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検索結果 1,012 件

  • 「死にたい」と言える社会——自殺のスティグマを超えて——

    山田 陽子 保健医療社会学論集 33 (2), 39-48, 2023-01-31

    <p>本稿では、第一に、自殺予防NPOのボランティア相談員への聞き取りから、「死にたさ」が放たれる空間とはどのようなものか、また、誰かの「死にたさ」とともにあることが他者の理解不能性にもとづく共感から生じていることについて記述している。</p><p>第二に、E. デュルケームの自殺論における人格崇拝に関する記述を踏まえ、自殺の忌避が、「人格と個人の尊重」を至上の価値とする近代社会の基本的枠組みか…

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  • 「隔離」と「療養」の間で——コロナの時代に考える近代日本のハンセン病史——

    廣川 和花 保健医療社会学論集 33 (2), 17-25, 2023-01-31

    <p>20世紀初頭までに日本の感染症政策領域において「隔離」と「療養」の語法が成立した。1907年の制定以来、ハンセン病対策法に「隔離」の語はなく、1996年の法廃止までの間の政策の内実の振れ幅は大きかったが、今日ではハンセン病は「隔離」政策と一体のものとして社会的に認識されている。こうした認識形成の淵源は、戦後のハンセン病患者運動(全患協運動)に見出せる。全患協は強い批判を込めて国のハンセン病…

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  • 救命救急センターにおける再入院高齢患者への看護実践の成り立ち

    西村 ユミ, 前田 泰樹 保健医療社会学論集 33 (2), 70-80, 2023-01-31

    <p>本研究の目的は、急性期病院の救命救急センターにおいて、再入院をした高齢患者への看護実践がいかに成り立っているのかを記述することである。データは救命救急センターでのフィールドワークにて収集し、現象学を手がかりに分析、記述した。結果では、人工呼吸器を着けた再入院患者が看護師に、「仕事に慣れました?」と問うやり取りに着目した。このやり取りは、患者の前回入院時の状態を覚えていた看護師が「救急外来に…

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  • 職業威信スコアに見る医療・福祉関連専門職の序列構造の推移およびその要因——ジェンダーの視点から——

    池田 岳大 保健医療社会学論集 33 (2), 81-91, 2023-01-31

    <p>本稿では、医療・福祉関連専門職の職業威信スコアの変遷、評定対象者と評定対象職従事者の性別を考慮した職業威信スコアの違い、さらには評定基準と職業威信スコアの関連を分析することで、医療・福祉関連専門職の象徴的評価がジェンダー化されている可能性について検討する。1975年と1995年の社会階層と社会移動全国調査、2016年職業に関する意識調査の分析の結果、①職業名が脱ジェンダー化してもその職業の…

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  • 血友病HIV感染者の抱える問題——「病い」にまつわる生きづらさと苦心惨憺——

    種田 博之 保健医療社会学論集 33 (2), 26-34, 2023-01-23

    <p>HIV感染症は効果的な治療方法が現れるまで、その致命性は高かった。そのため、HIV感染者ならびAIDS発症者は差別を被った。このことは薬害エイズに巻き込まれた血友病患者も同様であった。薬害エイズとは、1980年代前半、汚染された血液凝固因子製剤が治療に使用されたことによって起こったHIV感染問題である。血友病HIV感染者にHIV感染症は身体的/精神的/社会的な生きづらさをもたらした。こんに…

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  • ヨガにおける身体的実践の意味――マレーシア・クアラルンプールでの指導実践を事例として――

    栗原 美紀 保健医療社会学論集 33 (1), 46-55, 2022-07-31

    <p>本論文の目的は、ヨガにおける身体的実践の意味について、マレーシア社会での指導実践を事例に検討することである。ヨガと健康の関係をめぐる先行研究では、思想的側面と実践的側面がそれぞれに議論されてきたが、両者の関係は十分に論じられていない。そこで本研究では、社会学的視点から相互行為としての指導実践に着目し、ヨガの思想と実践のつながりと、その健康との関わりを考察する。本稿の分析には、2017年より…

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  • 家族を規制する ——オーストラリア・ヴィクトリア州の生殖補助医療法をめぐる議論の事例研究——

    藤田 智子 保健医療社会学論集 33 (1), 77-87, 2022-07-31

    <p>2020年7月、オーストラリア・ヴィクトリア州の生殖医療を規制する法律、2008年生殖補助医療法が改正され、治療にあたり犯歴や児童保護命令の記録の照会を義務付けていた規定が削除された。このような条件を課していたのは世界でもヴィクトリア州のみとされ、生殖補助医療の関係者等の強い批判を受けていたにもかかわらず、法改正が行われるまでの約10年間、子どもを望む者はこれによって生殖補助医療へのアクセ…

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  • 家族看護学におけるLGBTと「家族」――総説・レビュー文献の検討から――

    影山 葉子, 三部 倫子 保健医療社会学論集 33 (1), 88-99, 2022-07-31

    <p>本研究の目的は、LGBTとその家族に関する看護学研究の総説・レビューから、LGBTの人々にとってどのような人や関係が家族と捉えられているのかに着目しながら、これまでの研究の内容を概観することである。PubMed、MEDLINE、CINAHLを用いて検索を行い、対象となった10文献をテーマごとに分類し、それぞれのテーマに特徴的な家族看護に関する知見をピックアップした。10文献のテーマは、「レ…

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  • 糖尿病薬注射患者が糖尿病手帳を使う経験 ——つぶやきや語りとともに——

    細野 知子 保健医療社会学論集 33 (1), 66-76, 2022-07-31

    <p>糖尿病薬注射患者は糖尿病手帳等を使ってセルフモニタリングし、厳密な血糖コントロールを図ることが求められる。本研究はセルフモニタリングの効果を評価する視点からではなく、糖尿病薬注射患者が糖尿病手帳を使う経験を、手帳を使いながら生じるつぶやきや語りもろとも記述することを目的とした。4名の研究参加者が糖尿病手帳およびつぶやき記録をつける調査に参加し、非構造化面接を受けた。データは現象学的に分析、…

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  • 遺伝学的リスクの意味づけに関する別様の理解可能性

    木矢 幸孝 保健医療社会学論集 33 (1), 56-65, 2022-07-31

    <p>遺伝学的検査の出現は人々に自身の遺伝学的リスクと向き合うことを可能にした。先行研究では、主として遺伝学的リスクを有する個人はそのリスクに対して罪悪感や責任感等を抱いていることを示してきた。しかし、遺伝学的リスクを「大きな問題」ではないと語る人々の経験は十分に分析されてこなかった。そこで本論文では、遺伝学的リスクを「大きな問題」として捉えていない非発症保因者の語りをN. …

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  • がん患者は集団活動にいかに取り組んでいるか——A県の肺がん患者会を率いるBさんの語りから——

    齋藤 公子 保健医療社会学論集 32 (2), 69-79, 2022-01-31

    <p>本稿は、がん対策基本法施行後の昨今、がん患者はいかにして集団活動に取り組んでいるかを議論した。A県の肺がん患者会を率いるBさんの語り等から、Bさんはがん患者たちによる集団活動の場で「支援する者」として活動していることが明らかになった。またBさんは、がん患者・家族を集団活動にいざない、参加者にがんの罹患経験を社会に開いていくことを促していた。「医療をめぐる社会運動」の議論に照らせば、Bさんの…

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  • 「軽度」とされる患者の困難性——球脊髄性筋萎縮症による身体機能の衰えの感受に着目して——

    木矢 幸孝 保健医療社会学論集 32 (2), 59-68, 2022-01-31

    <p>病いの症状や障害が「軽度」とされる人たちは、他者とのかかわりの中で「病者・障害者」にも「健常者」にもなれない、どっちつかずのジレンマといった彼/彼女ら特有の困難を経験することが知られている。しかし、彼/彼女らがどのようなときに困難を感じるかについての検討は部分的にしか行われておらず、いまだ検討する余地がある。そこで本論文では、球脊髄性筋萎縮症患者の語りを通じて「軽度」とされる患者がどのよう…

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  • 障害児との生活を形づくる母親たちの生活実践としてのケア

    齋藤 雅哉 保健医療社会学論集 32 (2), 80-89, 2022-01-31

    <p>本稿では、母親たちがダウン症の子どもとの関係と周囲との関係をいかにして関連づけているかに焦点を当て、ダウン症を持つ子どもの母親3人の語りを用いて、母親たちがケアを担い続ける動機づけを検討した。</p><p>出産後からはじまる子どもとの関係と周囲との関係を取りまとめる営為は、子どもとの継続可能な生活を送るために、「妥協」「折衝」「接合」といったそれぞれやり方は異なるが、子どもとの関係と周囲と…

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  • ベーチェット病患者会に参加しているベーチェット病患者のQOLの特徴

    岡田 純也 保健医療社会学論集 32 (2), 133-141, 2022-01-31

    <p>ベーチェット病患者会に参加しているベーチェット病患者のQOLの特徴を明らかにすることを目的として、調査を行った。その結果、患者会への積極的参加群が消極的参加群に比べ、有意に主観的QOL得点が高かった。また、患者会への満足群が不満足群に比べ、有意に主観的QOL得点が高かった。患者会への参加状況とSF-36のサマリースコア得点は、積極的参加群が消極的参加群に比べ、有意に点数が高かった。患者会の…

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  • 監視と保健医療社会学と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

    美馬 達哉 保健医療社会学論集 32 (2), 1-11, 2022-01-31

    <p>本稿では、保健医療社会学の観点から、COVID-19に関わる諸問題を考察し、とくに監視の問題を中心に分析する。社会における病気の重大性は、生物医学的な要素だけで定まるものではなく、文化的・社会的・経済的な背景や格差の影響を大きく受ける。こうした「シンデミック」の観点はCOVID-19においても重要であり、ワクチンや社会距離の生物医学的な戦略は相対化して考える必要がある。ここでは、社会距離に…

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  • 精神科病棟における看護実践の現象学的研究

    石田 絵美子 保健医療社会学論集 32 (2), 47-58, 2022-01-31

    <p>本研究では、長期入院患者を抱える精神科病棟で働く看護師の体験から、彼らの看護実践の構造を明らかにすることを目的とした。精神科病棟の看護師は、従来、長期入院患者への保護的・管理的処遇を非難されてきた。本稿で「そばにいる」「認める」「家族になる」「退院する患者を病棟で待つ」というテーマで記述した看護師たちのかかわりは、看護として明確に意識されない日常のかかわりや、あえて看護を意識しないことによ…

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  • 救護法下における精神病者処遇と方面委員 ——1930年代の京都市を事例として——

    篠原 史生 保健医療社会学論集 32 (2), 122-132, 2022-01-31

    <p>日本の精神医療体制の形成過程を明らかにする上で、精神病者処遇の制度に埋め込まれていた救貧的機能の検討は重要であると考えられるが、これまでの先行研究では軽視されてきた。本稿は、1930年代の京都市を対象に、救護法による貧困精神病者の処遇がどのように実践されたのかについて、方面委員の動向に着目した。その結果、救護法の運用を担った方面委員は、「監置を要さない貧困精神病者」を貧困世帯に見出し、世帯…

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  • 看護師が責任を果たそうとするプロセス

    杉山 祥子, 朝倉 京子, 高田 望 保健医療社会学論集 32 (2), 111-121, 2022-01-31

    <p>看護専門職は、看護を必要とする対象、すなわち患者やその家族に対して責任を果たす必要がある。しかし看護師が責任をどのように認識し、どのように責任を果たそうとしているのかは明確になっていない。本研究は、看護師がどのように責任を果たそうとしているのか、そのプロセスを明らかにすることを目的とし、15名の看護師を対象として修正版グラウンデット・セオリー・アプローチを用いた質的帰納的研究を行った。本研…

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  • 精神医療の現場に風を通し、会話の風土を育む——オープンダイアローグとリフレクティングの観点から——

    矢原 隆行 保健医療社会学論集 32 (2), 31-41, 2022-01-31

    <p>「回復の語りとコミュニティ:コロナ禍のなかで」と題された本シンポジウムにおいて、回復、語り、コミュニティという三本の糸を編みつつ、その編地に熊本の精神医療現場をフィールドとして現在進行中である筆者らの活動の文様を浮かび上がらせることを試みた。その基調となるのは、リフレクティング・トークとリフレクティング・プロセスという二様のリフレクティングであり、本稿では、近年、注目の集まるオープンダイア…

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  • 転院依頼演習のワークの研究——高度救命救急センターにおける演習場面を事例として——

    阿久津 達矢 保健医療社会学論集 32 (1), 74-84, 2021-07-31

    <p>本稿の目的は、高度救命救急センターにおける医療資源管理の一環である転院依頼演習を対象として、ワークの研究の立場から演習での実践の特徴を明らかにすることである。明らかとなったのは、まず、講師が、研修医との非対称な知識配分の下で、転院依頼の仕方を教示するために用いていた、ふたつの教示の方法である。ひとつ目は、講師が「ケース報告」の実演と「転院依頼」の実演という課題によって演習全体を組み立て、課…

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  • スクリーニング検査と受検者の視覚——二つのスクリーニング検査をめぐる当事者の語りから——

    菅野 摂子 保健医療社会学論集 32 (1), 45-54, 2021-07-31

    <p>20世紀後半に概念化されたスクリーニング検査は、今や検診/健診に欠かせない存在であり、侵襲性の高い確定的な検査を避ける方法として、広く運用がなされるようになった。WHOの示した便益・害の比較衡量による「適切な運用」が期待されながらも、望ましいコントロールがなされていない検診/健診プログラムもあり、市民への勧奨や理解を促す対応が取られている。本稿では、がん検診においてエビデンスが高いと言われ…

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  • 自覚症状のない複数の疾患と長期間付き合う経験からの一考察

    坂井 志織, 細野 知子 保健医療社会学論集 32 (1), 55-63, 2021-07-31

    <p>本稿は自覚症状のない複数の疾患と長期間付き合う経験を、非構造化面接で得た語りをもとに、現象学的な思想を背景に志向性の働きに着目し、病いとの付き合い方を記述・考察した。記述から「それからずっとかかってる」「緩い感じの枠の中にいる」「だからその分病院来てる」という経験の成り立ちが明らかになった。自覚症状のない複数の疾患を長年患うということは、受診の継続によって合併症を起こさないなどの医療上安全…

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  • ゲノム情報を用いた健康予測サービス ——課題と政策的含意——

    松田 亮三 保健医療社会学論集 32 (1), 3-13, 2021-07-31

    <p>ゲノム情報の利用が容易となり、ウエアラブル端末、AIなど新技術の発達の中で、大量の情報を用い、健康な人々の将来の健康を予測する試みが行われている。本稿では、そうした試みが実装される場合、すなわち健康予測サービスとなる場合を想定し、そのサービスが成立する重要な要素を検討する。特に、ゲノム情報の利用に関わり、対策型検診、医療機関における個別サービス、消費者サービスという3つの場面における現状と…

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  • 自己トラッキングからみえる未来

    美馬 達哉 保健医療社会学論集 32 (1), 23-33, 2021-07-31

    <p>本稿では、自己トラッキングの文化に関する研究を概説した。現代の自己トラッキングは、従来の自己内省の拡張であるが、2010年代以降に進歩したデジタル技術を使用した新しい実践でもある。その一例である「数量化された自己(QS) 」コミュニティでは、健康やフィットネスだけではなく、新しいライフスタイルの発明や審美性も議論されている。これは、主体としての自己が客体としてのデータを操作する還元主義的イ…

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  • 先進医療、先端医療、先制医療

    村岡 潔 保健医療社会学論集 32 (1), 14-22, 2021-07-31

    <p>本稿は、現代医療の「病いを予測するテクノロジーと予測医療」をめぐる「先進医療・先端医療・先制医療」を比較検討した概説である。はじめに、3者の異同を解題し、II)では「先進医療」の定義の不在とカテゴリー分析から「先進医療」内にある、予測医療と予測テクノロジーの要素を確認した。III)では「先進医療」と「先端医療」が同質であり無常性(恒常性の否定)を帯びた〈メディカル・ファッション〉であること…

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  • 遺伝性のがんにおけるリスクの予測と予防 ——起点としての遺伝学的検査に着目して——

    李 怡然 保健医療社会学論集 32 (1), 34-44, 2021-07-31

    <p>今日、早期発見・早期治療にとどまらず、症状がない段階での発病リスク予測と予防的介入を中心とする医療が進められている。その背景には、遺伝子/ゲノム解析技術というテクノロジーの発展も深く関わっている。予測・予防のアプローチは、特に遺伝性のがん領域で推進されており、代表的な例として、分子標的薬や臓器の予防的切除など、治療・予防法が向上している遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)が挙げられる。患…

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  • 地域在住高齢者の社会活動とJST版活動能力指標の関連

    佐々木 八千代, 白井 みどり 保健医療社会学論集 32 (1), 64-73, 2021-07-31

    <p>地域在住高齢者の社会活動とJST版活動能力指標との関連を明らかにすることを目的に、A市シルバー人材センターの登録者約1900人に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査内容は、基本属性、JSTの3領域、ロコチェックなどである。分析は、社会活動を従属変数とし、平均値で社会活動高群と社会活動低群に分類した。ロジスティックモデルを用いて、χ<sup>2</sup>検定で有意または境界域の有意性を示…

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  • 島に育てられた——ハンセン病療養所元看護師のライフストーリー——

    門林 道子 保健医療社会学論集 32 (1), 96-106, 2021-07-31

    <p>本稿は1960年代から2000年代に至るまでの長きにわたり、ハンセン病療養所において勤務し、里帰りに付き添うなど入所者とのつながりを定年退職後の現在も維持している看護師に焦点を当て、ライフストーリー・インタビューを行い、療養所における入所者との関係や、そこで目指したケアがどのようなものであったかを明確にすることを目的としている。インタビューで明らかになったのは、ハンセン病療養所は入院と生活…

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  • 理学療法士の資格制度形成過程 ——イシュー・アプローチによる政策過程分析——

    三上 亮 保健医療社会学論集 32 (1), 85-95, 2021-07-31

    <p>本研究では、理学療法士の資格制度形成過程における、政策推進の背景や、アクター間の相互作用を記述し、そのプロセスが専門職化にどう影響したかを考察した。大正年代、リハビリテーションの理念を持った整形外科医によって初めて資格制度案が形成されたが、政策課題として浮上しないまま沈下した。その後、戦時下の戦傷病者対策や、占領期の米国式福祉政策がこの理念と結合することで、リハビリテーション専門職の必要性…

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  • 変容する医師——在宅医の聞き取り調査から——

    井口 真紀子 保健医療社会学論集 31 (2), 78-87, 2021-01-31

    <p>専門職批判の文脈の中で医師の葛藤や苦悩は扱われてこなかった。葛藤に対する医師の従来の対処行動は医学的正義に固執するなど、一般からは不適切とされ、批判を浴びるものだった。医師の苦悩を扱った先行研究は病院勤務医を対象にしているが、本稿は現在広まりつつある在宅医療に注目する。在宅医療では医師は生活世界と生物医学的世界の「界面」に立たされ、医師と患者が相互に変容する相互作用の中に置かれる。本稿では…

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  • 外来化学療法を受ける乳がん患者の就労に関する経験

    林 桂子 保健医療社会学論集 31 (2), 26-35, 2021-01-31

    <p>就労もしくは休職等しながら外来化学療法を受けている乳がん患者が、就労をどのように意味づけしているのか当事者の視点から明らかにするために、4名の研究参加者に半構造化インタビューを行った。就労とは“生きていくため”“自分を保つため”“責任を果たすため”であり、“職場は自分の居場所”になっていた。がん罹患後に自分を必要とする人や場所があることは闘病意欲を支えるが、これまでの自分の役割を果たすこと…

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  • 医療記録を「読むこと」と「見ること」の会話分析

    黒嶋 智美 保健医療社会学論集 31 (2), 67-77, 2021-01-31

    <p>本論文は、医師が診療において医療記録を「読み上げ」たり「読」んだり「見」たりすることで組織される様々な実践の組織のされ方を分析する。視線の向きや身体の向きなど医師の身体的振る舞いの諸特徴は、医療記録を「読」んだり「見」たりすることで産出される行為を構成する重要な資源である。本論文では医師と患者が医療記録を資源として参照しながら、どのように適切なタイミングで発話をデザインしているのかに着目す…

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  • 「人生の最終段階」における無益性の解釈とAdvance Care Planning

    柏﨑 郁子 保健医療社会学論集 31 (2), 36-46, 2021-01-31

    <p>「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は、患者の自己決定権が尊重されるために必要なプロセスを示すものとして概ね肯定的に捉えられてきた。しかし、2018年の改訂でAdvance Care Planning (ACP)の概念が盛り込まれたことを契機に、改めて従来とは異なる観点、すなわち、医療の不開始と中止(消極的安楽死)の指針として捉えなおす必要が生じてきた。本…

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  • 二つの保健医療社会学をめぐって——学際ジャンルをメンテナンスする多様性と継続性——

    佐藤 哲彦 保健医療社会学論集 31 (1), 32-39, 2020-07-31

    <p>本稿の目的はこれまで保健医療社会学論集が果たしてきた役割について明らかにすることである。そこで本稿は、主として保健医療社会学会名義の諸研究と保健医療社会学論集に掲載された論文を題材として、日本における保健医療社会学というジャンルの成立経緯について考察し、これまで指摘されたことのない日本の保健医療社会学のローカルな発展経過を明らかにした。そしてその発展過程を明らかにする中で、これまで日本でし…

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  • 看護師のケアとは何か——看護師のケア実践を事例として

    内山 裕美 保健医療社会学論集 31 (1), 84-93, 2020-07-31

    <p>本稿は、質的調査から看護師のケアとはどのようなプロセスかを明らかにすることを目的とする。キャリアを積んだ看護師10名に半構造化面接を行い、M-GTAを用いて分析した。</p><p>キャリアを積んだ看護師のケアを困難にするものは、患者のリアリティ分離であった。しかし、看護師自身が内省を繰り返しながら個の限界性を認識し、他者との相互補完関係を築きながら患者と向かい続け、困難の乗り越えをはかる。…

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  • 保健医療社会学論集の既刊分の分析から

    三井 さよ, 堀川 英起, 三枝 七都子, 木矢 幸孝 保健医療社会学論集 31 (1), 6-20, 2020-07-31

    <p>本稿は、編集委員会特別企画に際して、保健医療社会学論集の今後を展望するためには、まずこれまでについて踏まえることが必要だろうということから、既刊分を振り返った分析内容の報告である。まず、時代を経るにつれて、保健・医療・福祉領域における問題やトピックの立て方に大きな変化があったことが確認された。また、当初から患者や障害を持つ人たちなどへのアプローチは意識されていたが、当初はどうしても提供者中…

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  • 1920–30年代の東京市における低所得層の出産と医療施設

    由井 秀樹 保健医療社会学論集 31 (1), 40-50, 2020-07-31

    <p>都市部において、低所得層向けに設立された施設を中心に、1920年代から医療施設出産が普及しはじめていたことが近年の研究で明らかになってきた。本稿では、この議論を精緻化させるため、行政の社会調査を主な素材に、1920–30年代の東京市における①低所得層の利用できた施設の分布状況、②低所得層のなかでも生活のより厳しい人々が施設の利用をためらった要因を検討した。</p><p>結果、以下が明らかに…

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  • スクリーニング論争と監視医療論の今日的課題

    松繁 卓哉 保健医療社会学論集 31 (1), 94-104, 2020-07-31

    <p>20世紀後半以降、人々の日常生活における様々な問題(「出産」「睡眠」「気分」他)がますます医療の扱うべき対象とされてきた。同時に、病気として顕在化する前に「リスク」を発見するためのスクリーニング(検診)の仕組みが整備されてきた。社会学研究は、医療化論・監視医療論を通じて、こうした状況の理解・説明に取り組んできた。本稿は、近年、米国を中心に巻き起こされたスクリーニングをめぐる論争に着目しなが…

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  • 医学理論はいかにして教育制度に取り入れられるか——自閉症教育制度における脳機能障害説の位置づけ——

    篠宮 紗和子 保健医療社会学論集 31 (1), 51-61, 2020-07-31

    <p>本研究の目的は、自閉症の脳機能障害説という医学理論が日本の教育制度に採用されたプロセスを明らかにすることである。2000年代に自閉症が脳機能障害として制度上に位置づけられたことを契機に、自閉症が脳の障害であることが多くの人に知られ始めた。これを受けて、社会学では問題行動や自己に関する語りにおける自閉症の脳機能障害説の役割が分析されてきたが、制度面の研究は少数であり、教育制度に脳機能障害説が…

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  • 保健医療社会学論集のこれまでを振り返り、今後を展望する

    朝倉 京子 保健医療社会学論集 31 (1), 1-5, 2020-07-31

    ...<p>本稿の主たる目的は、2017–2019年度日本保健医療社会学会機関誌編集委員会が企画し実施した、日本保健医療社会学会30周年記念編集委員会特別企画シンポジウムの趣旨と概要を記録に残すことである。加えて、2020年度編集委員会の実施した規定類の改正についても簡略に記し、その経緯を後世に伝えることを目的とする。...

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  • 過疎地域における地域密着型看護師の専門性 ——山形県小国町の訪問看護師の実践と語りから——

    山田 香 保健医療社会学論集 31 (1), 73-83, 2020-07-31

    <p>近年の疾病構造の変化、少子高齢化を背景に、ルーラルナース、コミュニティナースといった地域密着型のケアを担う看護師が注目されている。本稿では、過疎地域である山形県小国町の訪問看護師の実践に着目し、介護力低下が進む地域における地域密着型看護師の専門性を明らかにすることを目的とする。小国町立病院訪問看護ステーションの訪問看護に同行し、参与観察および看護師へのインタビューを行い、実践されたケアを質…

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  • 保健医療社会学的な価値の発見と知見の創造への期待

    伊藤 美樹子 保健医療社会学論集 31 (1), 26-31, 2020-07-31

    <p>本学会は研究対象が、「保健医療」と「社会」、あるいは方法論が社会学的という広範囲な研究テーマを許容するゆるさ、豊かさがある。研究テーマや研究者のいずれにも寛容であることが、高度に分化した専門職中心の医学系の学会とは対照的な魅力である。本稿ではそうした学際性を擁する保健医療社会学論集において「保健医療社会学的な価値の発見と知見の創造」への期待とその達成に必要なアカデミックなコミュニケーション…

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  • 「摂食障害者」であることの説明実践——相互行為としてのインタビューにおける自己呈示——

    河村 裕樹 保健医療社会学論集 30 (2), 74-84, 2020-01-31

    <p>本稿の目的は、インタビューを相互行為として捉える立場から、摂食障害者がインタビューのなかで専門知と経験知をどのように使い分けながら自己を呈示しているのかを記述することである。医療において、時に医師や医療の「権力」作用が、患者の経験知を劣ったものと軽視してきたという批判がなされてきた。これに対してナラティヴや語りに着目するアプローチは、経験知を専門知と同じ身分にあるものと捉えようとする。しか…

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  • 救急医療における患者・家族の治療に対する意思決定支援への新たな視座

    中村 美鈴 保健医療社会学論集 30 (2), 1-8, 2020-01-31

    <p>救急医療における患者・家族の治療に対する意思決定に関して、これまで取り組んできた三つの臨床研究から、1. 医師は、家族が意思決定の後、それ以降の話し合いはしないが家族は決定後も気持ちが揺らぐ、2. 家族は、苦慮して代理意思決定し、その決定は重責である、3. 看護師は意思決定のケアは重要であると認識しながら十分にできず、困難・葛藤を抱くという内容が明らかになった。しかしながら、代理意思決定に…

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  • 保健医療社会学における応用の現在と未来——保健医療社会学の「看護」への応用——

    吉田 澄恵 保健医療社会学論集 30 (2), 37-43, 2020-01-31

    <p>本稿では、保健医療社会学を「医療社会学」に「保健」を冠し、人間の健康の保持増進・悪化予防等に関わる「保健医療」を社会現象として対象化する連子符社会学ととらえ、看護への応用という視点から、保健医療社会学の応用について述べた。</p><p>看護への応用については、【「看護実践」にとって必要とされる保健医療社会学の知】、【「看護職者」にとって必要とされる保健医療社会学の知】【「看護学」の教育・研…

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  • 「ヘルスケア・システム」の物語——慢性うつ患者の〈自己管理〉とは何か——

    堀川 英起 保健医療社会学論集 30 (2), 64-73, 2020-01-31

    <p>本稿は、過去の慢性うつ患者へのインタビュー調査の再分析を行うことで、医療者が患者の語りを理解するための示唆を得ることを目的とした。再分析の視点として、A・クラインマンの「ヘルスケア・システム」概念を用いた。再分析の結果、医療者は、慢性うつ患者の語りを「治療目標にそって自律的に疾患管理を行う」という水準だけで捉えるのでなく、「様々なところにケアを受けられる場を作る」という〈自己管理〉の水準で…

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  • デ・マルティーノを読む治療者たち ——移民のための精神保健におけるイタリアの思想——

    彌吉 惠子 保健医療社会学論集 30 (2), 44-54, 2020-01-31

    <p>イタリアで移民の精神保健に携わる治療者たちの間では、民族学者たるエルネスト・デ・マルティーノ(1908–1965)の著作が読まれている。彼は、歴史過程の諸関係のなかであらゆるものを読み取るという、ベネデット・クローチェ(1866–1952)の歴史主義を民族学に適用することで、1940年代には自然科学的かつ自民族中心主義的であった民族学の改革を図り、西洋人の自己革命を目指したことで知られてい…

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  • 保健医療社会学教育の動向と実践

    金子 雅彦 保健医療社会学論集 30 (2), 28-36, 2020-01-31

    <p>世界医学教育連盟(WFME)の基礎的医学教育カリキュラムの行動科学・社会科学セクションに、医療社会学が明記されている。アメリカ医学校協会が実施する試験(MCAT)に2015年から社会学が入った。イギリスの総合医療審議会(GMC)の卒前医学教育ガイドラインは2009年から社会学を組み込んだ。日本でも、医学教育モデル・コア・カリキュラム平成28年度改訂版に「医療に関連のある社会科学領域」(主に…

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  • 患者の要望と医師の説得技法——精神科外来診療場面における非対称性の達成——

    河村 裕樹 保健医療社会学論集 30 (1), 43-53, 2019-07-31

    <p>本稿では、精神科診療場面において、治療の方針と治療の実施の決定権を有する医師と、そうした権利を持たない患者双方が、非対称性をどのように達成しているのかを、会話分析の観点から考察する。身体を対象とする医療においては、患者を説得するために検査結果といった生物医学的事実を用いることができるが、精神科の場合は、それだけでは患者を説得する資源として十分ではない場合が多い。そこで医師は説得の技法を駆使…

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  • イタリアにおける在宅死——自宅での介護を可能とする条件に着目して——

    福島 智子 保健医療社会学論集 30 (1), 54-64, 2019-07-31

    <p>超高齢社会を迎える日本では、医療資源の不足から在宅死への移行が推進されている。本稿では、約半数が在宅死を迎えるイタリアを事例として、高い在宅死率が何に由来するかを、医療福祉制度を含めた社会の在り方や利用可能な資源に焦点を当てて検討した。イタリアにおける在宅死率の高さには、死に至る過程を自宅で過ごすことを可能にする条件、すなわち要介護高齢者の家族によるケア、ケア労働者によるケアの普及が関連し…

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  • 家族内における遺伝性疾患の「リスク告知」——疾患横断的な展開へ向けて——

    李 怡然 保健医療社会学論集 30 (1), 65-75, 2019-07-31

    <p>遺伝性疾患の患者・血縁者が、家族内で遺伝学的リスクに関する情報を共有すること、すなわち「リスク告知」は、疾病予防が治療戦略の中心となる「リスクの医学」の時代において、遺伝学的検査の受検の選択、疾患の早期発見や予防行動の上で重要とされ、医療者から推奨される傾向が強まっている。海外を中心とする先行研究は、個別疾患ごとに、伝えるかどうかの意思決定、告知の戦略、告知後の遺伝学的検査受検へのはたらき…

    DOI Web Site 被引用文献1件

  • 病いの語り研究の現代的課題をさぐる——英米で展開された論争を手がかりに——

    志水 洋人 保健医療社会学論集 30 (1), 21-31, 2019-07-31

    <p>本稿の目的は、語りの特権化なる事態をめぐって90年代以降英米で展開された論争を検討し、病いの語り研究の現代的課題を導出することにある。80年代に登場した病いの語り研究に対しPaul Atkinsonは、それらがしばしば語りを特権化していると批判し、語りの埋め込まれた社会的文脈を体系的に分析する必要を論じた。英国の医療社会学誌を主なアリーナとして展開されたその後の論争は「科学」か「倫理」かと…

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  • 保健医療社会学におけるエスノメソドロジー・会話分析の現在

    前田 泰樹 保健医療社会学論集 30 (1), 12-20, 2019-07-31

    <p>本論の目的は、保健医療社会学におけるエスノメソドロジー・会話分析(EMCA)の特徴を明らかにすることにある。社会学的研究においては、日常的な概念連関について考察する必要がある。その中で、EMCAは、事例がそもそもどのようにそれとして理解可能なのかに着目し、概念使用の実践そのものを明らかにしようとする考え方である。こうした試みは、実践の参加者たちの問いを引き受けながら行われてきた。本論では、…

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  • 病院での緩和ケアにおける鍼灸師と他職種の「繋がり」の構築——その「障壁」と、乗り越える「戦術」——

    髙梨 知揚 保健医療社会学論集 30 (1), 32-42, 2019-07-31

    <p>数が少ないながらに鍼灸師ががん緩和ケアに関与しているという報告が散見されるようになった。しかし通常医療とは医学モデルを異にする鍼灸師という職種が、医師や看護師らが中心となって構築する緩和ケアの場においてどのように他職種と関係を構築しながらケアを実践しているかは明らかになっていない。そこで本研究では、6名の鍼灸師と5名の他職種を対象として、チームでの緩和ケアの実践経験を有する鍼灸師と他職種の…

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  • 保健医療の現場からの問い ——ヘルス・ガバナンスからのヒント——

    細田 満和子 保健医療社会学論集 29 (2), 1-4, 2019-01-31

    <p>保健医療をめぐる問題は、ミクロ・レベル、メゾ・レベル、マクロ・レベルを横断するように存在しており、様々な水準を射程に入れることで、問題発見や問題解決に向かうことができる。そしてこれを可能にするのは、通説を疑い、徹底的に現場に寄り添うことから出発する。また理論社会学(医療を対象とする社会学)と応用社会学(医療に内在する社会学)を越えて必要な方法を適宜採用すること、組織的支援、教育、資源配分と…

    DOI Web Site 医中誌

  • がん経験の中で再構成される自己アイデンティティ——ライフプランニングにおける就労に注目して——

    河田 純一 保健医療社会学論集 29 (2), 64-73, 2019-01-31

    <p>現在、がんの慢性疾患化を背景に、就労が「がん患者」として生きていく上での課題となっている。就労は、単に経済的な課題ではなく、アイデンティティの再構成にとって重要な意味を持つ。本稿の目的は、がん患者が就労を軸としたライフプランニングの再編成を通じて、「がんになって以降の」新たな自己アイデンティティを再構成する過程を明らかにすることである。そこで、がん罹患時に就労していたがん患者にインタビュー…

    DOI Web Site 医中誌

  • 医療者教育における「患者視点」に付随する諸課題と熟議アプローチの可能性

    孫 大輔, 三澤 仁平, 牛山 美穂, 畠山 洋輔, 松繁 卓哉 保健医療社会学論集 29 (2), 74-84, 2019-01-31

    <p>医療者教育において、患者の気持ちや経験を理解することは、ケアにおいて中心的な「共感」につながることであり、医療者のプロフェッショナリズムにおいて根幹的なこととみなされている。しかしながら、患者視点は個人の経験に基づいて語られるため多様性に富んでおり、同じ疾患であっても患者によって経験される視点は個人ごとに大きく異なり、代表的な「患者視点」というものは存在しないに等しい。医療者教育の上では、…

    DOI Web Site 医中誌

  • 学生が取り組む地域活動——オレンジカフェの活動における学生・住民のシナジー効果——

    上原 正希 保健医療社会学論集 29 (2), 19-22, 2019-01-31

    ...<p>本稿は、2018年度日本保健医療社会学会大会メインシンポジウムおよび日本医療・病院管理学会第365回例会、テーマ『地域から考える保健医療の未来』について、4名のシンポジストがいた1名の実践している取り組みを報告した内容を整理したものである。</p><p>その実践内容は、星槎道都大学社会福祉学部の教員と学生が地域でオレンジカフェ(認知症カフェ)を運営している。...

    DOI Web Site 医中誌

  • 乳がん再発をめぐる同病者の「共同性」

    菅森 朝子 保健医療社会学論集 29 (2), 54-63, 2019-01-31

    <p>医療をはじめ様々な領域でピアの存在の重要性が指摘されている。先行研究においてはピアの「同一性」が前提とされる傾向にあるが、本稿では乳がん再発をめぐる同病者の「共同性」を主題に、再発の有無という「差異」のもとで「共同性」はいかにして可能かを問う。再発を経験した2名にインタビューを行い、再発していない人たちとの間にどのようにして「差異ある共同性」を作っているのか、得られたデータをもとに検討する…

    DOI Web Site 医中誌

  • 認知症ケアにおける地域の意義——認知症の人の一貫性の維持と緩和に注目して——

    井口 高志 保健医療社会学論集 29 (2), 27-34, 2019-01-31

    <p>近年、認知症フレンドリーコミュニティという表現に見られるように、認知症をめぐる課題を考えていく上で、地域やコミュニティの創出に期待がかけられるようになってきている。本稿では、そうした地域やコミュニティがいかなる意義を持ち、いかなる課題を抱えるのかを、筆者がこれまで取り上げてきた認知症の人を介護する家族や、本人と家族を支援するケア実践の事例を振り返ることを通じて考える。認知症ケアにおいて課題…

    DOI HANDLE Web Site ほか3件

  • 発達障害の臨床における不確実性の経験

    照山 絢子 保健医療社会学論集 29 (2), 45-53, 2019-01-31

    <p>2000年代に注目を浴びるようになった発達障害(自閉症スペクトラム障害、学習障害、注意欠陥多動性障害)には規定の診断基準とガイドラインが存在する。しかし、実際の臨床場面ではここから零れ落ちる、さまざまな不確実性が存在する。著者は診療に携わる医師9名へインタビュー調査を実施し、彼らが臨床場面で経験する不確実性について聞き取りをおこなった。本稿ではそれらの不確実性を(1)空間的要因に起因する不…

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  • 地域包括ケアと介護事故

    長沼 建一郎 保健医療社会学論集 29 (1), 3-8, 2018-07-31

    <p>介護サービスの提供プロセスにおける事故(いわゆる介護事故)については、その多くの発生場所が介護施設内であることから、介護事業者側はしばしば責任を問われてきた。しかし今後、地域で幅広くケアが提供されるようになれば、その状況も変わってくる可能性がある。これを受けて、事故に対する法と保険による対応の役割分担が大切になってくる。あわせて法と介護の領域における規範としての性格の違いについて考え直す必…

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  • 過食・嘔吐という「危期」を乗り越える——当事者が語る「罪悪感」を手がかりとして——

    宮下 阿子 保健医療社会学論集 29 (1), 61-71, 2018-07-31

    <p>本稿では、摂食障害を生きる当事者にとって、罪悪感に苛まれながらも過食・嘔吐を繰り返してしまうという問題経験が、どのような意味をもって生きられているのか、またそこに賭けられているものは何であるのかを考察する。医療の文脈では、過食・嘔吐にともなう罪悪感はもっぱら回復を妨げるものとして捉えられ、その経験的な意味は十分に検討されてこなかった。しかし本稿の事例では、本人が医学的な解釈を受け止める一方…

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  • 知的障害者就労支援施設間での「支援」の多様性——異なる障害者運動をルーツに持つ三団体の比較から——

    伊藤 綾香 保健医療社会学論集 29 (1), 50-60, 2018-07-31

    <p>日本において就業年齢の知的障害者の多くは入所あるいは通所施設に通っている。この施設の中には、障害者運動をルーツとする団体により運営されているものがある。これまで、こうした施設ごとの「支援」目的は一枚岩のものと捉えられてきたが、日本で1960年代後半以降、障害者の労働をめぐりさまざまな運動が行われてきたことを踏まえれば、一口に障害者就労支援施設といっても、「支援」の方針や実践に違いがあると考…

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  • 地域包括ケアシステムにおける薬剤師の役割——薬剤師の再定義——

    赤木 佳寿子 保健医療社会学論集 29 (1), 33-39, 2018-07-31

    <p>かかりつけ薬局・薬剤師や健康サポート薬局など近年は薬剤師の役割についての議論が活発である。特に地域包括ケアシステムの中での薬剤師は従来からの仕事である医薬品の販売や調剤とは異なる在宅業務などの仕事も期待されている。本稿では従来の薬剤師を「正しい薬の供給者」と定義し、それに対して地域包括ケアの中での薬剤師を「患者のQOLの向上を目指す薬物療法に責任を持つ医療者」と再定義した。再定義される薬剤…

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  • 地域包括ケアにおける医師——医師に求められる「対話」と「連携」とは——

    孫 大輔 保健医療社会学論集 29 (1), 17-24, 2018-07-31

    <p>地域包括ケアシステムの中で、医師に求められるコンピテンシーとして重要なものは、「対話」と「連携」であろう。今後さらに増加する認知症や慢性疾患をケアする上では、ヘルスケアの「生活モデル」へのシフトが不可欠であり、医学モデルとは異なるコンピテンシーが求められる。それは、患者のナラティブ(物語)を協働的意思決定のプロセスに統合していくような技法(患者中心の医療の方法)や、患者を家族システムの一部…

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  • はじめに

    三井 さよ 保健医療社会学論集 29 (1), 1-2, 2018-07-31

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  • モンゴル医師が語るモンゴル医療——西洋医療中心的な医療への変化に着目して——

    包 暁蘭 保健医療社会学論集 29 (1), 40-49, 2018-07-31

    <p>本稿では、中国・内モンゴルにおける伝統医療の一つであるモンゴル医療を取り上げ、モンゴル医師たちのインタビューを通して、彼らのモンゴル医療と自らの地位に対する認識の特徴を考察した。医師たちの語りからは、伝統医療としてのモンゴル医療の役割を確立させ、西洋医療には代替され得ないあり方を理想としていることが見受けられた。また、彼らの中では、西洋医療とモンゴル医療はそれぞれ独立した医療体系として位置…

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  • 地域包括ケアの中の看護職とは何か

    齋藤 訓子 保健医療社会学論集 29 (1), 25-32, 2018-07-31

    <p>地域包括ケアの対象は全世代であり、日本の社会保障制度に共通する理念である。この考え方を基盤において地域包括ケアにおける看護職の定義を検討した。看護提供活動の基本は、看護の対象となる人の現在の健康状態の把握、精神、社会的な側面での状態把握、「今後の変化」を予測することであり、その上で治療効果の拡大、早期回復、あるいは悪化防止、苦痛・不安の緩和、そして穏やかな人生の最期の看取りが実現する。看護…

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  • ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」

    李 怡然, 武藤 香織 保健医療社会学論集 29 (1), 72-82, 2018-07-31

    <p>本稿は、遺伝情報を「知らないでいる権利」 (the right not to know)を尊重すべきという規範に関して、文献調査をもとに、この規範が成立した経緯並びにゲノム医学の技術革新を経た変遷について整理し、現代的な意義を再考することを目的とする。1990年代に遺伝性疾患の患者・家族の主張から確立した概念は、その論点を2000年代半ば以降、次世代シーケンサー …

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  • 病い研究とポリフォニー——ミハイル・バフチンから刺激を受けて——

    池田 光穂 保健医療社会学論集 28 (2), 11-19, 2018-01-31

    <p>病いについての語りは、人間の最古からある語りの様相である。書き留められようが人々の記憶に残ろうが、語りとはその発語の瞬間から、死後の生(<i>Fortleben</i>)を生きることを運命づけられている。このような語りの不死=永続性を担保するもののひとつに、バフチンが指摘したドストエフスキーの小説にみられるポリフォニー概念がある。語りは死後の生をもつことで、それに耳を傾ける人の心を呪縛し、…

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  • DSM的理性とその不満

    美馬 達哉 保健医療社会学論集 28 (2), 54-64, 2018-01-31

    <p>本稿では、1980年出版の米国精神医学会による診断マニュアルの第3版(DSM-III)以降に明確化した米国精神医学パラダイムをDSM的理性として分析し、その歴史を2013年の第5版(DSM-5)登場まで概観する。とくに、精神疾患の診断名をめぐるcontestationをたどることで、作成・改訂過程のなかでcontestationが生じやすいのはどのような場合かを明らかにする。その結果、診断…

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  • 先制医療への意志は「正常病」の症状かもしれない——HPVワクチン接種被害事件を糸口にして——

    井上 芳保 保健医療社会学論集 28 (2), 44-53, 2018-01-31

    <p>HPVワクチン接種被害事件では、それまで健康そのものだった女性に必要性が疑わしく、副反応の危険性の高いワクチンが打たれた結果、重篤な被害に見舞われた女性たちの苦しみが続いている。国が公認して接種を進めていったことの責任が問われなければならない。このワクチンは、国会の議を経て2013年4月に定期接種化されたが、2カ月後に中断された。しかし日本産婦人科学会をはじめ医学系の多くの学会が定期接種再…

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  • 医療専門職——利他的か、公衆に対する利己的脅威か?——

    サックス マイク 保健医療社会学論集 28 (2), 25-35, 2018-01-31

    <p>現代の新自由主義社会においては、伝統的に、医療専門職は高度に道徳的品性を有する存在、自身の利益よりも公益を優先させる存在とみなされてきた。そのような見方は、保健医療領域の典型的な専門職だけではなく、他の分野の専門職においても当てはまる。しかし、1960年代から70年代にかけての反体制文化の影響を受けて、医療専門職が利己的であり、利他主義的イデオロギーの見せかけの下で、実は国民の利益よりも医…

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  • 医療・医学を語る陥穽をめぐって

    佐藤 純一 保健医療社会学論集 28 (2), 20-24, 2018-01-31

    ...<p>本稿は第43回日本保健医療社会学会大会の「ランチョンセミナー」での口演(語り)の内容を原稿化したものである。本稿の目的は、日本の医療社会学関係の研究の問題点を指摘することを通しての医療社会学批判である。本稿で指摘する「日本の医療社会学の問題点」は、近代医療・近代医学の多様性・多相性を認識しないでの研究が多いことである。...

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  • 健康と病理

    村岡 潔 保健医療社会学論集 28 (2), 1-10, 2018-01-31

    <p>本稿は、近代医学における「健康と病理」/「正常と異常」をめぐる下記の諸観点・諸要素についての概説である。I)では19世紀の細菌学と特定病因論並びに自然治癒力について;II)では健康の定義の3つのあり方:健康=病気の不在、日々の生活で不自由のないことや身体内外全体でバランスがとれていること;III)心身相関の立場では、患者には人生に楽観的と悲観的の2タイプがあるが、前者の方に回復傾向が強いこ…

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  • 当事者研究におけるファシリテーター・当事者の実践——共成員性とカテゴリー対を中心に——

    中村 和生, 浦野 茂, 水川 喜文 保健医療社会学論集 28 (2), 65-75, 2018-01-31

    <p>本稿は、当事者研究、すなわち日常生活を送っていくにあたり何らかの苦労や困難を持つ人々による自分たち自身を対象とした共同研究(我々のデータでは、精神障害を持つ人々のグループセッション)という実践を主題とする。そして、このグループセッションという相互行為において、ある者が当事者をする中でファシリテーターを担っていることに注目し、このことの意義ならびに、そのような担い手によるいくつかのやり方を解…

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  • パラダイムシフトという幻想——EBMの時代を生きて——

    齊尾 武郎 保健医療社会学論集 28 (2), 36-43, 2018-01-31

    <p>1990年代後半から2000年代にかけてEBM(根拠に基づく医療)がわが国の医学界を席巻した。これは「多数の患者に対する客観的な臨床的医学データ(エビデンス)を集積し、個別の患者の治療のために用いよう」という医療改革運動・思潮・医学的方法論であり、従来の人体機械論的医学に一石を投じるものとして、「医学的なパラダイムシフト」であると盛んに喧伝された。しかし、EBMは現代科学論的にはパラダイム…

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  • 新生児マス・スクリーニングと治療可能性——特殊ミルク開発の歴史に照らして——

    笹谷 絵里 保健医療社会学論集 28 (2), 76-86, 2018-01-31

    <p>日本の人工乳や育児用調製粉乳については多くの分野で研究が行われてきたが、先天性代謝異常症の治療に用いられる特殊ミルクについては、医学の分野を除いて、主題的に取り上げられたことはなかった。日本では1977年に新生児マス・スクリーニングが導入され、さまざまな視点から論及されてきたが、導入の目的とされた早期発見・早期治療による障害発生の予防についての実情を研究するものはほとんどなかった。本稿は、…

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  • 編集後記

    朝倉 京子 保健医療社会学論集 28 (2), 99-99, 2018-01-31

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  • 「お母さん」支援としての中絶ケアの問題性——人工妊娠中絶の医療・看護の患者経験から——

    熱田 敬子 保健医療社会学論集 28 (1), 34-43, 2017-07-31

    <p>産婦人科医療の場は、胎児を愛情の対象である「赤ちゃん」とし、妊婦を「お母さん」とすることを自明としている。中絶はその自明の前提への挑戦として非難されがちだ。しかしこうした妊娠への見方自体、妊娠・出産が医療化され、医療的知識が人々の妊娠に対する感じ方を変える中で生まれており、当たり前の感覚ではない。中絶した女性は胎児への強い愛着で心理的ダメージを負うと言われるが、すべての女性が当てはまるわけ…

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  • 編集後記

    石川 ひろの 保健医療社会学論集 28 (1), 119-119, 2017-07-31

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  • 体外受精適応となった女性の不妊経験への意味づけ過程——複線径路等至性モデリングを用いて——

    安田 裕子 保健医療社会学論集 28 (1), 12-22, 2017-07-31

    <p>不妊治療を受ける女性たちは、治療に対する前向きな姿勢を維持し、妊娠できると望みを抱き、心理的な落ち込みや自己コントロール感の喪失を防ごうとする。しかし他方で、治療に専心するなかで、人生設計や将来展望が明確でなくなることも少なくはない。本稿では、体外受精の適応となったひとりの女性を対象にインタビューを行い、その不妊経験を経時的に捉えた。分析には、人間の発達や人生の径路を時間の流れと文化的・社…

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  • 「リプロダクションの経験と保健医療」総説——卵子提供を事例に——

    白井 千晶 保健医療社会学論集 28 (1), 2-11, 2017-07-31

    <p>現在、出生前検査、人工妊娠中絶、出産などリプロダクション現象の多くは医療の領域で起こっているが、そのありようは多様であるし、常に医療分野で起こっているとは限らない。そこでまずリプロダクションの医療化の歴史を、先行研究をレビューしながら概括した。次に、人びとのリプロダクション経験から研究することの可能性を提示するために、卵子提供を事例に、現代社会で医療現象となっていること、にも関わらず、当事…

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  • 「書く」ことでのケア——乳がん・婦人科がん体験者への臨床応用の試み——

    門林 道子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ, 佐藤 幹代 保健医療社会学論集 28 (1), 44-55, 2017-07-31

    <p>本稿は「書く」ことがケアとして有効と成り得るのか、臨床応用としてがん体験者に行った「『書く』ことでのケア」研究<sup>(1)</sup>におけるセッションプログラムのプロセスと結果を記述統計やインタビュー調査により考察し、その効果について検討することを目的としている。「書く」ことは、自己を振り返ったり、自己の内面をみつめ、自己肯定感を伴う自己再構築の機会となっていた。さらに、書いたことを…

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  • 『保健医療社会学論集』の投稿・査読動向(2017年3月末集計)

    石川 ひろの 保健医療社会学論集 28 (1), 114-117, 2017-07-31

    ...<p>本稿では、2015–2016年度の日本保健医療社会学会編集委員会の活動記録の一つとして、『保健医療社会学論集』の投稿および査読の動向に関するデータをもとに、この10年間における変化と現状の分析を試みる。近年、投稿数は大きく変化しておらず、査読を通過して掲載される率(掲載率)は平均で4割弱となっている。一方、全体としてA~C判定が減少するとともに、D判定がやや増加している傾向が見られた。...

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