炭化ケイ素PNダイオード高エネルギー粒子検出器の単一アルファ粒子誘起電荷収集特性に関する研究

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Author

    • 岩本, 直也 イワモト, ナオヤ

Bibliographic Information

Title

炭化ケイ素PNダイオード高エネルギー粒子検出器の単一アルファ粒子誘起電荷収集特性に関する研究

Author

岩本, 直也

Author(Another name)

イワモト, ナオヤ

University

電気通信大学

Types of degree

博士 (工学)

Grant ID

甲第660号

Degree year

2012-03-23

Note and Description

博士論文

2011

ワイドバンドギャップ半導体の一つである炭化ケイ素(SiC) を用いたダイオードは、ノイズ耐性に優れた高エネルギー粒子検出器としての応用が期待できる。本研究は、SiC ダイオード高エネルギー粒子検出器の電荷収集特性を詳細に調べることを目的に行ったものである。高エネルギー粒子検出器は、高エネルギー粒子によって生成された電子正孔対(電荷) を収集することで入射粒子を検出するものである。したがって、電荷収集特性を明らかにすることは、高エネルギー粒子検出器の開発において必要不可欠である。高エネルギー粒子検出器として、n 型6H-SiC 基板上にp+n ダイオードを作製し、その電荷収集特性を5.486 MeV のエネルギーを持ったアルファ粒子を用いて評価した。逆バイアス電圧を印加した6H-SiC p+n ダイオードに対し、室温、暗状態でアルファ粒子を入射させ、収集される電荷量をパルス波高スペクトル分析法により測定した。電荷収集量は逆バイアス電圧の上昇に伴い増加し、30 V 以上で飽和する。飽和状態での電荷収集量は116 fC であり、ダイオード内部に生成される電荷量の理想値と比較すると電荷収集効率は95% である。また、パルス波高スペクトルから推定されるエネルギー分解能は26keV(0.5%) である。これらの電荷収集効率とエネルギー分解能の値は、高エネルギー粒子検出器として使用するのに十分に優れた値であると言える。さらに、6H-SiC p+n ダイオードと市販のSi pin ダイオード高エネルギー粒子検出器のパルス波高スペクトルを比較したところ、高温環境や可視光環境では、6H-SiC p+n ダイオードの方が優れたエネルギー分解能を示し、ノイズ耐性に優れることを確認した。また、測定した電荷収集量と逆バイアス電圧の関係について、従来から提唱されている電荷収集モデルを用いて解析を行った。この電荷収集モデルでは、空乏層内に生成された電荷はドリフトにより収集され、空乏層外に生成された電荷は拡散により収集されると考えられている。ところが、空乏層幅がアルファ粒子の飛程よりも短い60 V 以下の低バイアス状態では、この電荷収集モデルでは実験結果を再現できないことが明らかになった。この問題について、半導体デバイスシミュレータを用いて解析を行った。電荷収集量のシミュレーション結果は、従来の電荷収集モデルとは異なり、低バイアス状態でも実験結果を再現することができた。この理由を調べるために、シミュレーション結果を解析したところ、入射したアルファ粒子の飛跡に沿って一時的に空乏層外に電界が形成され、空乏層外からも効率よく電荷が収集されることが明らかになった。本研究では、この電界が形成される領域をExtended Drift Region と呼ぶ。従来の電荷収集モデルではExtended Drift Region について考慮されていないため実験結果を再現することができなかったものと考えられる。また、シミュレーション結果について詳細な解析を行うことで、Extended Drift Region の形成メカニズムを明らかにした。さらに、6H-SiC p+n ダイオードの電荷収集特性について欠陥との関係を調べた。高エネルギー粒子検出器は、長期間使用されることで大量の高エネルギー粒子に曝されるため、内部の欠陥濃度が増大する。したがって、欠陥の電荷収集特性への影響を明らかにする必要がある。本研究では6H-SiC p+n ダイオードに対し、高エネルギーの電子線を照射することで意図的に欠陥を形成し、電荷収集特性の変化を調べた。その結果、結晶の格子位置から炭素原子核をはじき出すのに必要なエネルギー以上の電子線を照射した場合、電荷収集量が低下することが明らかになった。したがって、電荷収集量の低下には、少なくとも炭素原子に関係した欠陥が影響すると言える。本研究では、電荷収集量を低下させる欠陥を検出するための新しい手法としてAlpha Particle Induced Charge Transient Spectroscopy を提案し、欠陥評価を行った。その結果、電荷収集量が低下した6H-SiC p+n ダイオードからは共通して欠陥X2 が検出された。X2 は200℃ の熱アニールによって消滅し、これに伴い電荷収集量が回復する。したがって、X2 は電荷収集量の低下に影響する欠陥であると判断できる。X2 の活性化エネルギーと熱アニール特性は、多くの文献に報告されている電子トラップEi のものと酷似していることから、両者は同じ欠陥であると考えられる。過去の文献においてEi は炭素の格子間原子による欠陥であると考えられており、本研究において、炭素原子核をはじき出すのに必要なエネルギー以上の電子線を照射した場合にX2 が形成され、電荷収集量が低下したこととも一致する。以上のように、6H-SiC p+n ダイオードの電荷収集特性について詳細な研究を行った。6H-SiC p+n ダイオードは、室温、暗状態において高い電荷収集効率と優れたエネルギー分解能を示した。また、高温環境や可視光環境においてはSi 粒子検出器よりもノイズ耐性に優れることを確認した。さらに、電荷収集量の実験結果について半導体デバイスシミュレータを用いた解析を行い、詳細な電荷収集メカニズムを明らかにした。また、電子線を照射した6H-SiC p+n ダイオードの欠陥評価を行い、電荷収集量を低下させる欠陥を特定した。この欠陥は、比較的低温の熱アニールによって消滅し、電荷収集量も回復することから、6H-SiC p+n ダイオードは高エネルギー粒子検出器として応用可能であると結論した。

41access

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    500000560189
  • NII Author ID (NRID)
    • 8000000562396
  • Text Lang
    • jpn
  • NDLBibID
    • 023851684
  • Source
    • Institutional Repository
    • NDL ONLINE
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