野外活動のための被服類に関する被服衛生学的研究 A hygienic study of the garments for outdoor activity clothing

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著者

    • 前田, 亜紀子 マエダ, アキコ

書誌事項

タイトル

野外活動のための被服類に関する被服衛生学的研究

タイトル別名

A hygienic study of the garments for outdoor activity clothing

著者名

前田, 亜紀子

著者別名

マエダ, アキコ

学位授与大学

九州大学

取得学位

博士 (工学)

学位授与番号

甲第8364号

学位授与年月日

2007-03-26

注記・抄録

博士論文

野外活動における被服類に求められる諸要素の中で、透湿性と防水性は重要な位置にある。野外活動では気候、身体作業量、食物摂取量の違いによる熱量の影響など、様々な複合的な要素が関係する。被服類には、それらの諸条件下で、活動を快適に実行できるよう、野外活動では万が一の事故や遭難から身体を保護するという役割を担っている。そこで本論文では,ヒト-被服-環境系において、野外での被服着用時における快適性に焦点を絞り、被服衛生学的見地より論じた。  第1章では、人類の進化、被服の歴史、被服の役割について概括した。もしも人類が体毛を失わず、発汗機能を備えることがなかったら、被服は現状とは大いに違ったものとなったことであろう。そこで先ず、人類の進化と被服の歴史について併せて眺めた。次に、被服の対自然環境および対社会環境における役割について論じ、被服衛生学領域における被服内気候および快適性研究の動向について述べた。そして、野外活動時における被服類で、最も重要とされる雨衣に用いられている透湿性防水素材の現況と研究の動向をまとめた。  第2章では、野外活動の中でも一般的で、幅広い年齢層の間で行われている登山に着目し、登山時の装備品および被服類に関する調査結果について論じた。これは長野県地区における登山者を対象とするものであった。先ず、回答者の特徴について明らかにし、初心者とベテラン、男女といった観点から解析した。調査回答数は147通であった。初心者とベテランの割合は、78.6%および26.4%であった。被服類の使用は、雨衣(98.8%)、帽子(83.9%)、手袋(82.2%)において高率であった。これらは登山時に際し、最も重要なアイテムとして認知されていることになる。雨衣は、降雨対策のみならず、防寒防風のために使用され、透湿性を求める者が高率であった。特に、雨衣の透湿性についてベテラン群が重視していた。各種装備品の携行率については、初心者とベテラン、男女の間に違いが認められるものがあった。これらについて、グループ行動での必要性、経験や技術を要すること、専門性、重量や嵩、男女各々嗜好の違いなどの観点から検討した。  第3章では、調査から明らかとなった登山における最重要アイテムである雨衣の着用実験について論じた。この研究は、透湿性の異なる3種素材からなる雨衣について比較するものであり、環境条件および作業強度を組み合わせた諸条件が、被服内気候および生理・心理反応に及ぼす効果について検討した。環境条件は、気温10℃および20℃、相対湿度40%および80%を組み合わせた。なお、本研究の特色は、人工気候室内にて作業を行わせ、実際に散水したことである。透湿性防水素材は非透湿性素材に比し、被服内温度、絶対湿度および貯熱量において有意に低く、蒸れ感の申告値は低く、温熱ストレスの低減効果が認められた。「散水なし」と「散水あり」を比較すると、後者において温熱ストレスが小さくなり、これは外衣の濡れが直接的な冷却効果をもたらすためと推察した。  第4章では、野外において想定される被服類の濡れが人体におよぼす影響について実験を行った。これは気温、衣服様式、衣服の水分率、作業強度の各条件を組合せ、生理・心理的観点から検討するものであった。環境条件は、気温20、25、30(RH80%一定)とした。衣服様式はスウェット上下とTシャツ、短パンとした。衣服の濡れ条件は、D(乾燥)、W1(湿った状態)、W2(水がしたたち落ちる状態)の3種とした。濡れた衣服を着用した場合、気温30℃下では、着衣の工夫により温熱ストレスは最小に止め得ること、そして、気温25℃以下では、特に軽装の場合、寒冷ストレスが生じ得ることが明らかとなった。衣類が乾燥状態であれ濡れた状態であれ、全身温冷感が中立であるとき、Tskは約33℃であった。濡れた衣服条件における特色は、全身温冷感が「冷たい」側へシフトするとき、平均皮膚温が著しく低下することである。これは、乾燥衣服着用時に比べ、全身にわたり皮膚温が低下するため、これにより全身温冷感が著しく低下すると推察した。  以上のことから、野外活動の代表である登山時における装備品・被服類として、雨衣が最も重要なアイテムであることを明らかにした。特に透湿性防水素材が高く要求されていたことから、異なる透湿性防水素材外衣の着用実験を遂行し、透湿性防水素材が非透湿性防水素材より、温熱ストレスを軽減する条件と、散水時にはこの効果が発揮されない場合があることを明らかにした。さらに、野外活動において被服類が直接濡れることを想定し、生理的測定項目および主観申告による評価を行った。濡れ衣服がもたらす寒冷ストレスの条件を明らかにし、野外活動時における被服類について、被服衛生学的見地よりまとめた。

目次 第1章 序論 第2章 登山用装備品および被服類の実態調査 第3章 野外活動用外衣の被服衛生学的研究 第4章 濡れた衣服の体温調節反応への影響 第5章 総括 引用文献 謝辞 巻末補遺

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500002294555
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000002859578
  • DOI(JaLC)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000008973329
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
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