超伝導加速空洞のための新しい高次モードダンパーの開発

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著者

    • 許斐, 太郎 コノミ, タロウ

書誌事項

タイトル

超伝導加速空洞のための新しい高次モードダンパーの開発

著者名

許斐, 太郎

著者別名

コノミ, タロウ

学位授与大学

総合研究大学院大学

取得学位

博士 (理学)

学位授与番号

甲第1492号

学位授与年月日

2012-03-23

注記・抄録

博士論文

  超伝導加速空洞は次世代高エネルギー物理学実験機ILC (International Linear Collider: 国際リニアコライダー)の中核技術として用いられる。ILCの特徴はビームが1つの加速空胴を1度しか通過しない線形加速器を使用する点である。このためILC加速器ではビーム衝突点までエミッタンスやエネルギー広がり等を保ったまま加速できる加速空洞が求められる。そこで、超伝導加速空洞の高電界化と高エネルギービームを高品質に保つことが重要である。また中心エネルギー500GeVを得るために、1.3GHzの9Cell超伝導加速空洞が約16000台必要であるため、建設コストを抑えるためにコンパクトな設計でなければならない。  加速空洞とはその内部にマイクロ波を閉じ込めた共振器であり、加速空洞の場合、加速に適したTM010モードを閉じ込めている。ただし、加速空洞にはビームの加速に用いる加速モード以外にHOM(Higher Order Mode:高次モード)と呼ばれる共振モードが数多く存在する。HOMはビームが空洞を通過するときに発生するWakefield(航跡場)により励起され、後続のビームに作用しビームエミッタンス・エネルギー広がりを劣化させる。このため、HOMダンパーと呼ばれるHOMをダンプする構造物が加速空洞には不可欠である。   HOMダンパーは加速モードとHOMを選別し、加速モードは空洞内に閉じ込め、HOMのみをダンプする機能が必要である。既存の超伝導加速空洞用HOMダンパーでは主に2つの方法が使われている。1つ目は導波管やビームパイプのCutoff周波数を加速モード周波数以上に設定することでHOMのみ伝播させRF吸収体でダンプする方法である。2つ目はビームパイプ部に設置したループアンテナで加速モードとHOMを結合させ、カップラー内部に組み込んだ加速モード周波数を反射するバンドパスフィルターを使い加速モードを空洞内部に閉じ込め、HOMのみカップラーから空洞外部に取り出しRFダンパーでダンプするTESLA型HOM Couplerと呼ばれる方法がある。後者の方法をILCではBaselineとして採用している。  導波管やビームパイプのCutoff周波数を利用する方法はHOMダンパーのサイズが大きくなることや、ビームパイプ径をHOMが取り出せるように大きくしなければならず加速モード場のビームパイプへの染み出しが大きくなり加速勾配が低くなるためILCには適さない。TESLA型HOM Couplerはコンパクトな形状ではあるが、ビーム軸に対し局所的に取り付けられるため、Dipoleモードの縮退が解かれHOM Couplerと結合が弱いHOMが生じる問題点を持つ。  一方、加速空洞の高電界化の観点から見ると、TESLA型HOM Couplerは複雑な形状を持ち洗浄が困難なため40MV/m付近から高電界でQ Slopeを引き起こし、高電界を達成できないという問題がある。  我々は既存のHOM ダンパーに代わるDemountable Damped Cavity (DDC)と名付けたHOMダンパーをILCのAlternative Cavity Design(ACD)として提案する。   DDCのRF構造について説明する。まず、加速モードとHOMを同軸管に結合させる。この同軸管の外導体にはBeampipeを用いる。内導体の挿入長さによって結合を強くできる。次に、同軸管途中に設置したChokeで加速モードのみ加速空洞側に反射して、加速モードを加速空洞内に閉じ込める。一方、HOMは同軸管を伝播し同軸管終端まで到達する。最後に、同軸管終端には77Kのサーマルアンカーに保持されたRF吸収体(Ferrite)で熱に変換しダンプする。   DDCでは高電界でのQ Slopeを克服するためにChoke部をフランジ構造にしてDemountableにすることで、洗浄を容易にしている。なお、DDCではHe Vessel のBaseplateをChoke空洞の一部としDemountableのフランジとしても用いることで、ILCに要求されるコンパクト化を実現する。  本研究ではIchiro単セル空洞にDDCを適用してDDCの原理実証を行うことを目的とする。原理実証試験で検証した項目は主に以下の5つである。[1] シミュレーションによるアイデアの検証シミュレーションの結果、Chokeのバンド幅は25kHzであった。これは9Cell空洞のLorentz Detuning量~1 kHzに比べて十分に大きい。超伝導空洞はHigh-Qであるために周りの振動やLorentz Detuningによる周波数の離調問題がある。本アイデアは、こうしたHigh-Qでも十分に使える事が検証された。[2] 加速空洞とChokeの周波数マッチングの検証加速空洞とChokeの周波数マッチングを室温で取った状態で2Kに冷却しても周波数マッチングを維持できた。空洞冷却時における空洞とChokeの周波数の離調問題がないことが分かった。Chokeにチュナーなどを付ける必要がないことが分かった。[3] Demountable性の実証Demountable部の磁場強さは加速空洞の最大表面磁場の1/6であるのでDemountable部はSuper-Jointでなければならない。Demountableのフランジ形状を修正する事で最終的に加速電界19 MV/m 、Qo=1.5×1010を得た。Demountable構造が磁場の強い場所でも使える事を実証した。ただし再現性の追求が今後の課題である。[4] 洗浄の容易さの実証上に述べたDemountable部の実証試験ではX線は観測されなかった。また、他の測定でもX線が観測されていない。これによりDemountableにすることで容易に表面洗浄できる事を実証した。[5] Multipacting(MP)、 Field Emission(FE)の検証シミュレーションでは、Choke内のMPは弱い事が予想されている。内導体を含めた試験では、最大加速電界までX線は観測されていない。このことからMPやFEは全く問題ないことが実証された。また内導体などを空洞に持ち込んでも、Field Emission やMultipactingが起きないことが分かった。[6] 吸収体でのHOMのダンプ率吸収体を装着した試験の結果、吸収体での損失を表すQ値QHOMは常温で、TE111はQHOM=200、TM110はQHOM=300を得た。これはTESLA型HOM Couplerに比べ1~2桁良い値である。このように高いダンプ力が得られる事がDDCの特徴の一つである。今後、2Kに冷却した場合の吸収体での損失を測定する。   以上のようにDDCの各項目を原理実証できた。

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000563985
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000566207
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 024026808
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
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