りつぶした円塗作品の画像処理を行い,円の塗り残し面積と塗りすぎ面積を算出し,円塗り上がり状態を定量的に評価した。この円塗上がり状態と筆記具操作との関係を調べたところ,筆記具操作の発達は,円塗りつぶし行動に対応して推移していくことが示された。特に,塗り残しなく円の中をきれいに塗ることが,筆記具操作における指の動きの出現と密接に関係していたことから,円塗課題では,「きれいに塗る」という目標が中枢で想起され,その運動プランに基づいて行動制御を行う段階に至った時に指の動きが引き出されることを表していると考えられた。筆記具操作と象徴的表象機能幼児に自由に絵を描かせ,それを Kellogg (1969) の分類に基づき4つの描画段階に分類した。その描画段階と筆記具操作との関係を調べたところ,筆記具操作の発達は,描画発達と緩やかに対応して推移していったが,特に絵画的描写と指の動きの出現とは密接な関係があることが示された。一方, KIDS 発達検査を実施し,筆記具操作と精神発達の関係を調べた結果,精神発達の中でも描写と言語に関する発達が筆記具操作と関係することが示された。このように,描画と言語という象徴的表象機能が筆記具操作と関係していたことから,円塗課題における筆記具操作の発達について,子どもの成長過程において「きれいに円の中を塗る」という目標が象徴的表象レベルで明確に捉えられ,その目標に沿った的確な行動制御が行われることによって筆記具操作も精緻な状態へと引き上げられ,最終的に指の動きが引き出されていくことが考えられた。Rosenbloom & Horton (1971) は,筆記具を三面把握で把持し,指を動かして描く「動的三面把握」が認められるかどうかは,神経生理学的成熟や微細運動機能障害の指標となりうることを指摘しているが,本研究において,象徴的表象という高次中枢機能の飛躍的な発達が指の動きを発現させていくことが示されたことは,それらの知見を支持することとなった。総括筆記具操作の発達は,上肢運動機能発達を反映するものであった。しかし,筆記具操作の上肢運動機能の発達は,身体運動的成熟によって単独に進行するのではなく,認知面が発達すると上肢運動発達が進行するが,認知面の発達が遅れると上肢運動発達も遅れるというように,認知発達と緊密に関係しながら推移していくことが示された。また,筆記具操作の発達が,子どもの中枢神経系の成熟に依拠しつつ,子どもの日常活動の中で体得されていくものであることが示唆された。本研究では,これらの筆記具操作における上肢運動機能発達と認知発達との相互関係が横断的研究と縦断的研究の何れにおいても検証された。

筑波大学博士 (心理学) 学位論文・平成15年2月28日授与 (乙第1907号)

付: 参考文献

幼児における筆記具操作の発達に関する研究 ~ 尾崎,康子

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000242692
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000243305
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000004278596
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
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