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検索結果 9,424 件

  • グリコサミノグリカン鎖の硫酸化修飾の制御機構とその異常による疾患発症機構

    三上 雅久, 北川 裕之 生化学 96 (2), 133-142, 2024-04-25

    ムコ多糖とも称されるグリコサミノグリカン多糖は,細胞外マトリックスの普遍的構成成分であり,数多くの硫酸基とカルボキシ基を持つため,高い水分保持活性を備えた組織の構造支持体として捉えられてきた.一方,硫酸基の空間配置によって生み出されるグリコサミノグリカン鎖の構造多様性は,さまざまな生理活性タンパク質とのコンタクトを可能にする分子基盤でもある.実際,近年の研究から,グリコサミノグリカン鎖が,増殖,…

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  • O-GlcNAc修飾されたタンパク質の特性

    亀村 和生, 濱口 竜摩 生化学 96 (2), 170-174, 2024-04-25

    O-GlcNAc修飾は,核,細胞質およびミトコンドリアにおいてタンパク質のセリン/トレオニン残基にN-アセチルグルコサミンが付加される動的な修飾である.これまでに,ヒトにおいては5000を超える基質タンパク質が同定されている.基質タンパク質には,O-GlcNAc修飾によっておそらくは親水性が高められ,液–液相分離現象を起こしにくい流動性が付与される.そして,O-GlcNAc修飾によって付与される…

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  • 糖鎖の深層理解のための分析技術

    木下 充弘, 山田 佳太 生化学 96 (2), 199-206, 2024-04-25

    ヒトのゲノム解読後,タンパク質や脂質に無限の多様性を与える糖鎖の情報を読み取ろうと,さまざまな糖鎖解析技術が開発されてきた.レクチンアレイやオービトラップ型質量分析装置の登場は,糖鎖研究のメインストリームとして活用され,プロテオミクスとの境界領域に踏み込んだ研究をも加速化させた.一方,既存の技術は時間平均的な糖鎖構造をながめているにすぎない場合が多く,必ずしも糖鎖特有のダイナミクスを把握できてい…

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  • がん病態におけるANGPTL2シグナルの機能

    門松 毅, 尾池 雄一 生化学 96 (2), 241-254, 2024-04-25

    生体では,組織の損傷修復による恒常性維持機構が存在するが,その過剰応答や応答不全は,慢性炎症や不可逆的組織リモデリングを引き起こし,さまざまな疾患の発症・進展につながる.ANGPTL2は,その生理機能として,損傷修復による組織の恒常性維持に重要な役割を果たしているが,一方で,そのシグナル過剰状態は,慢性炎症や不可逆的組織リモデリングを引き起こし,生活習慣病やがんの発症・進展に寄与する.がん病態で…

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  • 硫酸化修飾が制御するコンホメーション病におけるグリコサミノグリカンの病態機能

    西辻 和親, 内村 健治 生化学 96 (2), 143-151, 2024-04-25

    コンホメーション病は,ミスフォールディングしたタンパク質が形成する凝集体の細胞内外における沈着を要因とする疾患の総称であり,神経変性疾患やアミロイドーシスが代表的なものである.タンパク質は試験管内では単独で凝集するが,生体内におけるタンパク質凝集体の沈着物はさまざまなタンパク質性あるいは非タンパク質性成分を含む.硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)はタンパク質凝集体の種類によらず,コンホメーショ…

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  • 糖鎖ハイブリッドナノマテリアルの設計と機能

    秋吉 一成 生化学 96 (2), 192-198, 2024-04-25

    筆者は糖鎖ハイブリッドの自己組織化制御(集合,集積制御)による糖鎖ナノマテリアルの設計,および,糖鎖加水分解酵素を利用したアミロース糖鎖ハイブリッドの設計とバイオ応用を展開してきた.コレステロール基をプルランに導入した疎水化多糖(CHP)は安定なナノゲル(粒径30 nm)を形成し,分子シャペロン機能を持つため,内部に取り込んだタンパク質を安定化する.この特性を利用して,がん免疫ワクチンとしてがん…

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  • 臓器移植における糖鎖抗原に対するB細胞応答

    大段 秀樹 生化学 96 (2), 215-221, 2024-04-25

    臓器移植は,臓器不全に対する唯一の根治療法であるが,ドナー不足が常態化している.その緩和手段としてABO血液型不適合移植が行われている.また,ドナー不足の根本的解決の手段として,動物の臓器を用いた異種移植の実用化に向けて,研究が進められてきた.これらの手段に共通した障壁となるのが,糖鎖抗原に対する抗体関連拒絶反応である.我々は,血液型糖鎖が難治性拒絶反応の標的となるメカニズムや,異種糖鎖抗原に対…

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  • メタボローム測定技術の開発と生命科学における意義

    曽我 朋義 生化学 96 (2), 222-231, 2024-04-25

    代謝産物は,化学反応に利用されたのちに不要であれば捨てられる運命にあると考えられていた.しかし,近年の研究によって,栄養,微少環境,腸内細菌叢などの外部環境および代謝や遺伝子変異などの内在的な要因で変動した代謝産物がエピゲノム反応,翻訳後修飾などを介して転写,翻訳を調節することや,がん細胞や免疫細胞を制御してがん化やがんの進展に関与していることが明らかになってきた.本稿では,筆者らが取り組んでい…

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  • 高次脳機能の制御基盤としての海馬の糖鎖

    神野 尚三 生化学 96 (2), 152-161, 2024-04-25

    中枢神経系にさまざまな糖鎖が存在することは古くから知られていた.大脳皮質や海馬のGABAニューロンの周囲にペリニューロナルネットと呼ばれる糖タンパク質からなる特殊な細胞外マトリックス構造が形成されていることについては,多くの優れた解剖学的研究がある.しかしながら,その機能の研究は遅々として進まず,ペリニューロナルネットが神経可塑性の制限や精神神経疾患の病態に関わっていることがわかってきたのは,比…

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  • 糖鎖模倣ペプチドの取得と腫瘍標的能を利用した治療法への応用

    野中 元裕 生化学 96 (2), 184-191, 2024-04-25

    糖鎖構造の化学合成は一般的に困難であり,専門的な知識と技術が必要とされる.一方で,レクチンなどの糖認識分子の阻害において,ペプチドが代替物として利用可能であることは以前より示されている.これまで,ファージディスプレイ法などを用いて糖鎖認識分子に対してスクリーニングを行うことで,糖鎖を模倣するペプチドが取得されてきた.著者が過去に所属していたMichiko N. …

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  • 糖鎖バイオマーカーの新展開とレクチン治療

    左近 太佑, 近藤 純平, 三善 英知 生化学 96 (2), 207-214, 2024-04-25

    本稿では,我々が長年研究を続けてきた糖鎖バイオマーカーであるフコシル化ハプトグロビンに関する研究を中心に概説し,次世代型糖鎖抗体(糖鎖とペプチドを同時に認識する抗体)の出現によってみえてきた新しい展開を紹介する.nativeな糖タンパク質を認識できる抗体の作製は予想どおり至難で,我々が作製した次世代型糖鎖抗体10-7G …

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  • マンノース代謝研究の新展開

    原田 陽一郎 生化学 96 (2), 162-169, 2024-04-25

    哺乳動物において,マンノースはグルコースから新規に合成される単糖の一つであり,タンパク質や脂質を修飾する糖鎖を構成する他,血中には遊離の単糖としても存在する.近年,マンノースの生合成と異化において中心的な役割を果たすマンノースリン酸イソメラーゼががんの治療標的の候補として同定されたことが発端となり,マンノース代謝研究が糖鎖生物学の枠を超えた広がりを見せている.本稿では,マンノース代謝の変化に対す…

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  • 糖鎖と小胞体ストレス応答・ゴルジ体ストレス応答

    佐々木 桂奈江, 吉田 秀郎 生化学 96 (2), 175-183, 2024-04-25

    糖鎖修飾はごく一部を除いて,ほとんどが小胞体とゴルジ体で行われる.異常な糖鎖修飾はがんを含めたさまざまな疾患と関係しており,これを防ぐためにも小胞体やゴルジ体の正常な機能が必要である.小胞体およびゴルジ体には細胞の需要に応じて機能を増強するストレス応答機構が備わっており,機能不足状態(ストレス状態)が感知されるとそのストレスシグナルが核へと伝達され,小胞体ではタンパク質の折りたたみを担うシャペロ…

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  • ミトコンドリア由来小胞,古くて新しい膜輸送

    杉浦 歩 生化学 96 (2), 232-240, 2024-04-25

    ミトコンドリアは多彩な機能を持つダイナミックな細胞小器官(オルガネラ)である.分裂や融合,伸長などの形態変化に加え,他のオルガネラとの接着,細胞内局在変化,細胞間移動などその動態も多様である.ミトコンドリアの機能維持において正常な動態制御は必須であるが,それぞれの動態は独立しているわけではなく,連関しながら恒常性が保たれている.ミトコンドリア由来小胞(mitochondrial-derived …

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  • 電位依存性ホスホイノシチドホスファターゼVSP

    岡村 康司 生化学 96 (2), 255-268, 2024-04-25

    電位依存性ホスファターゼ(voltage-sensing phosphatase:VSP)は,膜電位変化を感知し,細胞質領域であるホスホイノシチドホスファターゼを活性化する.単一タンパク質分子で電気化学連関を起こすユニークな分子である.その動作原理や生物機能の解明には,その分子の特徴から,生化学と生理学の両面でアプローチすることはもちろん,両者を融合させた新しい解析手段が求められてきた.また分子…

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  • 体温調節の中枢機構

    中村 和弘 生化学 96 (1), 12-27, 2024-02-25

    体温調節は動物の生命活動の基盤をなす最も重要な生体調節機能の一つである.恒温動物である哺乳類には褐色脂肪熱産生,ふるえ熱産生,皮膚血管調節などの自律性体温調節反応と暑熱・寒冷逃避行動などの行動性体温調節反応が備わる.これらの体温調節反応を制御するのは脳の神経回路であり,視索前野の体温調節中枢が深部体温や環境温度の情報を統合して,適切な調節司令を視床下部–延髄の遠心路を介して効果器へ出力する.この…

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  • 翻訳品質管理RQCによる衝突リボソーム解消の分子機構と生理機能

    稲田 利文 生化学 96 (1), 36-44, 2024-02-25

    翻訳伸長の正確な制御は遺伝子発現に重要で,翻訳停止が起きるとタンパク質の機能に欠陥が生じる.翻訳停止したタンパク質は品質管理機構によって認識され排除される.RQCと呼ばれる機構では,翻訳途中のポリペプチド鎖がユビキチン化され,プロテアソームで迅速に分解される.また,機能欠損したリボソームはNRDという機構により分解される.これらの機構ではE3ユビキチンリガーゼが特異的な翻訳停止状態のリボソームを…

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  • 染色体工学技術

    山﨑 匡太郎, 大関 淳一郎, 香月 康宏 生化学 96 (1), 45-59, 2024-02-25

    生命の設計図であるゲノムは,染色体単位で複製し,分配・維持される.この染色体を維持する機構は,少なくとも脊椎動物細胞間で互換性があり,個々の染色体を微小核細胞融合法と呼ばれる精製・導入技術を用いて別種の細胞に付与できる.また,染色体維持に関わるテロメア・セントロメアの配列と,メガベーススケールの超長鎖ゲノム配列を,「移す・切る・つなぐ」染色体工学技術とを組み合わせることで,ヒトやマウス由来の人工…

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  • 腸球菌V型ATPアーゼ反応過程の構造解析

    Burton-Smith Raymond N., 村田 和義 生化学 96 (1), 28-35, 2024-02-25

    腸球菌(エンテロコッカス)V型ATPアーゼは,腸球菌の原形質膜にあるATP駆動型のナトリウムポンプである.その構造の複雑さから,複合体全体の構造は不明であったが,我々は位相差クライオ電子顕微鏡法を用いることにより世界で初めてその全体構造を明らかにした.本酵素では,メインの三つの構造変化に加えてその途中に反応中間体が観測され,合計六つの構造変化を繰り返す.しかし,その実態は不明であった.また,AT…

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  • 血管内皮細胞老化と老化関連疾患の関わり

    池田 宏二 生化学 96 (1), 5-11, 2024-02-25

    血管は全身をくまなく巡る人体で最長の器官である.「人は血管とともに老いる」といわれるように血管の老化と人の老化は密接に関わると考えられてきたが,その因果関係については不明な点が多かった.加齢に伴い,さまざまな臓器で血管密度が減少することが以前から知られていたが,最近の研究で血管密度の低下を予防したマウスでは加齢に伴う臓器障害が軽減し,寿命が延伸することが明らかとなった.しかしながら血管の老化が個…

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  • ゴルジ体の形と機能

    佐藤 あやの 生化学 95 (6), 730-735, 2023-12-25

    ゴルジ体は,ゴルジ層板と呼ばれる平坦な袋状の膜構造体,そしてそれらが複数積み重なったゴルジスタックと呼ばれる構造体,さらにそれらが横方向に連結したゴルジリボンと呼ばれる構造体の総称である.この特有な構造は,ゴルジ体の主要な役割である小胞体から届いたタンパク質や脂質の化学修飾,およびそれらの分泌と仕分けを効率的に遂行する上で重要である.長い棒状のタンパク質でありコイルドコイルを有するゴルジンタンパ…

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  • 細胞内結晶化能を持つノイラミニダーゼ1と欠損症の治療法開発

    月本 準, 伊藤 孝司 生化学 95 (6), 784-791, 2023-12-25

    タンパク質の結晶化は,一般に高純度に精製したものを試験管内で行うのが一般的である.しかしごく一部のタンパク質は特定の条件を満たすと,細胞内という他のタンパク質が大量に存在する環境で結晶化することが知られている.その中でも,リソソーム性グリコシダーゼの一種であるヒトノイラミニダーゼ1(NEU1)は,ヒトのほぼ全細胞に存在するハウスキーピングタンパク質でありながら,過剰発現させた場合,ヒトの細胞内,…

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  • 細胞膜に障害を及ぼすレンサ球菌由来溶血毒素の構造的および機能的な多様性

    田端 厚之 生化学 95 (6), 757-764, 2023-12-25

    ヒト日和見病原性の口腔レンサ球菌には,細胞膜に膜孔を形成する毒素を産生する株が存在する.その毒素の代表分子であるコレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)には構造的および機能的な多様性が確認され,細胞膜コレステロールを受容体とする典型CDCに加えて,ヒトCD59を受容体とする非典型CDCの存在も確認されている.これらCDCの受容体である細胞膜コレステロールやヒトCD59は,細胞膜に形成される脂質…

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  • 小胞体–核の機能連携をつかさどる膜貫通型転写因子OASIS

    齋藤 敦, 今泉 和則 生化学 95 (6), 775-783, 2023-12-25

    物理的な負荷やDNA損傷は核膜構成分子の品質劣化や変性を誘導し,核膜構造の崩壊や核輸送破綻を招く.このような核機能の低下を誘発するストレスを“核膜ストレス”と呼ぶ.小胞体に局在する膜貫通型転写因子OASISはDNA損傷などをはじめとする一連の核膜ストレスが発生すると速やかに核膜破綻部に集積し,その修復に寄与する.一方で転写因子として活性化したOASISは細胞周期抑制因子p21の転写を促進する.こ…

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  • 薬剤依存的にプロテアソームにより分解されるタンパク質のための新技術

    澤崎 達也, 山中 聡士 生化学 95 (6), 736-746, 2023-12-25

    プロテアソームはユビキチン化されたタンパク質を分解する細胞内の機能構造体である.サリドマイドやその誘導体は,多発性骨髄腫などの血液がんにおけるキラードラッグとして利用されている.2014年,サリドマイドはイカロスやアイオロスといった血球分化を制御する転写因子を特異的に分解誘導する“分子のり”として機能することが報告された.さらに,サリドマイド誘導体のようなE3ユビキチンリガーゼバインダーと標的タ…

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  • 液胞/リソソームアミノ酸トランスポーターによる細胞内アミノ酸ホメオスタシス

    関藤 孝之, 河田(河野) 美幸 生化学 95 (6), 747-756, 2023-12-25

    サイトゾル中アミノ酸濃度の調節は,細胞の生存・生育に直結する重要なプロセスである.その機構の一つとして,液胞/リソソーム内外へのアミノ酸輸送があげられる.そこで機能するアミノ酸トランスポーターは,近年同定が進み,出芽酵母ではトランスポーター間の機能重複が明らかとなっている.また動物リソソームアミノ酸トランスポーターがmTORC1を調節するトランスセプターとして,細胞内アミノ酸ホメオスタシスの重要…

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  • 小胞体膜タンパク質PERKによるオルガネラ制御と個体機能調節

    三宅 雅人, 親泊 政一 生化学 95 (6), 765-774, 2023-12-25

    小胞体はほとんどすべてのオルガネラと接触することから,オルガネラ連関でのハブとして機能することが示唆される.小胞体膜タンパク質PERKは,小胞体のタンパク質恒常性を維持する小胞体ストレス応答の伝達タンパク質であることが広く知られている.近年の研究から,PERKが小胞体以外にミトコンドリアなどのオルガネラ機能を制御すること,さらには細胞自律的だけでなく,細胞間コミュニケーションによって小胞体ストレ…

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  • ペルオキシソームの動態と機能制御研究の新展開

    奥本 寛治, 阿部 雄一, 藤木 幸夫 生化学 95 (6), 719-729, 2023-12-25

    ペルオキシソームは極長鎖脂肪酸のβ酸化をはじめとした多様かつ重要な代謝機能を有する細胞小器官(オルガネラ)である.ペルオキシソーム形成に必須な多数のペルオキシン遺伝子(PEX)の同定,およびその翻訳産物であるペルオキシンの機能解析が大きく進展し,ペルオキシソーム欠損症の全病因PEX遺伝子の解明に続いてペルオキシソームの形成機構が明らかとなってきた.ここでは,ペルオキシソーム構成タンパク質の輸送局…

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  • ERKシグナル伝達ネットワークと疾患

    武川 睦寛, 久保田 裕二 生化学 95 (5), 579-593, 2023-10-25

    ERKを中心とする生体内情報伝達ネットワークは,さまざまな遺伝子の発現を正・負に調節することで,細胞運命決定や免疫応答の制御に本質的な役割を果たしている.また,その破綻ががんや感染症などの病因・病態にも深く関与する.近年,ERK経路の新たな制御メカニズムとして,多彩な翻訳後修飾や遺伝子発現を介したネガティブ・フィードバック機構などの存在が見いだされるとともに,これらを介したERKシグナルの強度と…

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  • 最新技術で明らかになったエンドセリン受容体の構造と機能

    志甫谷 渉 生化学 95 (5), 571-578, 2023-10-25

    エンドセリンとその受容体であるETAおよびETBは,複数のGタンパク質を介して,成長,生存,浸潤,血管新生などの体内の恒常性をつかさどる.本稿では,X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡法によるこれらの受容体の構造決定と,エンドセリンによる受容体活性化機構に焦点を当てる.我々の一連の研究で,エンドセリンの結合に伴う受容体の大きな構造変化や,それがどのように細胞内側に伝わるか,そしてエンドセリン受容…

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  • 腸内細菌が産生する脂質代謝物の構造と機能

    両角 諭, 岡橋 伸幸, 有田 誠 生化学 95 (4), 428-436, 2023-08-25

    腸内細菌叢は複雑な代謝ネットワークを構築し,健康維持や疾患の発症・進展に寄与している.このメカニズムの一端には,腸内細菌に由来する代謝物が宿主の受容体に作用する機構があげられる.腸内細菌由来の脂質には,アシル基の分岐やヒドロキシ基修飾,極性基の構造などが宿主由来のものとは異なるという特徴がある.そしてこれら脂質の微細な構造の違いは,宿主受容体に対する反応性に大きく影響することがある.本稿では,こ…

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  • 腸内細菌代謝物を標的としたメタボローム解析

    中西 裕美子 生化学 95 (4), 445-449, 2023-08-25

    近年,急速に発展した腸内細菌研究において,腸内細菌由来の代謝物,または,食事由来の化合物の機能性が多数報告されてきた.メタボローム解析はこれら代謝物や化合物を網羅的に計測する手法であり,腸内細菌研究において必須の解析項目となりつつある.計測技術の発展からメタボローム解析にて計測できる代謝物の数や種類は飛躍的に向上したが,計測法の選択,および,膨大なデータを処理するための統計解析の手法が多数存在す…

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  • 腸内細菌の組成や代謝に影響を与えるマイクロバイオームモジュレータ

    佐藤 謙介, 金 倫基 生化学 95 (4), 467-474, 2023-08-25

    腸内細菌の組成や代謝に影響を与える因子をマイクロバイオームモジュレータと呼んでいるが,これには,下部消化管まで到達する糖・タンパク質・脂質などの栄養素,抗菌剤などの薬剤,生菌,ファージ,腸内細菌代謝物などがあげられる.各マイクロバイオームモジュレータは異なる腸内環境変化を引き起こすため,結果として宿主に異なる影響を及ぼす.そのため,マイクロバイオームモジュレータは,腸内細菌叢の構成異常(ディスバ…

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  • 自然免疫を介した病原体認識と獲得免疫の誘導

    河合 太郎 生化学 95 (4), 509-520, 2023-08-25

    自然免疫は感染防御の初期に働く生体防御機構であり,マクロファージや樹状細胞が主要な働きをする.これら細胞は,病原体の構成成分を認識するパターン認識受容体を介して病原体の侵入を察知し,炎症や獲得免疫成立に重要な分子群の発現を誘導する.パターン認識受容体には,Toll-like receptorファミリー,RIG-I-like …

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  • D-セリンによる生体機能調節

    森 寿 生化学 95 (4), 498-508, 2023-08-25

    地球上の生物は,タンパク質合成にL型アミノ酸のみを使い鏡像異性体のD型アミノ酸は使わない.D型アミノ酸のうちD-Serは,セリン異性化酵素(SRR)によって作られ脳内に豊富に存在している.哺乳類で神経伝達,神経可塑性,脳高次機能,神経精神疾患などのさまざまな場面に中心的に関わるNMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)は,D-Serによって活性が制御されている.SRR/D-Ser/NMDARから…

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  • 腸内デザインが切り拓く新たな健康維持基盤の創出

    福田 真嗣 生化学 95 (4), 419-427, 2023-08-25

    ヒトの腸管内にはさまざまな腸内細菌が生息しており,それらが宿主細胞と相互作用することで複雑な腸内微生物生態系を形成している.特に大腸内は,地球上において最も高密度に細菌が存在する場所の一つであるが,その理由として腸内細菌の栄養素が豊富に存在する点があげられる.食物繊維やオリゴ糖,難消化性タンパク質などの未消化物が腸内細菌のエサになるが,それらは腸内細菌により分解され,さまざまな代謝物質が産生され…

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  • 宿主・腸内フローラ相互作用の理解に向けた代謝オミクス技術

    池田 和貴 生化学 95 (4), 436-444, 2023-08-25

    腸内細菌は哺乳類とは異なる代謝反応によって,生体内の分子もしくは食事などの外来由来の分子を構造変換することで多種多様な代謝物を腸管内で産生し,これらの分子の一部は宿主の生体恒常性の維持や疾患の発症に関わることが近年明らかになってきている.こうした研究の進展には,細菌と宿主との共生関係から生まれる代謝クロストークの総体を分子レベルで捉えることが可能な代謝オミクス(メタボロミクス,リピドミクス)解析…

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  • 腸内代謝物質を介した免疫系の修飾

    宮内 栄治, 佐々木 伸雄 生化学 95 (4), 475-482, 2023-08-25

    腸内細菌は食事由来栄養素や宿主が分泌する胆汁酸などを代謝して,さまざまな代謝物質を産生する.また,その代謝活性や生成産物は菌によって異なる.炎症性腸疾患などの患者においては腸内細菌叢の構成が乱れているが,結果として腸内代謝物質のプロファイルにも変化が生じる.種々の腸内代謝物質はそれぞれ異なる機序で免疫系に影響を与え,さらには疾患にも関与する可能性がみえてきた.本稿では,腸内細菌が産生する主要な代…

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  • 食と腸内細菌が織りなす腸内代謝環境の構築と健康への影響

    細見 晃司, 國澤 純 生化学 95 (4), 450-456, 2023-08-25

    腸内細菌が我々の健康状態や疾患の発症・重篤化などと関わっていることが明らかになってきているが,その作用メカニズムとして,ポストバイオティクスなど腸内細菌が作り出し宿主に対して生理活性を持つ代謝物が注目されている.筆者らのグループでは,日本人を対象に腸内環境に関する大規模なデータベースを構築し,独自に開発した解析ツールとともにデータを公開しながら,腸内環境と健康に関する研究を進めている.本稿では,…

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  • 腸内細菌における食事成分・薬効成分代謝の解析と代謝物の生理機能

    小川 順, 原 良太郎, 安藤 晃規, 竹内 道樹, 岸野 重信 生化学 95 (4), 457-466, 2023-08-25

    食事成分・薬効成分は,ヒトの消化作用のみならず腸内細菌による代謝を受けさまざまな化合物へと変換される.したがって,腸内細菌による食事成分・薬効成分等の機能性化合物の代謝を把握し,代謝物の生理機能を評価することは,健康を実現する腸内デザインにとって重要である.本稿では,腸内細菌における食事成分・薬効成分の代謝解析研究の例として,植物機能性分子ならびに食事成分の腸内細菌代謝の解析例を,生成する代謝物…

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  • 腸内細菌群集の網羅的代謝機能データベース

    城間 博紹, 山田 拓司 生化学 95 (4), 483-489, 2023-08-25

    ヒト腸内環境解析は次世代シーケンサーの発展と,腸内環境と疾患の関連性が次々と明らかになるにつれ,技術的にさまざまな広がりを見せている.16S rRNA遺伝子アンプリコン解析のみならず,ショットガンメタゲノム解析による詳細な機能解析により,ヒト腸内細菌が持つ代謝機能についても,定量的に扱うことが可能となってきた.遺伝子機能解析には,塩基配列やアミノ酸配列に対して行う機能アノテーションが基盤となる.…

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  • 便移植の現状と展開

    石川 大 生化学 95 (4), 490-497, 2023-08-25

    近年,腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)とさまざまな疾患との関連が明らかになっており,dysbiosisの改善を目的とした便移植療法(fecal microbiota transplantation:FMT)がdysbiosisに関わる疾患に対する根本的治療方法として注目され,幅広く研究が行われている.本稿では難治性疾患に対するFMTの有効性について,既報と当施設での臨床研究の結果を併せて報…

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  • 神経回路形成機構の解明を目指して

    山本 亘彦 生化学 95 (3), 310-321, 2023-06-25

    脳は膨大な数の神経細胞からなるネットワークであり,この神経回路こそがあらゆる精神活動の源になる.神経回路の基本構造は発生プログラムに基づいて自律的に形成されるが,細部構造は環境からの影響すなわち神経細胞の電気的活動によって再編される.そして,その形成過程の異常は疾病につながる.脳の設計図には依然多くの謎が残されているが,半世紀以上に及ぶ神経科学の研究によって,回路形成を担う細胞の挙動や反応性,そ…

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  • 電位依存性カリウム(KV)チャネル研究の歴史と展望

    中條 浩一 生化学 95 (3), 296-309, 2023-06-25

    電位依存性カリウム(KV)チャネルは,神経細胞の活動電位を再分極させるという重要な生理機能を持つが,その働きはすでに1952年にHodgkinとHuxleyによって数学的に美しく記述されている.そしてそれ以降も生物物理学的にきわめて興味深い研究対象として研究されてきたが,1987年に初めてのKVチャネル遺伝子としてShakerがショウジョウバエよりクローニングされ,その流れは加速した.2005年…

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  • オルガネラ膜接触ゾーンにおける脂質選別輸送システムの動作原理

    花田 賢太郎 生化学 95 (3), 279-295, 2023-06-25

    さまざまな脂質転送タンパク質群が脂質のオルガネラ間選別移送を行っている.本稿では,現在のオルガネラ間脂質輸送モデルに至った歴史的背景を紹介した後,小胞体で合成されたセラミドをゴルジ体へ運ぶタンパク質CERTの生化学的特徴を脂質転送タンパク質の典型例として述べる.次に,脂質のオルガネラ間転送の正確さはオルガネラどうしが近接した場を活用することで担保できること,さらに,脂質転送の方向は特定のオルガネ…

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  • 翻訳動態をタンパク質レベルで捉えるプロテオミクス

    今見 考志 生化学 95 (3), 322-329, 2023-06-25

    遺伝子発現制御において,翻訳はタンパク質量の増減調節に寄与する重要なプロセスの一つである.超並列DNAシーケンス技術や質量分析技術の進展に伴い,ゲノム・プロテオームワイドに翻訳動態の全体像が俯瞰されつつある.本稿では,遺伝子発現制御の全体像(合成速度・絶対量・半減期),頻繁に議論されているmRNA量とタンパク質量の相関関係,そして翻訳をタンパク質レベルで捉えるための最先端の質量分析技術を概説する…

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  • 微粒子疾患を起こすマクロファージ受容体の役割

    中山 勝文, 山口 慎一朗 生化学 95 (2), 184-193, 2023-04-25

    さまざまな無機微粒子はマクロファージに貪食されるとNLRP3インフラマソーム活性化と細胞死を誘導し、それらは難治性の慢性炎症性疾患の発症に大きく関わっている.たとえばシリカ(二酸化ケイ素)やアスベスト(石綿)といった環境微粒子は肺がんや中皮腫を引き起こすことが知られる.また体内で形成された尿酸塩結晶,コレステロール結晶,およびアミロイドβ凝集体はそれぞれ痛風,動脈硬化関連疾患,およびアルツハイマ…

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  • 病的・恒常的炎症環境を創り出す直鎖状ユビキチン鎖修飾系

    佐々木 克博 生化学 95 (2), 217-227, 2023-04-25

    ユビキチン鎖によるタンパク質翻訳後修飾系は,構造的に異なる複数のユビキチン鎖の形成を可能とし,多岐にわたる細胞内シグナル経路を駆動させることで多彩な細胞内生理機能に関与する.筆者らが着目する直鎖状ユビキチン鎖はTNFやIL-1β,TLRリガンドなど特定の細胞外刺激に応答して一過性に形成され,NF-κBシグナルの活性化や外因性細胞死抑制機能を果たす.炎症環境下,炎症応答シグナルを増幅させ,同時にデ…

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  • リンパシステム内ナノ粒子動態の制御とリンパ管内皮細胞を標的とする核酸送達システムの開発

    櫻井 遊, 秋田 英万 生化学 95 (2), 161-168, 2023-04-25

    リンパシステムは体液循環の調節の他,抗原や病原体に対する免疫制御の場として中心的な役割を果たす.また,近年リンパ管を構成するリンパ管内皮細胞は,免疫細胞と協奏して免疫調節していることが報告されている.このため,人工の細胞外微粒子であるナノ粒子によるリンパシステムの機能制御は新しい創薬戦略につながりうる.ナノ粒子のリンパシステム内動態の制御を目指して,ナノ粒子の表面物性とリンパシステム内動態の網羅…

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  • 合成生物学的アプローチが可能とする細胞外小胞の理解と発展的利用

    小嶋 良輔, 國武 厚貴 生化学 95 (2), 194-200, 2023-04-25

    細胞から放出されるナノ粒子である細胞外小胞(extracellular vesicles:EV)は,細胞間コミュニケーションを媒介する因子や,天然のドラッグデリバリーキャリアとして,基礎・応用の両面から注目を集めている.本稿では,合成生物学的手法によってEV産生細胞を改変し,そこから放出されるEVに狙った機能を付与することで,EVを次世代の疾患治療へと応用する試みや,EVの機能・特性をより深く理…

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  • 神経変性の原因となるタンパク質微粒子の形成と伝播機構

    長谷川 成人 生化学 95 (2), 144-150, 2023-04-25

    アルツハイマー病,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症などの主要な神経変性疾患の原因タンパク質の構造がクライオ電子顕微鏡解析により次々と明らかになってきた.疾患ごとにタンパク質の折りたたみ構造は異なり,構造の違いに基づいた疾患分類が提唱されている.また折りたたまれたタンパク質はプリオン病における異常型PrPのように,鋳型となって自身と同じタンパク質を異常型に変えながら線維化していく性質を持つ.タウ…

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  • 大気中微粒子による生体応答の解明

    後藤 謙治, 吉田 孟史, 猪股 弥生, 華山 力成, 瀬戸 章文 生化学 95 (2), 151-156, 2023-04-25

    粒子径2.5 µm以下の大気中微粒子であるPM2.5は世界各国で深刻な大気汚染を引き起こし,呼吸器疾患など人体への影響が懸念される.PM2.5は粒子径,化学組成が異なる複雑な粒子群であり,環境中での化学反応性や物理特性,生体内での呼吸器深部への移行性や生体応答は多様である.そのため,PM2.5の調査研究では粒子径ごとの粒子分級と高精度の化学組成解析が研究の基盤であり,そのうえで生体応答の解明に取…

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  • ナノワイヤ・ナノポアデバイスによる超高性能細胞外微粒子解析技術

    馬場 嘉信, 有馬 彰秀, 安井 隆雄 生化学 95 (2), 201-208, 2023-04-25

    細胞外微粒子は外因性・内因性のものに大別され,広範な粒子種を包含する.この中でも,健康の指標となるバイオマーカーや,ウイルス・細菌に代表される感染性有害微粒子を高感度・高効率に検出することで,健康長寿社会の実現に貢献することができる.当研究室はナノ空間工学を活用した新しいバイオデバイス,“ナノバイオデバイス”の開発を推進しており,細胞外微粒子に対しても,最先端の微細加工技術と情報科学を駆使してそ…

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  • 細胞外微粒子の細胞内取り込みとマクロピノサイトーシス

    二木 史朗, 広瀬 久昭 生化学 95 (2), 157-160, 2023-04-25

    マクロピノサイトーシスはアクチンフィラメントの再構築と細胞膜の隆起・融合を伴い,大量の細胞外液を細胞内に取り込む液相エンドサイトーシスである.この際生じる取り込み小胞(マクロピノソーム)の直径は数µmに達することが知られている.この経路は非特異的に多くの細胞外物質を細胞内に取り込むことが可能と考えられ,さまざまな形態や物性を有する細胞外微粒子の細胞内取り込み経路となりうる.本稿では,細胞外微粒子…

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  • 糖鎖を基軸とするエクソソームの多様性解析と生体応答・制御

    下田 麻子, 舘野 浩章, 秋吉 一成 生化学 95 (2), 136-143, 2023-04-25

    細胞外小胞(エクソソーム)が細胞間情報伝達の担い手としてあらゆる分野で注目されている.特に疾患マーカーや再生医療分野での応用研究が盛んに行われているが,生体由来であるためにエクソソーム一つ一つは異なる性質を持つ.このような多様性のあるエクソソームの分離,構造解析技術から機能解析技術まで,さまざまな課題が残されている.エクソソームの構成成分である脂質,タンパク質,核酸はその種類や機能がこれまでに多…

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  • 細胞外微粒子への生体応答と発がんとの関連

    豊國 伸哉 生化学 95 (2), 177-183, 2023-04-25

    外因性微粒子や感染に伴う炎症反応は体内の鉄分布を大きく変え,細胞外の鉄を減らすように作用するため,細胞内鉄過剰が発生する.過剰鉄は発がんリスクである.鉄は細胞増殖に必須な酵素の補因子であるが,過剰鉄はフェントン反応により変異性DNA傷害を起こし,発がんの基盤となるフェロトーシス抵抗性を持った細胞の進化・選択を促進する.血清フェリチン値は体内鉄貯蔵の指標だがその分泌機構は不明であった.我々は最近,…

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  • 環境中微粒子の体内,細胞内動態,生体・免疫応答機序の解明と外因的,内因的健康影響決定要因,分子の同定

    高野 裕久, 佐川 友哉, 本田 晶子 生化学 95 (2), 169-176, 2023-04-25

    我々は,「細胞外微粒子に起因する生命現象の解明とその制御」の中で,呼吸器・アレルギー疾患等を悪化させる環境中微粒子(外因性微粒子:黄砂,金属,炭素,デイーゼル排気微粒子,および,それらを含むPM2.5)を対象に解析を進め,これらの環境中微粒子の中でも,生体・免疫応答へのエントリー経路,体内・細胞内動態,生体・免疫応答機序が異なることを明らかにしつつある.また,これらの相違を基に,環境中微粒子を医…

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  • 革新的液中ナノ顕微鏡開発と細胞外微粒子の包括的解明

    小椋 俊彦 生化学 95 (2), 209-216, 2023-04-25

    内因性や外因性の細胞外微粒子が細胞に与える影響を解析するためには,ナノレベルの分解能で直接観察することが重要となる.さらに,細胞への影響を解明するためには,生きた細胞をそのままの状態で直接観察できることが望ましい.我々は,生きた細胞や有機材料を直接観察することが可能な走査電子誘電率顕微鏡を開発してきた.この方法では,染色処理や固定化処理なしに溶液中の生物試料を直接観察することが可能である.本稿で…

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  • シナプス接着分子Neurexin–Neuroliginと自閉症スペクトラム症

    田渕 克彦 生化学 95 (1), 40-49, 2023-02-25

    NeurexinとNeuroliginは,シナプスに局在する細胞接着因子のファミリー分子で,これらがシナプス間隙で架橋することにより,シナプスの形成および成熟に寄与していると考えられている.約20年前に,Neuroliginの遺伝子変異が自閉症患者から発見されたのを契機に,自閉症の原因としてのシナプス異常説が浮上した.その後,Neurexin自身や,さらにはNeurexin/Neuroligin…

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  • テイルアンカー型膜タンパク質のオルガネラ局在化における配送校正機構

    松本 俊介 生化学 95 (1), 17-28, 2023-02-25

    真核生物の細胞内では合成されたタンパク質が,目的の細胞小器官(オルガネラ)に配送されることは正常な細胞機能に必要である.従来タンパク質の配送は非常に正確なプロセスであり,異なる配送先に誤って局在したタンパク質は,細胞の品質管理機構により速やかに分解されると考えられてきた.しかし,現在この考え方が大きく変わりつつある.C末端に膜貫通配列(TMD)を一つ持つテイルアンカー型(TA)膜タンパク質は,小…

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  • グレリンの発見から臨床応用まで

    児島 将康 生化学 95 (1), 5-16, 2023-02-25

    グレリンは胃から発見されたペプチドホルモンであるが,N末端から3番目のセリン残基の側鎖が脂肪酸(メインはオクタン酸)によって修飾されている.しかもこの脂肪酸の修飾基がグレリンの活性に必要である.現在,グレリンのペプチド部分に脂肪酸を転移させる特異的な酵素として,グレリン脂肪酸転移酵素(GOAT)が同定されている.グレリンの脂肪酸修飾基がなぜグレリン受容体の活性化に必要なのかという謎は,最近のグレ…

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  • タンパク質のリン酸化は,なぜ非構造領域に群がるのか?

    吉村 成弘 生化学 95 (1), 29-39, 2023-02-25

    リン酸化をはじめとするタンパク質翻訳後修飾は,「立体構造特異的」にタンパク質機能を制御すると考えられてきた.しかし,近年のバイオインフォマティクス解析からは,翻訳後修飾の多くは,立体構造を持たないタンパク質領域(天然変性領域)に生じることが示されている.リン酸化が天然変性領域の液–液相分離を制御する事例が報告されているが,そのメカニズムは不明であった.ここでは,近年報告されたリン酸化の「電荷ブロ…

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  • ナンセンスコドン介在的mRNA分解(NMD)と共役した選択的スプライシングによる遺伝子発現の制御

    黒柳 秀人 生化学 94 (6), 868-874, 2022-12-25

    筆者らは,線虫のナンセンスコドン介在的mRNA分解(NMD)欠損変異株を利用して,全長mRNAの直接シーケンシング解析により,NMDの基質となるスプライスバリアントの網羅的探索を行い,259遺伝子の289バリアントを同定した.このうち,S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)合成酵素をコードするsams遺伝子群では,SAMの濃度に応じて3′スプライス部位のAGジヌクレオチドのアデニン塩基がN6-…

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  • 神経ネットワークと可塑性を支配するダイナミックなスプライシング制御

    飯島 崇利 生化学 94 (6), 852-860, 2022-12-25

    選択的スプライシングは,神経回路構築に重要なシナプス結合の特異性や神経可塑性を築く生命情報多様性の獲得に重要な仕組みである.神経系では複数のスプライシング調節因子の発現や活性,相互作用によりさまざまな様式で時空間的にスプライシングが制御されており,生命情報の多様性獲得に寄与している.本稿ではこの時空間的な選択的スプライシングの仕組みとして,神経活動依存的制御,神経細胞タイプ特異的制御,および3′…

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  • 「イントロンの長さ」の不可思議に端を発する新しいスプライシング機構の発見

    福村 和宏, 前田 明 生化学 94 (6), 806-813, 2022-12-25

    真核生物のイントロンの長さは,高等生物になるほど長くなる.とりわけ,ヒトのイントロンでは,約30~116万塩基と驚異的な広さに分布する.真核生物は,さまざまな長さのイントロンに対応できるようにスプライシングの仕組みを進化させてきたに違いない.しかし,教科書に書かれているのは,研究に好都合な長さのイントロンに対応するスプライシングの仕組みである.極端な長さのイントロンに注目した研究から,新しいスプ…

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  • RNAスプライシング制御を標的とした創薬

    網代 将彦, 萩原 正敏 生化学 94 (6), 837-844, 2022-12-25

    筆者らは薬剤でRNAの発現量や発現パターンを変化させることにより先天性の難病を治すことが可能ではないかと考え,遺伝子発現を生体内で可視化する独自の技術を開発してきた1–3).さらにこの技術を化合物スクリーニングに応用することで,先天性疾患の原因遺伝子の異常なRNAスプライシングを正常化させるスプライシング制御薬を見いだし,従来は薬物治療の対象とされてこなかった先天性疾患について薬物治療が可能であ…

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  • スプライシング阻害と翻訳制御

    岩崎 信太郎, 吉田 稔 生化学 94 (6), 819-828, 2022-12-25

    イントロンはpre-mRNAから除去されるRNA領域であり,一般的にその配列自体に大きな機能はないと考えられてきた.しかしながら近年の研究により,この固定概念を覆すようなイントロンやスプライシング調節の新機能,とりわけ翻訳の制御機構が着目を集めている.これらの機構によって,イントロンが進化的に獲得・保持されている理由やスプライシングを人工的に調節する薬剤(スプライシング調節剤)の抗がん作用が説明…

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  • 選択的スプライシングと,がんのワールブルグ効果

    田沼 延公 生化学 94 (6), 875-881, 2022-12-25

    解糖系酵素ピルビン酸キナーゼM(PKM)には構成的活性型のPKM1, 条件的活性化型のPKM2という二つのスプライシングアイソフォームが存在し,大半のがんがPKM2を選択的に発現する.かつて,PKM2はワールブルグ効果の形成を通じて腫瘍細胞に代謝上の有利をもたらすとされたが,PKM2欠損マウスの表現型は“がん促進”だった.筆者らは,Pkmの選択的スプライシング制御を固定化した新たな遺伝子改変マウ…

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  • 骨髄異形成症候群(MDS)における異常スプライシング機構

    片岡 直行 生化学 94 (6), 797-805, 2022-12-25

    mRNAスプライシングは高等真核生物では遺伝子発現に必須な過程であり,高度な正確性が要求される.そのため,mRNA前駆体上の制御配列やスプライシング制御因子に変異を生じると,ヒトでは疾患として現れる場合が多い.骨髄異形成症候群(MDS)は,血液細胞のもととなる造血幹細胞に異常が起き,正常な血液細胞が産生されなくなる疾患である.単独の疾患ではなく,類似した症状を呈する複数の疾患からなる症候群と考え…

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  • スプライシング異常と細胞周期停止機構

    甲斐田 大輔 生化学 94 (6), 829-836, 2022-12-25

    真核生物において,mRNAスプライシングは遺伝子発現にとって必須のメカニズムである.これまでの研究から,スプライシング関連因子の変異やスプライシング阻害剤は,細胞周期関連因子のスプライシングを阻害し,遺伝子発現を低下させることで細胞周期停止を引き起こすことが明らかとなった.さらには,スプライシング阻害により蓄積したpre-mRNAが翻訳されたトランケート型タンパク質が細胞周期停止に関わることもわ…

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  • 植物pre-mRNAスプライシングの特徴とその生理的役割

    高柳 なつ, 大谷 美沙都 生化学 94 (6), 861-867, 2022-12-25

    植物は多くの真核生物と異なり,自ら動くことができないため,環境変化に応答して生育を調整するための独自の分子機構を発達させている.近年の研究成果から,そのための仕組みの一つが,pre-mRNAスプライシングであることが示唆されている.本稿では,pre-mRNAスプライシング機構の植物特異的な側面,特に筆者らが解析してきたU small nuclear ribonucleoprotein(U …

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  • スプライシング阻害とRNA輸送

    芳本 玲 生化学 94 (6), 814-818, 2022-12-25

    DNAから転写されたmRNA前駆体は,核内でキャップ,ポリAの付加,スプライシングを受ける.そして,成熟mRNAとなり,細胞質へと輸送され,翻訳の鋳型となる.mRNA前駆体はスプライシングが完了するまで核に繋留され細胞質へと輸送されることはない.この現象は酵母においてもヒトにおいても保存されている.しかし,その機構については,特に遺伝子の構造が複雑なヒトやマウスといった高等真核生物では不明な点が…

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  • マイクロエクソンの取捨選択による中枢シナプス形成の調節

    吉田 知之 生化学 94 (6), 845-851, 2022-12-25

    近年,脊椎動物の神経細胞において選択的にスプライシング調節を受ける3~27ヌクレオチドのマイクロエクソンの存在が明らかになり,神経系で働くタンパク質の機能を修飾する新たな機構として注目されている.受容体チロシン脱リン酸化酵素PTPRDは神経細胞間シナプスの分化誘導を担う主要な細胞接着タンパク質(シナプスオーガナイザー)として知られる.Ptprd遺伝子の持つ三つのマイクロエクソンは脳部位や発達時期…

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  • 水晶体の全オルガネラ分解現象の分子機構と生理的意義

    森下 英晃 生化学 94 (5), 651-662, 2022-10-25

    目の水晶体を構成する細胞の最終分化過程では,ミトコンドリア,小胞体,核などのすべてのオルガネラが分解される.これまでに核DNAの分解を担うDNA分解酵素は同定されていたが,その他のオルガネラの分解機構についてはほとんど不明であった.最近筆者らは,水晶体のオルガネラ分解はサイトゾルのPLAATホスホリパーゼを介する新規オートファジー非依存的オルガネラ分解機構によること,その作用は水晶体の透明化に必…

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  • ヤスデ由来のヒドロキシニトリルリアーゼの発見と構造に関する研究

    浅野 泰久 生化学 94 (5), 681-689, 2022-10-25

    近年,ヒドロキシニトリルリアーゼ(HNL)の新しい分布,特性,構造などについての報告が急増している.主に植物に分布するHNLは,草食動物や微生物に対する防御機構の一つとして使われ,シアノヒドリンを基質としてシアン化水素(HCN)と対応するアルデヒドまたはケトンに分解する.一方,逆反応によって,プロキラルなアルデヒドに立体選択的にシアン化水素を付加し,重要なキラル中間体である光学活性なシアノヒドリ…

    DOI Web Site 医中誌

  • NKT細胞と疾患

    岩渕 和也 生化学 94 (5), 663-680, 2022-10-25

    ナチュラルキラーT(natural killer T:NKT)細胞は,分化抗原群(cluster of differentiation:CD)1ファミリー分子のCD1dに提示される脂質抗原分子をその抗原受容体で認識する希少T細胞亜群で,NK細胞マーカーも同時に発現していることからNKT細胞と呼ばれる.その迅速で旺盛なサイトカイン産生や細胞傷害活性などから免疫・炎症性疾患にとどまらず,さまざまなマ…

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