鉄鋼用耐火物中のSiO2結晶の高温相転移が耐火物特性に与える影響に関する考察
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Bibliographic Information
- Title
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鉄鋼用耐火物中のSiO2結晶の高温相転移が耐火物特性に与える影響に関する考察
- Author
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葛西, 篤也
- University
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京都工芸繊維大学
- Types of degree
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博士(工学)
- Grant ID
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甲第733号
- Degree year
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2015-03-25
Note and Description
収集根拠 : 博士論文(自動収集)
資料形態 : テキストデータ
コレクション : 国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
珪石れんがや高アルミナ質れんが,粘土質れんがなどは熱風炉やコークス炉といった鉄鋼プロセスの設備に使用される鉄鋼用耐火物である.各種の改善・改良によって,これら設備の寿命が著しく向上したことによって,これられんがの国内製造量は減少している.このため,現在では,これられんがは海外製れんがの使用が主流となっている.しかしながら,これら海外製れんがの特性を調べた研究は少ない.本背景の基,海外で製造された珪石れんが,珪石モルタル,高アルミナ質れんがおよび粘土質れんがの4種類について,各耐火物に含まれるSiO2結晶相の相転移挙動とその相転移が耐火物の特性に与える影響について研究を行った.本研究のうち,珪石れんがに関する研究では,製造国とメーカーの異なる7種類の海外製珪石れんがの高温クリープ試験とクリープ試験前後のSiO2結晶相の相転移挙動を調べた.1550℃,-0.2MPa×50hの圧縮クリープ試験で,珪石れんがの5材質に歪の増加が認められた.この歪みの増加は,試験中にトリジマイトからクリストバライトへの相転移が生じたためであり,れんがによってこの相転移量に差が認められた.この相転移挙動の差を確認するため,トリジマイトとクリストバライトおよびCaOの配合量を変化させたタブレットを使用した試験を行った.この結果,1550℃ではこれらの配合量に関係なく,クリストバライトへの相転移が進むことが分かった.トリジマイトが安定である1450℃ではトリジマイトとクリストバライトの配合ではクリストバライトへ相転移すること,適量のCaOの配合でトリジマイトへの相転移が生じることが明らかになった.この結果から,クリストバライト含有量が多くCaO配合量の少ない海外製の珪石れんがはトリジマイトの安定温度でもクリストバライトへ相転移する可能性があることが分かった.このタイプの海外製珪石れんがは国産珪石れんがと異なる膨張変化を生じる可能性があり,設備に導入する前に,そのれんがの相転移挙動を確認して使用することが重要と結論した.珪石モルタルに関する研究では,珪石モルタルの膨張変化と接着強度の関係を調べた.この結果,未加熱のモルタルのSiO2結晶相は石英が主体であり,加熱時の熱膨張曲線はトリジマイトとクリストバライトを主体とする珪石れんがと異なることが分かった.珪石モルタル中のSiO2結晶相は加熱中に相転移を生じるため,冷却時の熱膨張曲線が加熱時と異なる挙動を示し,これが珪石れんがの熱膨張曲線に近づいたモルタルの接着強度が高いことを明らかにした.そして珪石モルタルのうち,耐火粘土などのバインダーを多く含むモルタルの接着機構は,加熱中に発生した液相がれんが表面の凹凸に入り込んで接着する機械的結合が主体であるが,この接着強度は低いことが分かった.一方,加熱中に石英がトリジマイトやクリストバライトへ相転移し易いタイプの珪石モルタルは,珪石れんがとの間に強固な化学的な結合を生じるため,高い接着強度を発現することを明らかにした.高アルミナ質れんがと粘土質れんがでクリストバライトのα-β型相転移がれんがの強度低下に与える影響を調べた.XRD定性分析により調査した粘土質れんが全てと高アルミナ質れんが2材にクリストバライトの含有が認められた.そしてXRDの内部標準法によるクリストバライトの定量分析を行い,粘土質れんがに含まれるクリストバライトが最大で19.5mass%であり,高アルミナ質れんがに含まれるクリストバライト量が最大で5.8mass%であることを確認した.これらクリストバライトを含有するれんがを300℃に加熱した後,100℃に冷却して,200℃付近で生じるクリストバライトのα-β型相転移をれんがに与えた.そして加熱・冷却を与える前の曲げ強度と与えた後の3点曲げ強度から求めた強度変化率とクリストバライトの含有量に相関が認められ,れんがの種類に関係なく,クリストバライト含有量の増加と共に曲げ強度の変化率は低下することを見出した.そしてクリストバライト含有量が19.5mass%の粘土質れんがについて加熱・冷却回数を増やした試験を行い,これらの間に指数関数的な関係が認められ,加熱・冷却回数が1回でも約20%の強度低下が生じることを明らかにした.これらの結果から,クリストバライトのα-β型相転移温度である200℃前後の加熱・冷却を受ける部位では,クリストバライトを含まないれんが材を使用することが必要であると考えられた.