人間とデバイスの感度差を利用した映像の盗撮妨害方式の研究

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著者

    • 山田, 隆行 ヤマダ, タカユキ

書誌事項

タイトル

人間とデバイスの感度差を利用した映像の盗撮妨害方式の研究

著者名

山田, 隆行

著者別名

ヤマダ, タカユキ

学位授与大学

総合研究大学院大学

取得学位

博士(情報学)

学位授与番号

甲第1558号

学位授与年月日

2012-09-28

注記・抄録

博士論文

我々が日々入手・発信する個人情報や機密情報などのデータや,音楽・画像・映像コンテンツといった様々なデジタノレ情報は,情報漏えい,改ざん,著作権侵害といったりスクを常に抱えている.これらのりスクを回避するために,不正アクセス対策,アクセス管理,デジタルフォレンジックなど様々なIT りスク対策が提案されてきたが,1T りスク対策の従来研究は情報システムとそれらをつなぐネットワークを対象としているため,情報システムを操作する人間が行う不正なコピー,改変,配布などの行為は,高度なセキュリティ対策が情報システムに適用されていても,従来研究では防止できなかった.今後は,犯罪者が多大な時間とコストをかけて情報システムに不正アクセスして情報を不正に入手するよりも,情報システムを操作する人間を買収して,情報を入手するケースが増大すると考えられる.すなわち,情報システムとそれを操作・利用する人間との接点で生じるIT りスク(人間系IT りスク)への対策は,情報セキュリティにおける課題だけではなく,我々の情報化社会を守る上での本質的な課題である.本研究では,上述した人間系 IT りスクの中で,データ・コンテンツ流通における人間系ITりスクへの対策を対象とする.具体的には,ディスプレイやスクリーンなどに表示された個人情報や機密情報などのデータ,画像や映像コンテンツを,正当な権限を持つ人間がデジタルカメラで違法に撮影し配布することで生じる情報漏えいや著作権侵害のりスクに着目し,その対策技術を確立することを目的とする.データ・コンテンツ流通における人間系ITりスクの実例として,著作権保護されたデジタルコンテンツであっても,いったんアナログ出力することで,その後デジタルに変換すれば著作権保護されていない状態になるアナログホール問題(analogholeproblem)がある.アナログ端子に由来するアナログホールについてはデジタル端子などへの移行などによる対策が進んでいるが,新しいアナログホール問題として映像の盗撮問題がある.既に,映画館で行われる盗撮により海賊版が露店で販売される事案や,映像配信サイトで公開される事案が発生しており早急な措置が求められている.映像の盗撮に関する従来対策として,電子透かしを用いた方式がある.これは,映像コンテンツに透かしにより固有の情報を埋め込み,盗撮されたコンテンツから透かしを検出することにより,不正が行われた場所や時間を特定する手法である.しかし,電子透かしを用いた従来方式は,不正者による盗撮行為を心理的に抑止する効果はあるが,デジタルカメラなどの撮影機器による盗撮行為自体を防止できない.また,流通した映像コンテンツから盗撮された場所や撮影時間が検出できても,映画館やオフィスに相応の設備(監視カメラシステムなど)がなけれぱ,盗撮者の特定は困難であるという問題があった.そこで,人間とデバイスの感度特性の違いに着目し,人の視覚に影響を与えないノイズ信号を用いて,特定の映像コンテンツの撮影を不能にする映像の盗撮妨害方式の研究を行った一般的にイメージセンサやマイクロフォンなどのデバイスは,人間の視覚や聴覚特性に合わせて設計されるが,デバイスの特性上,完全に一致させることは不可能なため,感度特性に違いが生じる.本盗撮妨害方式は,人間の視覚には影響を与えずにデジタルカメラのイメージセンサにのみ反応するノイズ光を表示装置側から照射することで,通常の映像の視聴には影響を与えずに,映像コンテンツの撮影時にのみ映像の品質を劣化させて,映像の盗撮を無効化する.具体的には,人間の視覚とデジタルカメラのイメージセンサの分光感度特性の違いに着目し,人間の視覚には影響を与えずに撮影映像にのみノイズを重畳する近赤外光源を映像表示装置に組み込むことで,既存の撮影機器に新たな機能を追加することなく,撮影機器による盗撮を妨害する.盗撮妨害方式を映画用100インチスクリーンに組み込んだ盗撮妨害システムを開発し,主観評価実験により本方式が有効であることを示した.盗撮妨害方式は,ノイズ信号として近赤外線を利用しているが,盗撮者が赤外カットフィルタを撮影機器に装着して盗撮を行うと,赤外線によるノイズを除去しながら映像を記録される可能性がある.そこで,赤外カットフィルタによる赤外線ノイズの除去への対策として,赤外カットフィルタの赤外鏡面反射を表示装置側で検知することで,赤外カットフィルタを検知する方式について検討を行った.一般に物体の反射は,鏡面反射と拡散反射から構成されるが,赤外カットフィルタは,高品質によく磨かれた表面を持つため,高い鏡面反射率を持つ.そこで,フィルタからの近赤外鏡面反射を検出するために近赤外領域に高感度を有する赤外カメラを使用し,反射強度や反射領域の形状により赤外カットフィルタをりアルタイムに検知する方式を検討した.先に実装した映画用 100インチスクリーン向け盗撮妨害システムに組み込み,評価実験により本方式の有効性を確認した.赤外を除去するフィルタには,赤外線を反射する性質をもつ赤外カットフィルタの他に,赤外線を吸収する性質を持つ赤外吸収フィルタもある.赤外吸収フィルタは,鏡面反射率が低いため近赤外鏡面反射を検知する上記の方式では検知が困難であったが,光を特定方向に集約することでノイズ光源の高出力化を行うという改良を施し,盗撮が行われる確度の高い前面中央部に高い放射強度を得ることにより,赤外吸収フィルタの検知を可能とした.評価実験では,一般の映画館内を想定し,近距離および遠距離にて検知性能の評価を行い改良方式の有効性を評価し,映画館のような広い場所において赤外フィルタを検知可能であることを示した.本研究で検討した方式は,既に社会問題となっている映像の盗撮に対して,その防止に寄与するものと考えている.また,スクリーン以外の表示装置に適用が可能であり,広範な応用が期待できる.

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000574212
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000576537
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 024794392
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
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