関係論に基づくユーザ概念モデルの研究 カンケイロンニモトヅクユーザガイネンモデルノケンキュウ A conceptual model of “user” based on relationalism

著者
    • 今江, 崇
    • イマエ, タカシ
    • Imae, Takashi
書誌事項
タイトル

関係論に基づくユーザ概念モデルの研究

タイトル別名

カンケイロンニモトヅクユーザガイネンモデルノケンキュウ

タイトル別名

A conceptual model of “user” based on relationalism

著者名

今江, 崇

著者名

イマエ, タカシ

著者名

Imae, Takashi

学位授与大学

電気通信大学

取得学位

博士(学術)

学位授与番号

甲第733号

学位授与年月日

2013-12-31

注記・抄録

本研究は、ユーザの概念モデルを提案する試みである。ユーザの概念モデルは機器やサービスの設計の指針となり、あるべき技術システムのイメージを左右するものである。技術システムとユーザとの間にある諸問題を解決し、両者の間のよりよい関係をデザインするために、どのような概念モデルに依拠することでユーザと技術システムとの関係をいかに問うことができるのか整理しておく必要がある。2000年代以降、メディアのコンテンツやサービス、情報システムやデバイスの設計開発に際して、ものづくりの新しいアプローチが試みられ、製品、サービスとして提案されている。例えばApple社のiPod、iPhone、iPadといった一連のデバイスとそれらと統合されたコンテンツの流通システムはユーザの使用体験の総体を提案し、デザインする試みとされる。またウェブ・サービスの分野ではユーザの使用を通じてサービスそのものを成長させ、さらなる使用体験の向上を図るWeb2.0と総称される試みがある。そして任天堂のWiiなど、コントローラを操作する作業をゲーム体験の背景に退かせ、ユーザがより直接的にゲームに参与でできるようにする試みがある。これらは機能やスペックを設計するにとどまらず、それを使用するユーザの行動や体験をデザインし、さらにはユーザの行動が触発される状況そのものをデザインする試みである。2000年代以降の製品開発やマーケティングの取り組みでは、技術システムを使用するユーザの体験をデザインすることが課題となる。この課題に対して製品開発やマーケティングの現場では様々なアプローチが試みられているが、そこで利用される具体的な設計の指針やユーザの使用体験を評価する指標は多様である。統一的な観点から使用のデザインの方針を立て、実際の使用を評価するための理論的な枠組みについては十分に議論が尽くされていない。デザインすべき対象としてのユーザとその行動や体験とはいかなる事柄であるのか、それをどのようなモデルで把握するのか、といった検討は議論の途上にある。ユーザの使用体験のデザインということが、それ以前の様々な設計思想とどのように関係しているのか、大局的な理論的展望の元で従来の議論に対してどのような理論的進展を意味するのか明確にする必要がある。本論文ではそうした使用を捉える理論的な枠組みとして関係論に基づくユーザの概念モデルを提案する。関係論の枠組みにおいては、あるものの存在は他のものとの関係の中で生成する事柄と捉えられる。関係論の枠組みに依拠することでユーザは使用に先立ち予め与えられたものとしてではなく、使用のプロセスを通じて生成する事柄と捉えられる。関係論の枠組みに依拠することで、ユーザを所与のものとして前提にできないところで、その生成のプロセスをデザインするという課題が明確になる。検討の手順は以下の通りである。はじめに技術と人間の関係を論じた従来の議論を概括する。産業革命以来、近年に至るまでの技術の使用者に関する議論から、技術システムのあるべき姿を定める際の参照項として用いられてきた人間の理念を整理する。特に近年の設計思想においては、技術システムの機能やスペックを高めるにとどまらず、その「使用」をデザインすることが提唱される。技術システムを使った行動が活性化され、人がユーザになるプロセスをデザインすることが設計の課題とされる。こうした課題に寄与すべく関係論の枠組みに依拠したユーザの概念モデルを提案する。その際、関係論の理論的背景となる20世紀の思想史におけるものごとを捉える枠組みの「実態論から関係論へ」の変容についても検討する。その上で提案した概念モデルの有効性を確認する。われわれの行動様式に大きな変化をもたらした技術システムである携帯電話と、ユーザ体験のデザインを目指したデバイスであるiPadを例に、その使用の捉えられ方を定量的に調査する。その結果から提案した概念モデルにおける使用の捉え方に合致する傾向が、具体的な技術システムの使用についても見られることを示す。本研究の貢献は、関係論の枠組みに基づいたユーザの概念モデルを提案するとともに、それによって近年に至る使用の捉え方の変遷をメタレベルから把握しなおした点にある。この概念モデルによって、ユーザの体験をデザインするという課題をユーザがユーザとして行動するようになるプロセスや状況を準備することとして再構成できる。なお本研究で提案する概念モデルは抽象的論理に基づく仮説である。このモデルを具体的な技術システムやそのインターフェースデザインに応用するためには、モデルを用いて実際のユーザの使用体験を分析する試みを蓄積し、どういったもののあり方がどういったユーザの行動を触発するのか、体系的に整理することが課題となる。

開始ページ : 1

終了ページ : 133

2013

152アクセス
各種コード
  • NII論文ID(NAID)
    500000971554
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000001599091
    • 8000001599092
    • 8000001599093
  • 本文言語コード
    • jpn
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDLデジタルコレクション
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