サウナによる生理・心理反応と看護への応用 Physiological and subjective responses to sauna bathing and applications in nursing
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著者
書誌事項
- タイトル
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サウナによる生理・心理反応と看護への応用
- タイトル別名
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Physiological and subjective responses to sauna bathing and applications in nursing
- 著者名
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宮園, 真美
- 著者別名
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ミヤゾノ, マミ
- 学位授与大学
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九州大学
- 取得学位
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博士 (芸術工学)
- 学位授与番号
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甲第10358号
- 学位授与年月日
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2011-03-24
注記・抄録
博士論文
本研究では、サウナ使用時の生理・心理反応を明らかにし、看護に応用するために、健常若年者への実験及び健常高齢者への実験を行い、基礎的資料を得た。また、その資料を基に、入院患者へのフットサウナを行い3 日間連用前後の睡眠評価を行った。第1 章では、本研究の背景、目的及び本論文の構成について示した。わが国の循環器医療領域ではサウナを温熱効果による末梢血管拡張作用を有効に使った温熱療法として活用しその研究が盛んである。血管拡張のみならず、その波及効果は、疼痛や疲労回復にも効果があるとされるが、看護において、科学的なエビデンスを基にしたサウナの活用は未踏の域である。そのため、今後、サウナによる温熱効果を積極的に活用し、看護へ応用するための可能性について考察し、今後サウナを看護へ応用するために必要な基礎的資料を得ることを本研究の目的とした。第2 章では、サウナを看護へ適用する際に必要となる基礎的資料を得るために、まず、健常若年者におけるサウナ使用時の生理・心理反応について検討した。使用するサウナは、今後、看護に応用することを考慮し、身体的負担の少ない、臥床体位で使用できる頸下ドーム型サウナ(以下ドームサウナ)とした。その後の温度条件を検討するために、ドームサウナの出力100%のレベルと出力50%のレベル(ドーム内温度約65℃)の2 条件を設定し、実験を行った。測定項目は、直腸温、熱補償法による深部体温(額)、心拍数、及び血圧であった。なお、その後の高齢者や入院患者への適用のために、熱補償法による深部体温(額)と直腸温との関連性についても検討した。またサウナ前後の体重測定、採血、実施中の温冷感、温熱的快適感についての主観申告についても調査した。その結果、出力レベル間の差は認められず、深部体温は約0.8℃上昇し、循環血液量の増加により収縮期血圧及び心拍数の上昇、拡張期血圧の低下が認められた。実験前後の体重測定では、810~840gの発汗が認められ、体重あたり約1.3%の脱水を認めた。血圧や心拍数の著変を伴うことなく入浴と同等の深部体温の上昇が見込まれること、サウナ温度約65℃で十分な温熱効果が望めることが明らかになった。第3 章では、入院患者や高齢者へサウナを適用するために、同設定で健常高齢者へ実験を行った。生理反応の結果は、若年者同様、深部体温が約0.8℃上昇した。末梢血管拡張及び末梢血管抵抗の低下により拡張期血圧の低下が認められたが、収縮期血圧の上昇には至らなかった。実験前後に測定した体重測定では、390~460gの発汗が認められたが、若年者の発汗量の約半量であり、予測以上に発汗量が少ないことがわかった。心理反応においては、サウナを使用した後はリラックスする傾向を認めた。第4 章では、心不全で入院中の患者に、フットサウナを用いた実験を行った。対象が入院患者であり、症状の増悪や治療の妨げとなる危険性があるため、より侵襲が少ない方法として、部分サウナの一つであるフットサウナを選択した。このサウナは、下腿全体を輻射熱で加温するため、通常の足浴以上に全身的な効果、特に睡眠の改善が期待できると考え、フットサウナ使用前後で睡眠状態がどのように変化するか検討した。生理・心理反応の測定は、3 日間のサウナ実施の初日に実施した。深部体温は熱補償 法で、最高0.4℃の体温上昇が認められた。心拍数、血圧の変動はほとんど認めなかった。この結果によって心不全患者であっても少ない心負荷で深部体温上昇を見込めるということが分かった。入院患者においても、リラックスする傾向は同様であった。睡眠は、OSA 睡眠調査票とセントマリー病院睡眠調査票、及びアクチグラフによる体動状況によって評価したところ、OSA 睡眠調査票の「夢見」、に有意差が見られた。心不全患者は、薬物の副作用で悪夢を見ることが多く、フットサウナの実施は睡眠の一助になったと考える。睡眠評価点数は全体的に改善しており、積極的な温熱効果を活用した看護の一環として今後も症例数を増やし検討を続けていきたいと考える。本研究を通して、サウナという通常の入浴以外の温熱効果の活用によって、健常若年者、健常高齢者及び入院患者の生理・心理反応を把握することができた。実験によって得られたサウナによる生理・心理反応は、温熱刺激と睡眠の関係におけるエビデンスとなる基礎的資料であり、入院患者の症状緩和や不眠の解消の様な具体的な援助として役立つものであると考える。今後の課題は、患者へのフットサウナを継続することで、長期間フットサウナを使用した場合の結果を検討することである。また、今回は睡眠に焦点化したが、今後は疲労や疼痛など、看護問題となる事象へのフットサウナにおける効果を検討していく必要がある。今後も、サウナによる温熱刺激を活用して対象のQOL 向上のための積極的な看護援助を研究していきたい。
Physiological and psychological reactions during taking a sauna were investigated in healthy young and elderly subjects to collect basic information aiming at the application of saunas in nursing. Based on the information, we applied foot saunas for inpatients and evaluated their sleep before and after the use of the foot sauna for 3 consecutive days. In Chapter 1, the background, objective, and structure of this report were described. We set the objective of this study as the investigation of the possibility of applying the thermal effect of saunas for nursing and the collection of basic information. In Chapter 2, Physiological and psychological reactions to saunas were investigated in healthy young subjects. A dome sauna applied below the neck (dome sauna) was adopted because a recumbent position is possible. At the middle-level temperature condition (65-85℃), the deep body temperature rose by about 0.8C. An increase in the systolic blood pressure and heart rate, and peripheral vascular dilatation and reduced peripheral vascular resistance lowered the diastolic blood pressure. On body weight measurement, 810-840 g of sweat was perspired. About 1.3% per body weight of dehydration was observed after sauna. In Chapter 3, the experiment was performed in healthy elderly subjects under the same conditions. An about 0.8C rise in the deep body temperature was observed. The diastolic blood pressure decreased, but the systolic blood pressure did not rise because of a reduced circulatory function in the elderly. On body weight measurement, 390-460 g of sweat was perspired. The subjective mood, inventory JUMACL, was significantly improved after the sauna, showing that the subjects were relaxed after the sauna. In Chapter 4, an experiment using a foot sauna was performed involving inpatients with heart failure. Focusing on insomnia, we investigated changes in their sleep condition after the use of the foot sauna. Physiological reactions were measured on the first day of 3-day sauna treatment. A maximum 0.4℃ elevation of the body temperature was observed during the foot sauna. No changes were noted in the heart rate or blood pressure. These findings revealed that the deep body temperature can be elevated at a small cardiac load even in heart failure patients. The sleep condition was evaluated employing the OSA and St. Mary’s Hospital sleep inventories and body movement measured using an actigraph. A significant change was noted in ‘dreaming’ in the OSA sleep inventory. Since the sleep score was generally improved, we are planning to continue sauna use as a part of nursing actively utilizing the thermal effect involving an increased number of patients.
第1章 序論 1.1.はじめに 1.2.サウナによる温熱療法 1.2.1.サウナの効果 1.2.2.サウナの種類 1.2.3.臨床におけるサウナを使用した温熱療法 1.3.看護場面における温熱効果の活用 1.3.1.温罨法の活用 1.3.2.足浴と睡眠 1.4.本研究の目的 1.5.本論文の構成 第2章 頸部下ドーム型サウナ使用時の若年者の生理・心理反応 2.1.はじめに 2.2.実験方法 2.3.結果 2.4.考察 2.5.まとめ 第3章 頸部下ドーム型サウナ使用時の高齢者の生理・心理反応 3.1.はじめに 3.2.実験方法 3.3.結果 3.4.考察 3.5.まとめ 第4章 フットサウナ使用時の入院患者の生理・心理反応~睡眠導入へ焦点を当てて~ 4.1.はじめに 4.2.実験方法 4.3.結果 4.4.考察 4.5.まとめ 第5章 総括 引用文献 謝辞 巻末資料