高強度銅Cu-Sn-Pの動的再結晶挙動に関する研究 A Study on Dynamic Recrystallization Behavior in a Cu-Sn-P High Strength Copper
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著者
書誌事項
- タイトル
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高強度銅Cu-Sn-Pの動的再結晶挙動に関する研究
- タイトル別名
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A Study on Dynamic Recrystallization Behavior in a Cu-Sn-P High Strength Copper
- 著者名
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渡辺, 雅人
- 著者別名
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ワタナベ, マサト
- 学位授与大学
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電気通信大学
- 取得学位
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博士 (工学)
- 学位授与番号
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甲第669号
- 学位授与年月日
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2012-03-23
注記・抄録
博士論文
2011
本論文では、新しく開発された高強度銅Cu-Sn-P の製管や組織制御に必要な熱間押出加工時の変形挙動や強度上昇のための組織制御と結晶粒微細化などの基礎的知見を得ることを目的とした。材料として、まず工場の生産現場で使われている粗大粒である鋳造材を、次に鋳造材の柱状晶を模擬した双結晶材を、更にSn 添加量を変量した微細粒多結晶材を、それぞれ熱間圧縮して、動的再結晶の挙動を調査した。従来材のりん脱酸銅管Cu-P に比べて高強度銅管Cu-Sn-P は、Sn の固溶の影響によって動的再結晶の発現が遅延するため、熱間変形時に高い応力が必要となることがわかった。また、実機の押出条件に近い真ひずみ速度ε=2.0×10-1s-1 では組織は微細化するものの、動的再結晶の発現が遅れるため未再結晶域が残り不均一な組織になることがわかった。動的再結晶粒の生成において、低ひずみ速度域では粒界のセレーションにともなう粒界上での優先的な核生成が支配的であり、高ひずみ速度域では粒界での核生成に加えて、すべり帯、せん断帯形成により粒内も動的再結晶粒の発現ポイントとなることがわかった。更には、実生産の押出条件に近い温度1153K、真ひずみ速度ε=2.0×10-1s-1 では、高速・高温変形中の組織のランダム化と、その後の冷却過程での静的再結晶の発現による組織の均一化と微細化が起きることが示された。Sn 添加によって動的再結晶粒の微細化が可能であるが、高いSn 添加量により動的再結晶の発現の著しい遅延によって、未再結晶域が残る不均一組織になるリスクがあることや、本研究の範囲では1073K 以上の高温域でのSn の固溶強化は0.3mass%で飽和していることが判明したことから、Cu-0.65mass%Sn-0.020mass%P である現行の高強度銅管における結晶粒微細化においてのSn 量の最適化の必要性が示唆された。Cu-Sn-P 合金の動的再結晶のメカニズムは、一般的なCu 及びCu 合金のそれとほぼ同じで、高温変形下で粒界のセレーションに引き続いて誘起される焼鈍双晶の発現によって支配された、不連続動的再結晶型であると判断された。