特発性細菌性胸膜炎(SBEM)を合併した有腹水肝硬変の1例

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タイトル別名
  • A case of liver cirrhosis with transudative ascites complicating spontaneous bacterial empyema

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抄録

症例は66歳男性. 20歳頃よりアルコール性肝障害を指摘されていたが, アルコールの多飲を続けていた. 平成13年11月2日より, 発熱と右季肋部痛が出現したため同年11月5日に当科外来を受診, 黄疸と腹水貯留を認め, その精査加療目的にて同日当科入院となった. 入院後検査にて, 右胸水及び腹水の貯留を認めたが, 腹水は漏出液であったことから, 特発性細菌性腹膜炎 (Spontaneous Bacterial Peritonitis; SBP) の合併は否定的であった. しかし, 発熱と右季肋部痛が持続したため, その原因精査のため右胸水の試験穿刺を行ったところ, 腹水とは対照的に, 胸水は滲出液かつスメアにて好中球を多数認めた. 胸水の細菌培養結果は陰性であったが, 特発性細菌性胸膜炎 (Spontaneous Bacterial Empyema; SBEM) の合併と診断し, トロッカーチューブ挿入及び抗生剤の全身投与を行ったところ, 臨床症状と検査成績は速やかに改善をみた. 肝硬変症患者にSBEMを合併することは本邦では稀であり, かつ本症例ではSBPは併発せず, SBEMのみを合併した点が, その感染経路を考える上で興味深く思われたため, 文献的考察を含めて報告する.

収録刊行物

  • 肝臓

    肝臓 44 (2), 66-70, 2003

    一般社団法人 日本肝臓学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (13)*注記

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