ミュオンナイトシフトによる銅酸化物超伝導体(Bi,Pb)2201の擬ギャップ状態の研究

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著者

    • 宮崎, 正範 ミヤザキ, マサノリ

書誌事項

タイトル

ミュオンナイトシフトによる銅酸化物超伝導体(Bi,Pb)2201の擬ギャップ状態の研究

著者名

宮崎, 正範

著者別名

ミヤザキ, マサノリ

学位授与大学

総合研究大学院大学

取得学位

博士(理学)

学位授与番号

甲第1494号

学位授与年月日

2012-03-23

注記・抄録

博士論文

   超伝導現象が発見されてより一世紀、銅酸化物超伝導体が発見されてより四半世紀。 今だ、その発現機構の全ては明らかにされておらず超伝導への謎は尽きない。 本研究で対象とする銅酸化物超伝導体の物質群は、その高い超伝導転移温度を示すだけでなく、その周りには母物質の反強磁性モット絶縁体に始まり、スピングラス的状態、超伝導揺らぎに関連していると考えられるネルンスト効果、そして擬ギャップ状態といった変化に富み、興味深い物理現象を多く示す。これら超伝導相の周りで起こる種々の物理現象がどのように超伝導と関係しているのか? あるいはしていないのか? ということを明らかにすることで、高い超伝導転移温度をもつ原因が明らかになり、そして室温で超伝導となる物質を探査する糸口が見つかるかもしれない。その中で、特に注目されているものは、超伝導の発現と関係しているかもしれないと考えられている擬ギャップ現象である。 本論文では、この10年間で高純良試料作成技術及び測定技術の向上により劇的にその実態が明らかにされつつある擬ギャップ状態の研究成果を踏まえて、これまで行われていなかったミュオンスピン回転法(SR法)を用いたミュオンナイトシフト測定から、さらに新しい知見を得ようと試みた。 これまで磁性からの寄与が少なからず存在し磁性によるシフトと擬ギャップによるシフトを明確に区別できなかった事と高い上部臨界磁場(Hc2)を持つ為に、基底状態までミュオンナイトシフトによる擬ギャップ状態の観測が困難であると考えられ、ほとんど測定が行なわれてこなかった。しかし、他の銅酸化物超伝導体と比べて磁気相関が非常に弱い事、強い異方性を持ちc軸方向に対して低いHc2を持つと考えられているBi2Sr2CuO6+δ(Bi2201)に注目することで、SR 測定として初めて擬ギャップの直接観測に成功し、かつ複数のホール濃度による系統的測定を行なった。その結果、擬ギャップが観測し始める温度T*及びミュオンナイトシフトの温度依存性からギャップの大きさ*を見積もり、ホール濃度依存性を得た。さらに、擬ギャップ形成に伴い消失する状態密度はホール濃度によらず一定であるという新しい知見を得ると共に、T=0 Kで残留シフトが観測された。これは運動量(k)空間の基底状態で、フェルミ面に状態密度が存在する事を示し、擬ギャップとは別に金属的状態にある電子(又はホール)が存在することをSRの結果からも示した。 本研究結果から、1)擬ギャップ(T*,*)と超伝導転移温度Tc及びネルンスト効果測定から報告されている超伝導揺らぎのホール濃度依存性は相関していない事、2)他の測定手法によるBi2201の先行研究の物質系とでは、ホールドープの仕方が異なりTcが約1.5倍異なるが、擬ギャップT*は、ほぼ同じ値を示し、少なくともT*はTcの値から独立に決まる値のように見える事、3)超伝導が発現しない過剰ドープ試料でも、擬ギャップは観測された事、4)擬ギャップ形成に伴い消失する状態密度のホール濃度依存性は一定であるが、超伝導を担う超流体密度はTcにおよそ相関するホール濃度依存性を示す、という考察結果を得て、擬ギャップと超伝導は別の物理現象であり、直接的な前駆現象ではないという結論を得た。 さらに高横磁場SR実験の緩和率の温度依存性から、これまでLa2−xSrxCuO4のSR実験から報告されているような磁場誘起磁性がBi2201でも存在することを示唆する結果を得た。これは、強磁場によるスピン揺らぎの抑制が磁性を誘起させることで出現すると考えられる。この磁場誘起磁性は、ミュオンスピン緩和率の温度依存性及び磁場依存性から起源が異なるものが2種類存在し、一方は反強磁性揺らぎに関係したもの、他方は超伝導に関係するスピン揺らぎである可能性を示唆した。 本論文は、擬ギャップが超伝導の前駆現象を前提とするモデルに対して、これを否定するという厳しい制限を与えると共に、本実験結果はk空間で擬ギャップを形成していない金属的状態にある電子(もしくはホール)が電気伝導や超伝導状態を担っていると理解する方が自然である事を示している。また基底状態において、この金属的状態の状態密度は、不足ドープでは超伝導相と共に出現し、ドープ共にその割合も増加する。これらの事実はモット絶縁体から少し離れ、超伝導相が出現する希薄ドープから過剰ドープ側では、超伝導相の基底状態はバンド描像で理解できるとする理論的考えとは一致する。以上のように理論モデルに対しても一定の制限を与えることに成功した。

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000574154
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000576478
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 024792400
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
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