妊娠ラットへの低用量Diethylstilbestrol投与が産子の生殖器系の発達および肝臓ミクロソーム酵素に及ぼす影響 Effects of maternal exposure to a low dose diethylstilbestrol on the development of reproductive organs and hepatic microsomal enzymes in rat offspring

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著者

    • 西川, 修 ニシカワ, オサム

書誌事項

タイトル

妊娠ラットへの低用量Diethylstilbestrol投与が産子の生殖器系の発達および肝臓ミクロソーム酵素に及ぼす影響

タイトル別名

Effects of maternal exposure to a low dose diethylstilbestrol on the development of reproductive organs and hepatic microsomal enzymes in rat offspring

著者名

西川, 修

著者別名

ニシカワ, オサム

学位授与大学

麻布大学

取得学位

博士(獣医学)

学位授与番号

乙第426号

学位授与年月日

2013-01-28

注記・抄録

博士論文

合成のステロイド系エストロジェンであるDiethylstilbestrol (DES) は、1940年代から1950年代にかけて流産防止薬として広範に使用された医薬品である。しかしながら、DES を処方された母親から生まれた子供が成熟期まで成長すると男女を問わず生殖器系の発達に有害な作用を及ぼすことが判明し[Kaplan, 1959; Gill et al., 1976; Whitehead and Leiter, 1981; Bornstein et al., 1988,]、実験動物に対しても同様の阻害作用を有することが明らかとなった[McLachlan et al., 1975; Marselos and Tomatis, 1993]。DES を用いたほとんどの研究は、生殖器系に肉眼的な被害を及ぼすような10-300μg/kg(体重)といった高用量のDES を使用したものであった[McLachlan et al., 1975; Sharpe, et al., 1995; McKinnell et al., 2001; Haavisto et al., 2003]。以前の研究において、妊娠ラットに低用量のDES (0.5, 1.5μg/kg) を長期間(妊娠7 日目〜21 日目)投与して、その産子を観察したところ、雄では血漿テストステロン・レベルの抑制及び精巣上体の組織学的発達の乱れが確認され、メスでは生後3週齡での卵胞の成熟と子宮の発育(子宮角の直径)が促進されることが確認されている(Yamamoto et.al., 2003, 2005)。そこで、本研究は、胎生期に低用量のDES を長期間暴露された場合の同腹の雌雄の産子の生殖器系への影響について、下記の(1) 離乳期以降の卵巣での卵胞の発育に対する作用を検討(2) 子宮の発育を促進させるメカニズムの解明(3) 精巣上体への作用メカニズムの検討(4) DES 投与は血漿テストステロン濃度を変化させるが、精巣ステロイドホルモン合成系において誘発される変化には血漿テストステロン濃度を減少させる決定的に要因が確定できず(Kobayashi et al., 2009)、代謝系へ作用している可能性が考えられる。そこでDES 投与が肝臓における代謝酵素の誘導を変化させるかについて検討し、内分泌かく乱物質の陽性対象化学物質としてのDES の作用をさらに解明することを目的とした。第一章では、合成エストロジェンであるDiethylstilbestrol (DES)を1.5 あるいは 0.5μg / kg / day (DES 1.5 群あるいはDES 0.5 群)の用量で妊娠Sprague-Dawley(SD)ラットに妊娠7 日目〜21 日目の期間、連日皮下投与し、母体へ投与したDES が、その産子の卵巣における卵胞の成長に対してどのような影響を及ぼすかについて検討した。生後6週のDES 1.5 群において、血漿FSH 濃度、血漿LH 濃度、そして総卵胞数に対する一次卵胞と二次卵胞の割合が増加し、原始卵胞の割合が減少した。卵巣内には多数の大きめの間質細胞の集団が出現し、これらの細胞はDES と結合してその作用を仲介するエストロジェン・レセプターα(ERα)を強く発現していた。しかし、このような卵胞成長の変化は生後15 週では観察されなくなった。以上の観察結果から、胎生期に投与された低濃度のDES は産子卵巣の卵胞の成長に対して促進的な作用を有するが、その作用は恒久的ではないことが示唆された。第二章では、DES を1.5 あるいは 0.5μg / kg / day (DES 1.5 群あるいはDES 0.5 群)の用量で妊娠SD ラットに妊娠7 日目〜21 日目の期間、連日皮下投与し、母体へ投与したDES が、胎齢20 日の胎子および生後1、3、6ならびに15 週齢の産子の子宮の発達に対してどのような影響を及ぼすかについて検討した。胎齢20 日において、DES1.5 群の子宮角の長さは増加し、生後3、6 および15 週において長さは短くなった。生後3 および6 週齢のDES 1.5 群の子宮角の太さが増加した。さらに生後1 週の子宮内膜上皮細胞の細胞分裂指数も有意に増加した。以上の観察結果から、胎生期に投与された低濃度のDES は子宮の発達に対して初期には子宮角の長さ、後期では子宮角の太さの成長に促進的な作用を有するが、その作用は恒久的ではないことが示唆された。第一・二章と同様の方法でDES を投与した場合、生後6 週目のDES を1.5μg/kg/day投与した雄産子血漿テストステロン濃度が、生後15 週では、DES 0.5μg/kg/day 投与した雄産子のテストステロン濃度および精巣上体の重量が減少し、精巣上体管の上皮の高さと管腔の大きさが減少することが実証されている。そこで第三章では、胎生期に暴露されたDES によって引き起こされた精巣上体の形態学的な変化が、精巣上体での細胞分裂の抑制によるものであるかを検証するとともに、ホルモン・レセプターの発現にどのように作用するかについても検討した。DES 投与は、精巣上体の細胞分裂指数を変化させなかったが、生後15 週のアンドロジェン・レセプター (AR) mRNA発現量を減少させ、生後6 週のERαmRNA 発現量を増加させた。以上の観察結果から、胎生期に投与された低濃度のDES はステロイド・レセプターの発現を変化させ、この変化が精巣上体の成長を遅延させる要因であることが示唆された。第三章およびこれまでの研究 (Yamamoto et al., 2003, 2005; Kobayashi et al., 2009)によって母体に投与された低濃度のDES は産子雄の精巣上体の発達および精巣機能をかく乱することが実証された。その一例は、生後6 週の血漿テストステロンの減少である。この時精巣のAR mRNA の発現量は増加し、低レベルのテストステロンによる精子形成の阻害を防御することが示唆されている。しかしながら、DES によるテストステロン・レベルの低下と、精巣におけるステロイド合成機能を持つ酵素群のmRNAの発現の変化との間に関連性が見られなかった (Kobayashi et al., 2009)。そこで、第四章では、DES によって血漿テストステロンが抑制される原因を調べるために、DESを投与された母親から生まれた雄の肝臓におけるステロイド代謝がどのように変化するかを明らかにすることを目的とし、肝臓ミクロソーム酵素(ステロイド分解酵素であるCYP3A1、CYP2B1/2、CYP2C11、ならびにステロイドを抱合化するUGT2B1)およびIGF-1(Insulin-like Growth Factor-1) mRNA 発現量を測定した。胎生期のDES 投与はCYP3A1 およびCYP2B1/2 mRNA レベルを減少させたが、CYP2C11 の発現レベルは変化させなかった。生後6 週において、DES 投与はUGT2B1 およびIGF-1 mRNA発現レベルを増加させた。以上の観察結果は、母体へのDES 投与によって減少した血漿テストステロン濃度に反応してテストステロン濃度を正常に維持するために、肝臓のCYP3A1 とCYP2B1/2 の発現が抑制され、精子形成を正常に保つためにIGF-1 の発現が増強される、しかしながら、DES 投与は本来ならば減少するはずのUGT2B1の発現レベルをかく乱してしまうので、結果として生後6 週のテストステロン濃度は減少してしまう可能性を示唆している。以上の結果より、雄産子の精巣の機能を低下させる低用量のDES を、長期間(妊娠7 日目〜21 日目)妊娠ラットに投与した場合、①雌産子の離乳期以降の卵巣での卵胞発育に対して促進的に作用するが、その作用は恒久的ではない、②雌産子の子宮の発育に促進的に作用するが、やはりその作用は恒久的ではない、③精巣上体の性ステロイド受容体の発現を変化させ、この変化が精巣上体の成長を遅延させる要因である、④肝臓に存在する性ステロイド分解酵素の働きを変化させることが証明された。すなわち母体に投与されたDES は、雄産子の生殖器系には抑制的に作用し母体に投与されたDES は、雄産子の生殖器系には抑制的に作用し、雌産子の生殖器系の発達には促進的に作用すること、さらに雄産子の肝臓でのホルモン分解酵素の発現も乱れるために、血漿テストステロン濃度が変化したことが明らかとなった。

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000571112
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000573410
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 024471263
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
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