芸術創造と公共政策の共創を誘発するアートプロジェクトの研究 Study of an art project which induces co-creation of art and public policy with education, community development, welfare

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著者

    • 谷口, 文保 タニグチ, フミヤス

書誌事項

タイトル

芸術創造と公共政策の共創を誘発するアートプロジェクトの研究

タイトル別名

Study of an art project which induces co-creation of art and public policy with education, community development, welfare

著者名

谷口, 文保

著者別名

タニグチ, フミヤス

学位授与大学

九州大学

取得学位

博士(芸術工学)

学位授与番号

甲第11442号

学位授与年月日

2013-03-26

注記・抄録

博士論文

アートプロジェクトは、日本において1990年代に成立した社会活動である。地域社会に芸術を投げかける活動は、2000年以降、全国各地に普及した。教育やまちづくり、福祉など公共政策と連携して実施されるアートプロジェクトは、領域横断の活動であるため評価は難しい。そのため、アートプロジェクトの仕組みや方法は明らかになっていない。その普及と発展のためには、理論構築と課題の共有が必要である。本研究の目的は、芸術創造と公共政策の共創を誘発するアートプロジェクトの理論構築である。本研究では、代表的なアートプロジェクトの事例を調査し、その仕組みと方法と課題を抽出した。さらに、その研究成果に基づいて、俯瞰的な観点からアートプロジェクトの価値と可能性について考察した。本研究は序論、本論、結論で構成され、本論は7つの章で組み立てられている。第1章では、アートプロジェクト成立の要因と、その発展の過程について考察した。その結果、アートプロジェクトが1990年に始まり、黎明期(1990-1993)、実験期(1994-1999)、発展期(2000-2011)の3期に区分できることが分かった。第2章では、地域におけるアートプロジェクトを調査し、代表事例を抽出した。調査を行った地域は兵庫県である。兵庫県を対象とした理由は、「地方の重要性」と「阪神淡路大震災」である。現代芸術は、都市部中心の活動であったが、アートプロジェクトは都市部だけでなく、地方においても盛んである。アートプロジェクトの理論構築において、地方を調査対象とすることは有効である。また、1995年に兵庫県を震源地とする阪神淡路大震災が発生した。震災は、「現代芸術」、「文化政策」、「市民社会」の3つの分野の発展を促進する重要な要因となった。それは、アートプロジェクトの発展に大きな影響を与えた。本研究では、調査の結果、7つの代表事例を選定した。代表事例は、「ホタルキノコ」、「町ぢゅう美術館」、「加古川市立山手中学校アートプロジェクト」、「注文の多い楽農店」、「舞多聞ネイチャーアート」、「みっくすさいだー」、「えびすアートプロジェクト」である。第3章では、教育とコラボレーションするアートプロジェクトを調査し、その仕組みと方法と課題を明らかにした。調査した事例は、「ホタルキノコ」、「町ぢゅう美術館」、「加古川市立山手中学校アートプロジェクト」である。第4章では、コミュニティとコラボレーションするアートプロジェクトを調査し、その仕組みと方法と課題を明らかにした。調査した事例は、「注文の多い楽農店」と「舞多聞ネイチャーアート」である。第5章では、福祉とコラボレーションするアートプロジェクトを調査し、その仕組みと方法と課題を明らかにした。調査した事例は、「みっくすさいだー」と「えびすアートプロジェクト」である。第6章では、第3章、第4章、第5章の研究成果を総合し、アートプロジェクトの仕組みと方法と課題について考察した。その結果、アートプロジェクトの仕組みは、「領域横断」、「住民参加」、「共同制作」の3つの条件と、「表現と交流の循環」で成り立っていることが明らかになった。アートプロジェクトの方法については、10種類の企画方法と10種類の運営方法が明らかになった。そして、アートプロジェクトの課題については、6つあることが分かった。その課題は、「副作用」、「地域文化の創出」、「共創のバランス」、「著作権」、「リーダーの養成」、「記録と公開」である。第7章では、第6章までの研究成果に基づいて、俯瞰的視点からアートプロジェクトの価値と可能性を考察した。その結果、アートプロジェクトの芸術創造に関する効果は、「共創芸術の誕生」と「芸術の相対化」であることが分かった。本研究では、現代芸術の概念から逸脱した活動であるアートプロジェクトについて、「共創芸術」という新しい芸術領域の誕生であると考察した。「共創芸術」は、「共感性」、「包摂性」、「連鎖性」を特性として持つ芸術である。「共創芸術」は、近代化によって分断された芸術同士をつなぎ、そこに交通を創出する。その結果、芸術の相対化が実現し、芸術創造の活性化が促進される。また、アートプロジェクトの公共政策における効果は、「地域資源の再編」、「公共政策の攪拌」、「地域協働の創出」であることが分かった。それらの効果は、持続可能な社会や共生社会の実現を促進する。これらの考察を総合した結果、こうした効果は、どれも近代化によって発生した問題と深く関わっていることが分かった。本研究によって、アートプロジェクトが、芸術創造と公共政策の補完という価値と可能性をもった活動であることが明らかになった。

序論 第1章 アートプロジェクトの成立と展開第2章 地域固有資源を生かすアートプロジェクト 第3章 教育と地域社会をつなぐアートプロジェクト 第4章 コミュニティを育むアートプロジェクト 第5章 福祉と育みあうアートプロジェクト 第6章 アートプロジェクトの方法の考察 第7章 アートプロジェクトの意義 結論

芸術工学府_芸術工学専攻

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000575841
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000578182
  • DOI(JaLC)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 024837947
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
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