足底のメラノサイト性病変における表皮内メラノサイトの存在様式―足底悪性黒色腫早期病変の病理組織学的診断基準の提案―

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  • [Intraepidermal distribution patterns of melanocytes in the melanocytic lesions on the sole: proposed criteria for histopathologic diagnosis of plantar malignant melanoma in situ].

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抄録

本邦人足底のメラノサイト性病変88病巣について,表内的におけるメラノサイトの存在様式を病理組織学的に検討した.悪性黒色腫(mm)の早期病変(mm in situ)では,表皮内に(異型)メラノサイトが個別性に増数し,かつ表皮基底層より上部にも認められることが病理組織学上の特徴的所見のひとつとされている.しかし,今回の検索では,足底の良性の色素細胞母斑群79病巣中59病巣(71%)の表皮内にメラノサイトの個別性増数がみられ,このうち27病巣(34%)では基底層より上部にもそれが認められた.また,これらの良性の色素細胞母斑群においても稀れならず(28%),表皮内に増数するメラノサイトに核異型が多少とも認められることが明らかにされた.これらの結果から,足底においては,mm in situと良性の色素細胞母斑のいずれであるか病理組織診断上迷う症例が稀れならず見出される可能性が示された.しかし,この両者を鑑別することはきわめて重要なことである.そこで,われわれは,メラノサイトの表皮内における個別性増数の程度と皮疹の最大径とを組み合わせることにより,足底のmm in situの病理組織学的診断基準(案)を下記の如くに作成し,提示した.1)メラノサイトの個別性増数が表皮有棘層の下1/3以上の部位にまで認められる病変(grade 3)は,皮疹の最大径によって次の如く判定する.i)最大径が9mm以上の病変はmmあるいはmm in situであることがほぼ確実である.ii)最大径が7mmを越え,9mm未満の病変はmm in situである可能性が高い.iii)最大径が5mm以上で,7mm以下の病変はmm in situである可能性が疑われるが確定しえない.2)メラノサイトの個別性増数が表皮基底層から有棘層の下1/3の範囲内に認められる病変(grade 2)は,皮疹の最大径により次の如くに判定する.i)最大径が12mm以上の病変はmmあるいはmm in situであることがほぼ確実である.ii)最大径が7mmを越え,12mm未満の病変はmm in situである可能性が疑われるが確定しえない.3)メラノサイトの個別性増数が表皮基底層部にほぼ限局されている病変(grade 1)については,その皮疹の最大径が15mmを越える場合にはmmあるいはmm in situであることがほぼ確実である.4)上記のいずれにも属さない病変は,少なくとも現時点ではmmないしmm in situであるということはできない.なお,以上の判定に際しては,病歴などによりあらかじめ先天性色素細胞母斑を除外しておく必要がある.足底の色素斑に関しては,われわれが先に提示した臨床指針によって,まず切除するか否かを決定し,切除された病変については上述の診断基準にて病理組織学的診断を決定する.このようにすれば,足底悪性黒色腫の多くが早期に検出され,かなり正確に診断されうるものと思われる.

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