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検索結果 3,325 件

  • 微量金属同位体比高精度分析法の開発とその海洋化学への応用

    高野 祥太朗 海の研究 33 (1-2), 17-30, 2024-03-15

    <p>海洋においてニッケル,銅,亜鉛などの微量金属は,pmol/kg~nmol/kgの濃度でしか存在しないが,海洋生物にとって必須栄養素や毒素として働く。著者はこれまで,安定同位体比を用いた海水中微量金属の起源と生物地球化学循環プロセスの理解をテーマに研究を行ってきた。(i)海水中ニッケル,銅,亜鉛同位体比の分析法を開発した。本法は,海水中ニッケル,銅,亜鉛の同位体比を一斉に分析できるため,観測…

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  • 深海乱流混合のパラメタリゼーションに関する研究

    伊地知 敬 海の研究 33 (1-2), 1-16, 2024-03-15

    <p>深層海洋大循環を把握する上でブラックボックスとなっている深海乱流混合の全球分布を解明するためには,グローバルに観測可能なスケールの大きい物理量から乱流混合強度を推定する,いわゆる,パラメタリゼーションの手法に頼らざるを得ない。しかしながら,既存の乱流パラメタリゼーションはいくつかの問題点を抱えている。海洋の中・深層における乱流散逸率のパラメタリゼーションは,ファインスケールの流速シアーと密…

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  • 気候の形成・変動・変化における大規模な大気海洋相互作用の役割に関する研究

    謝 尚平 海の研究 32 (5-6), 95-107, 2023-12-25

    <p>1980年代に海洋と大気を一つの結合システムとして扱う斬新な研究アプローチが登場した。赤道湧昇域で起きるエルニーニョを説明するビヤークネス・フィードバックに加えて,風・蒸発・海面水温フィードバックが熱帯収束帯の北半球への偏在を説明するために提案され,亜熱帯太平洋南北モードにも適用された。後者は,中緯度大気擾乱が熱帯気候へ影響を及ぼす重要なメカニズムとして,注目されている。1990年代以降,…

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  • 北太平洋の表層循環とその変動に関する観測的・理論的研究

    Qiu Bo 海の研究 32 (3-4), 67-93, 2023-08-25

    本論文では,風成循環である北太平洋亜熱帯循環系の西部に存在する4 つの主要な海流系,すなわち,亜熱帯循環の南縁にある北赤道海流,亜熱帯循環の中心緯度を横切る亜熱帯反流,大蛇行と非大蛇行の流路をとる日本南岸の黒潮,そして北太平洋の内部領域へと流れ込む黒潮続流について,説明する。これらの海流系それぞれは固有の特性と時間変動シグナルを有するが,それらを別々にではなく,外部強制や相互作用を通じて互いに関…

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  • 沿岸域における混合過程と水理環境に関する研究: 内部潮汐と混合現象

    増永 英治 海の研究 32 (2), 37-65, 2023-03-15

    <p>沿岸域における物質輸送過程は陸域と外洋間の物質収支の把握に重要であり,物質輸送過程の解明には混合現象の調査が必要不可欠である。本稿では,筆者がこれまでに行なってきた沿岸域における内部潮汐により発生する混合現象と関連する物質輸送に関する観測的研究や,数値計算を用いた内部潮汐のモデル化について紹介する。沿岸海域における混合現象はスケールが小さく直接詳細な構造を計測することが難しいことを着眼点に…

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  • 光共生を行う浮遊性有孔虫類の海洋生態学的研究

    高木 悠花 海の研究 32 (2), 17-35, 2023-03-15

    <p>単細胞動物プランクトンである浮遊性有孔虫には,藻類との細胞内共生関係を築く種がおり,その関係性を「光共生」と呼んでいる。浮遊性有孔虫は,炭酸カルシウムの殻が微化石として地層中に保存され,かつ殻に生きていた当時の海洋環境および生態のシグナルが残されるという特徴があり,長時間スケールでの地球環境と生命の相互作用を探る上で,格好の研究材料である。また光共生は,生物進化的に重要な生態であるだけでな…

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  • 西部北太平洋・縁辺海における乱流鉛直混合による栄養塩輸送に関する研究

    田中 雄大 海の研究 32 (1), 1-16, 2023-01-15

    <p>西部北太平洋およびその縁辺海は,世界でも有数の生物生産の高い海域として知られている。この研究では,乱流鉛直混合という物理過程に注目し,乱流計を用いた船舶観測を中心として,高い植物プランクトン生産の維持に寄与する栄養塩輸送過程の解明に取り組んだ。ベーリング海南東部の大陸棚斜面域での乱流観測および採水観測と,数値実験から,潮汐混合に伴う下層からの硝酸塩・鉄供給が,夏季の持続的な植物プランクトン…

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  • (エントリー)島根県宍道湖周辺における完新世ヤマトシジミの殻外形の形態変異

    越智 輝耶, 入月 俊明 日本地質学会学術大会講演要旨 2023 (0), 497-, 2023

    ...,<b> 18</b>, 236–258.倉茂英次郎,1944,日本海洋学会誌,<b>3</b>, 231–253.中尾 繁・園田 武,1995,神西湖の自然,神西湖の自然編集委員会 編,たたら書房,p. 101–114.島根大学埋蔵文化財調査研究センター,2000編,島根大学埋蔵文化財調査研究報告,<b>6</b>,112p.高安克己・漆戸尊子・奥出不二生,1986,島根大学地質学研究報告,no....

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  • 千葉県九十九里沿岸とその沖から湧出する天然ガスの出現分布

    吉田 剛, 石井 光廣, 鈴木 孝太, 小倉 利雄, 小島 隆宏 日本地質学会学術大会講演要旨 2023 (0), 251-, 2023

    ...・鈴村昌弘ほか,2021, 房総半島九十九里沖海域における海底からの天然ガス湧出現象.日本海洋学会2021年度秋季大会要旨.・高橋和彦ほか,2012, 九十九里沿岸海域における天然ガス・ヨウ素工場周辺の窒素類の現況把握.水環境学会誌,35(7), 111-117.・吉田 剛・忍足慎吾,2013,外房沖の海底から湧出する天然ガスの画像.千葉県環境研究センター年報平成25年度....

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  • 日本海深層における近慣性周期Gyroscopic Waveの海底反射

    越後 友利果, 伊藤 海彦, 磯田 豊 海の研究 31 (4-5), 71-98, 2022-09-15

    <p>近慣性周期の内部波は,密度成層が弱くなるほど,地球回転ベクトルの水平成分<i>Ω </i>cos <i>φ</i>(<i>φ</i>は緯度,<i>Ω</i>は自転角速度)の影響が無視できなくなる。特に,日本海深層の底層水(Bottom Water)のように,浮力振動数(<i>N</i>)がほぼ零となる均一流体内に存在できる波はGyro-scopic …

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  • 日本海の高塩分中層域を経由するオーバーターニング循環の2010年代の経年変化

    植田 純生, 磯田 豊 海の研究 31 (3), 47-69, 2022-05-15

    <p>日本海の内部領域では惑星β面上の南北水温勾配を伴う東向き表層流 (対馬暖流) が年正味の海面熱損失と南方からの水平熱輸送との熱バランスによって維持されている。このような海盆スケールの表層流は温度風平衡を満たし,西岸境界で湧昇,東岸境界で沈降を駆動して,中層もしくは底層を経由するオーバーターニング循環(鉛直循環)を発達させる。日本海の高塩分中層水 (High Salinity …

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  • 光沢度を用いたカキ着定基質の表面粗さの定量化の試み

    梶原 直人, 浜口 昌巳 海の研究 31 (2), 39-46, 2022-03-15

    <p>付着生物にとっての着定基質構造の評価を行う一環として,産業重要種であるマガキ <i>Crassostrea gigas </i>幼生採苗器(カキ幼生コレクター)の表面粗さの定量化を,光沢度を用いて試みた。その結果,カキ幼生コレクターの表面では光沢度が3.6 以下で幼生は24 個体/cm<sup>2 </sup>以上,裏面中心部では光沢度が8.6 以上で幼生は10 個体/cm<sup>2 …

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  • 衛星マイクロ波センサーに関する基礎研究と海洋学への応用

    江淵 直人 海の研究 31 (1), 1-21, 2022-02-15

    <p>衛星搭載マイクロ波センサーは,マイクロ波帯の電波を利用することによって,昼夜や天候の影響を受けずに海面を観測することができる反面,合成開口レーダを除けば,空間分解能は10 km オーダーと粗い。可視・赤外放射計が,クロロフィル <i>a </i>濃度や海面水温の高解像度画像をもたらすのに対して,マイクロ波センサーは,全球スケールの物理量観測が中心となる。高精度の物理量観測を達成するためには…

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  • 海洋乱流現象を特徴付ける種々のスケールと無次元数,並びに渦拡散係数の推定

    中野 知香, 吉田 次郎 海の研究 30 (6), 255-275, 2021-12-15

    <p>鉛直渦拡散係数の強さは海洋大循環の構造に寄与し,ひいては気候変動に影響を及ぼすことが知られている。そのため鉛直渦拡散係数の全球的な推定が求められているが,限られた航海時間で推定に用いる乱流(粘性散逸率<i>ε</i>)の直接観測を重点的に行うことは難しい。また,観測を行えたとしても乱流のエネルギー源となる風・潮汐・内部波の砕波・海面冷却など多岐にわたる現象を理解するとともに,膨大な量の乱流…

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  • 三陸女川湾における水系分布とその季節変動,特に河川系水について

    五味 泰史, 高橋 大介, 遠藤 宜成 海の研究 30 (6), 277-293, 2021-12-15

    <p>三陸女川湾において,2000 年4 月から2017 年2 月の間に実施されたモニタリング調査により得られたデータを用いて,水系分布とその季節変動について調べた。本研究では,女川湾の海水をHanawa and Mitsudera(1987)で定義された6 つの水系および沿岸水(岸近くには存在するが,その沖合には存在しない海水)のいずれかに分類した。水系分類の結果を用いてモード水系を求めたとこ…

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  • 海洋学の10年展望2021:深層

    岡 顕, 大林 由美子, 勝又 勝郎, 高橋 一生, 山下 洋平, 横川 太一 海の研究 30 (5), 179-198, 2021-11-15

    <p>海洋深層において現在議論されている研究トピックを整理するとともに,今後10 年程度の期間で取り組むべき研究の方向性と意義,そしてその遂行に必要な研究基盤について論じた。本稿では物理・化学・生物が分野横断的に関わるトピックとして,とくに深層における物質循環に着目し議論した。具体的には,(1)深層から中層への物質輸送,(2)表層から中深層への有機物の輸送と動態,(3)深層の時間変化の3つの課題…

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  • 海洋学の10 年展望2021:沿岸域

    木田 新一郎, 栗原 晴子, 大林 由美子, 川合 美千代, 近藤 能子, 西岡 純 海の研究 30 (5), 87-104, 2021-11-15

    <p>沿岸域において,今後10 年程度の期間で取り組むべき研究の方向性と意義,そしてその遂行に必要な研究基盤について論じた。沿岸域は外洋域と陸域を結びつける,フィルターかつリアクターとしての役割をもつ海域であると同時に,人間社会に身近であり,多様で生産性豊かな海域である。沿岸域の物質循環を理解し,将来にわたってその豊かな生態系を維持していくためには,物理・化学・生物が分野横断的に連結し,組織立っ…

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  • 海洋学の10 年展望2021:熱帯域

    土井 威志, 安中 さやか, 高橋 一生, 渡辺 路生, 東塚 知己, 栗原 晴子 海の研究 30 (5), 105-129, 2021-11-15

    <p>熱帯域に関する近年の研究の進展をレビューするとともに,今後10 年程度で取り組むべき海洋研究の方向性に関して,物理・化学・生物の各分野を横断して論じた。特に,エルニーニョ・南方振動(ENSO)に焦点をあてた。ENSO の予測は,近年の物理的理解の進展によりある程度可能になった。一方,ENSO …

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  • 海洋学の10 年展望2021:極域

    川合 美千代, 田村 岳史, 渡邉 英嗣, 西岡 純, 野村 大樹, 真壁 竜介, 溝端 浩平, 安中 さやか 海の研究 30 (5), 159-178, 2021-11-15

    <p>今後10年に我が国が取り組むべき極域研究について,海洋学の視点から論じた。気候変化への極域の応答とフィードバックを明らかにするための重要課題として,両極共通の重要プロセスである中緯度からの海水輸送,海氷を介した物質輸送と生物生産,沿岸域の熱輸送と物質循環の定量化に加えて,北極海では海氷減少に関連する環境変化のメカニズム,春先の急激な季節変化,南大洋では東南極での大気-海洋-海氷 …

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  • 海洋学の10 年展望2021:新たな手法と問題

    平井 惇也, 宮 正樹, 藤木 徹一, 吉田 聡, 乙坂 重嘉, 帰山 秀樹, 加古 真一郎, 片岡 智哉, 松岡 大祐, 日高 弥子, 杉山 大祐, 小嶌 不二夫 海の研究 30 (5), 227-253, 2021-11-15

    <p>観測や分析技術の革新は海洋学を大いに発展させてきたが,同時に海洋環境汚染など人間活動に伴う新たな問題も浮き彫りにしてきた。本稿では,今後10 年の海洋学の発展に関わる新たな手法として,環境DNA,BGC Argo,バイオロギングに着目した。また,2011 年の東北地方太平洋沖地震以降の継続した問題である海洋放射能,ならびに近年急速に注目を集める海洋プラスチックを,新たな問題として取り上げた…

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  • 海洋学の10 年展望2021:大気海洋境界

    岩本 洋子, 相木 秀則, 磯口 治, 大林 由美子, 近藤 文義, 近藤 能子, 西岡 純 海の研究 30 (5), 199-225, 2021-11-15

    ...これらの問いに答えを出し人類が自然環境と共生するために必要な研究,ならびに日本海洋学会と隣接学会との連携について,次の10年を展望する。</p>...

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  • 海洋学の10 年展望2021:中緯度

    橋濱 史典, 纐纈 慎也, 近藤 能子, 佐々木 克徳, 杉本 周作, 高橋 一生, 長井 健容, 西岡 純, 林田 博士, 平井 惇也 海の研究 30 (5), 127-154, 2021-11-15

    <p>本稿では,亜寒帯循環,亜熱帯循環,縁辺海からなる中緯度海洋の表・中層を対象域とし,最近10 年間の海洋学の進展をレビューすると共に,新たに浮かび上がってきたいくつかの重要課題を取り上げ,それらに取り組むための観測技術,解析手法について紹介した。特に西部北太平洋の中緯度海洋に着目し,西岸境界流と大気海洋相互作用のマルチスケール現象の把握と予測,一次生産を支える栄養塩・鉄供給の3次元像の視覚化…

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  • 瀬戸内海・播磨灘におけるヤコウチュウ赤潮の長期変動

    多田 邦尚, 千葉 廉, 北辻 さほ, 石井 大輔, 柳 哲雄 海の研究 30 (3), 47-55, 2021-06-15

    <p>「瀬戸内海の赤潮」(水産庁瀬戸内海漁業調整事務所)に記載された各種情報を地図情報システム(Geographic Information System : GIS)に取り込んだ Ishii <i>et al</i>.(2013)の「赤潮基礎データセット」を用いて,瀬戸内海の播磨灘におけるヤコウチュウ赤潮の解析を行った。本データセットが対象とした 1979年から 2004年までの …

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  • 網走沖の陸棚ー海盆境界域におけるdense Soya Current Waterの輸送と変質過程

    千葉 彩, 堀尾 一樹, 磯田 豊, 小林 直人 海の研究 30 (2), 15-46, 2021-03-15

    <p>本研究では夏季の日本海中層に残留している冬季混合層水を起源とし,宗谷暖流(Soya Current:SC)の沖合側底層に出現する重い水塊(密度26.75 σθ以上)を「重い宗谷暖流水(dense Soya Current Water:DSCW)」と呼ぶことを提案する。最初に,DSCWの季節的出現と他の水塊の位置関係を再確認することを目的に,網走沖の陸棚┉海盆境界域における過去の海洋観測資料…

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  • 分子生物学的手法を用いた動物プランクトンの群集構造解析と

    平井 惇也 海の研究 30 (1), 1-13, 2021-01-15

    <p>海洋漂泳区の重要な生物群である動物プランクトンは形態分類に高度な専門知識や経験を要し,隠蔽種や未成体個体では形態による識別が困難である。そこで,形態情報に依存せずに動物プランクトン群集を把握するため,超並列シーケンサーによる大量遺伝子配列に基づき群集構造を復元するメタバーコーディングに着目した。はじめに,動物プランクトンで優占し高い多様性を誇るカイアシ類を対象に有用な遺伝子マーカーの選出を…

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  • 沿岸域で用いられる数値モデルの再現性-潮汐流-

    松野 健, 磯辺 篤彦, 上原 克人, 郭 新宇, 白木 喜章, 竹内 一浩, 山口 創一 沿岸海洋研究 59 (1), 47-57, 2021

    沿岸域における構造物の建設や様々な大規模な事業に際して,実施される環境影響評価では,数値モデルを用いた予測 実験が行われる.また,沿岸域での海洋現象を理解するための研究でも様々な数値実験が用いられてきた.その際,数値 モデルの結果は,観測値と比較することで,その信頼性を担保することが行われている.しかしその再現性の定量化につ …

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  • 豊後水道の沿岸定線観測点における潮流調和定数の推定と残差流の季節変化

    森本 昭彦, 柴川 大雅, 滝川 哲太郎, 平井 真紀子, 三門 哲也, 美山 透 沿岸海洋研究 59 (1), 11-20, 2021

    愛媛県農林水産研究所水産研究センターは,沿岸定線の28測点において毎月海洋観測を実施している.各測点では調査 船の船底に搭載された超音波多層流速計(ADCP)により流速が記録されている.潮流の卓越する豊後水道では,流速の 瞬間値から得られるのはその時の潮流の情報であり,測定のタイミングにより流向・流速は変わるため,沿岸定線観測時 のADCP データはほとんど利用されていない.しかし,ADCP …

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  • 有明海湾奥高濁度域で観察される冬季珪藻ブルームの消長を制御する物理化学環境

    山口 聖, 太田 洋志, 津城 啓子, 三根 崇幸 沿岸海洋研究 59 (1), 1-10, 2021

    冬季の有明海湾奥西部域における満潮時および干潮時の物理化学環境(栄養塩環境・光環境)の評価を行うことを目的 に,当海域への主要な淡水供給源である感潮域からその沖合域にかけて調査を行った.2017年12月5日に,沖合域におい てSkeletonema 属を主体とする珪藻ブルームの発生とそれに伴う栄養塩濃度の減少が観測された.2017年12月26日の満潮 …

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  • 豊かな海-2.「豊かな海」をめぐる複雑な関係

    関口 秀夫 沿岸海洋研究 59 (1), 69-78, 2021

    前報での議論を踏まえ,①「豊かな海」と海洋生態系の関係,②「豊かな海」をめぐる利害関係者の衝突,③水産業の社 会的位置と問題点,④「豊かな海」と里海と漁業の関係,⑤「豊かな生態系」(豊かな海)の価値および評価,の5つの課題 を検討する.

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  • 南海地震水没災害伝承の痕跡発掘に向けた沿岸域海底調査:須崎市野見湾を例に

    谷川 亘, 村山 雅史, 井尻 暁, 廣瀬 丈洋, 浦本 豪一郎, 星野 辰彦, 田中 幸記, 山本 裕二, 濱田 洋平, 岡﨑 啓史, 徳山 英一 沿岸海洋研究 59 (1), 21-31, 2021

    高知県須崎市野見湾では,白鳳地震によって水没した村『黒田郡』の伝承が語り継がれているが,その証拠は見つかっ ていない.そこで本研究では,野見湾内で海底調査を行い『黒田郡』の痕跡を探索した.その結果,海底遺構の目撃情報 がある戸島北東部の海底浅部(水深6m~7m)に,面積約0.09km2の沖側に緩やかに傾斜する平坦な台地を確認した. …

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  • 豊かな海-1.「豊かな海」という理念

    関口 秀夫 沿岸海洋研究 59 (1), 59-68, 2021

    日常生活における「豊かさ」の意味を,次に「豊かな社会」の定義と測度を明らかにし,社会や個人にとって「豊かさ」 が何を意味しているのかを検討する.これらの検討を踏まえ,環境・水産行政における豊かさを,次に生態学における豊 かさを明らかにする.

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  • 南極域における観測データの再現性の高い数値モデルの開発と海洋棚氷相互作用の研究

    中山 佳洋 海の研究 29 (6), 233-244, 2020-11-15

    <p>従来,南極氷床は安定で質量は大きく変動しないと考えられていた。しかし,過去20年程度の各国の研究によって,南極大陸の氷の損失が年間約0.3 mm 程度の海面上昇に寄与していることが明らかになってきた。南極沿岸域の大陸棚上へ流入する高温の水塊が,棚氷を融解/ 薄化させ,南極大陸から海への氷の流出を加速させているためである。特に,南極の氷損失の70%以上がアムンゼン海東部で起きているとされ,国…

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  • 海洋における酸素非発生型好気性光合成細菌の巧妙な生残戦略

    高部 由季 海の研究 29 (6), 189-216, 2020-11-15

    <p>海洋において,細菌が溶存有機物を利用することで始まる微生物ループは,炭素循環の駆動システムとして重要である。微生物ループは,細菌が原生生物に捕食されることで高次栄養段階へと有機物を転送する役割を担っている。酸素非発生型好気性光合成細菌(aerobic anoxygenic phototrophic …

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  • 北部薩南海域におけるメソ動物プランクトン群集の時空間変動

    小針 統, 山崎 朱音, 遠藤 有紀, 久米 元, 小森田 智大, 一宮 睦雄, 幅野 明正, 有田 洋一, 牧野 文洋 海の研究 29 (6), 217-232, 2020-11-15

    <p>北部薩南海域におけるメソ動物プランクトン群集組成,現存量(個体数密度および生物量),タンパク質合成酵素活性の時空間変動を明らかにした。メソ動物プランクトン現存量では時間および空間変動の両方が,タンパク質合成酵素活性では時間変動が卓越した。メソ動物プランクトン群集中ではカラヌス目およびポエキロストム目カイアシ類が優占し,多変量解析では鹿児島湾口部で季節的に遷移する6系群,湾外の季節性に乏しい…

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  • 海洋マイクロプラスチックの採取・前処理・定量方法

    中嶋 亮太, 山下 麗 海の研究 29 (5), 129-151, 2020-09-15

    <p>海洋マイクロプラスチック汚染は,海洋が直面する地球規模課題の1つであり,近年,海洋マイクロプラスチック(MPs)に関する膨大な数の論文が出版されている。MPs をモニタリングする重要性が増す一方で,MPs の調査・計測手法は発展途上の段階にあり,多くの研究者が最適な手法を模索している。海洋MPs …

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  • 海水標準物質の現状と将来展望 ─栄養塩CRMをはじめとして─

    村田 昌彦, 青山 道夫, チョン 千香子, 三浦 勉, 藤井 武史, 光田 均, 北尾 隆, 笹野 大輔, 中野 俊也, 永井 直樹, 児玉 武稔, 葛西 広海, 清本 容子, 瀬藤 聡, 小埜 恒夫, 横川 真一朗, 有井 康博, 曽根 知実, 石川 賀子, 芳村 毅, 内田 裕, 田中 辰弥, 粥川 洋平, 脇田 昌英 海の研究 29 (5), 153-187, 2020-09-15

    <p>海洋の長期変動を捉えるためには,海水標準物質が不可欠である。例えば,栄養塩は19世紀末の海洋学の黎明期の頃から世界各海域で測定が行われており,海洋の環境変動を捉えるのにも十分なデータ量の蓄積がある。しかし,栄養塩データに基づいた長期変動の解析は皆無に近い。これは,データの比較可能性を保証する標準物質が無かったことに起因している。現在,日本発で日本初でもある海水標準物質である栄養塩認証標準物…

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  • 我が国の小学校における海洋教育現場の課題―実践報告のテキストマイニングによる分析結果―

    小熊 幸子 海の研究 30 (4), 57-83, 2020-07-27

    <p>日本における海洋教育の普及・推進に向けて今後取り組むべき課題を調べるために,海洋教育の実施内容と現場のかかえる問題について,2017 年度「海洋教育パイオニアスクールプログラム」(PSP)参加小学校の成果報告を解析した。最初に,外的要因として学校と海の距離に着目して,取り組み内容や協力機関の選択傾向を調べた。その結果,体験活動のテーマは海からの距離が選択傾向に反映されるテーマと,距離との関…

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  • 東京湾平均海面基準の日本沿岸平均水位分布とその季節・経年変動

    寄高 博行, 花輪 公雄 海の研究 29 (4), 107-128, 2020-07-15

    <p>水準測量の2000年度平均成果を用いて,外洋に面する全国の沿岸で,東京湾平均海面基準の1998年から2007年までの10年間の平均水位分布を求めた。1969/1972年度平均成果によるものとの大きな違いは,九州沿岸で18~36 cm,四国沿岸で10~24 cm平均水位が高いと見積もられたことである。その結果,北海道を除く九州・四国・本州の沿岸は,10年間の平均水位が空間的にほぼ一様な4つの…

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  • 日本近海における海面水温の十年規模変動

    吉田 久美, 北村 佳照, 中野 俊也 海の研究 29 (2), 19-36, 2020-03-15

    <p>日本近海の海面水温(SST)に見られる十年規模変動の特性を,大気循環場との関係や季節による相違に着目して調べた。日本近海を対象とした経験的直交関数(EOF)解析の結果から,通年の第1モードは冬季の第1モードに,通年の第2モードは夏季の第1モードに対応し,日本近海SSTの十年規模の主な変動が冬季と夏季における卓越モードの足し合わせで表現できることが分かった。冬季の第1モードの空間パターンは九…

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  • 黒潮・対馬暖流域における栄養塩動態を中心とした低次生態系の解明

    児玉 武稔 海の研究 29 (2), 55-69, 2020-03-15

    <p>日本近海域の環境の解明は,海洋と海洋資源を持続可能な形で利用する上で必須である。本稿では,黒潮・対馬暖流域において,日常的に観測されている栄養塩濃度ならびに動物プランクトン個体数に着目した低次生態系に関する筆者の研究を紹介する。まず,栄養塩環境について黒潮域,東シナ海,日本海対馬暖流域の各海域で異なる特徴の栄養塩環境が存在していた。四季を通じた黒潮の観測からは,下層からの栄養塩供給の時空間…

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  • 海洋學談話會から日本海洋学会創立への道と初期10年

    黒田 一紀 海の研究 29 (2), 37-53, 2020-03-15

    ...ここでは,「海洋學談話會」の発起,内容,切掛けおよび母体から日本海洋学会創立への紆余曲折の経緯を調べたので,関係科学者の役割も含めて報告する。</p><p><b>キーワード:</b>海洋<b> </b>學談話會,海洋学会,日本海洋学会,宇田道隆,日高孝次</p>...

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  • 南半球の海面水温に現れる経年から十年規模変動に関する研究

    森岡 優志 海の研究 29 (1), 1-17, 2020-01-15

    <p>南半球の亜熱帯から中緯度の海面水温に現れる経年変動は,海盆の南西部と北東部に異なる符号の海面水温偏差を伴い,亜熱帯ダイポール現象として知られる。亜熱帯ダイポール現象に伴う正(負)の海面水温偏差は,混合層厚が平年より薄く(厚く)なった結果,日射による混合層の加熱が強まって(弱まって)生じることが本研究で明らかになった。また,混合層厚の偏差は,亜熱帯高気圧の変動に伴う潜熱フラックスの偏差による…

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  • 短波海洋レーダによる波浪研究の進展と課題

    久木 幸治 海の研究 29 (3), 91-106, 2020

    <p>短波海洋レーダによる波浪研究の現在までの進展について紹介する。短波海洋レーダが受信する波浪からの後方散乱電波のドップラースペクトルには,波浪を構成している全ての自由波成分が関与している。このため,ドップラースペクトルから波浪スペクトルを推定することが可能である。その推定手法には,半経験的な手法,パラメータ適合による手法,線形インバージョン法,非線形インバージョン法がある。この中で,半経験的…

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  • 東シナ海から日本海への栄養塩輸送

    森本 昭彦, 柴野 良太, 高山 勝巳 沿岸海洋研究 58 (1), 59-60, 2020

    東シナ海から日本海へは対馬暖流により栄養塩が水平的に輸送されている.この水平的に輸送される栄養塩量の変化は 日本海の低次生態系,特に対馬暖流域の基礎生産を変化させる.対馬海峡における観測結果から,対馬海峡を通過する栄 養塩量の経年変化が大きいことが分かっているがその変動要因は明らかになっていない.本研究では低次生態系モデルを …

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  • 東シナ海:物理的観点から

    松野 健 沿岸海洋研究 58 (1), 49-51, 2020

    東シナ海における海洋物理現象,特に海面水温,黄海冷水,黒潮,長江希釈水,海水位の長期変動について,最近の文 献に基づいて主なものを紹介した.気象庁は,東シナ海の北部と南部海域における海面水温が,100年でそれぞれ1.23̊C および1.18̊C 上昇していることを示し,これらは全球平均に比べてかなり大きな値になっている.海面水温を含めて, …

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  • 富山湾におけるブリ,スルメイカ,ホタルイカの 漁況と日本海の海洋環境との関係

    小塚 晃, 北川 慎介, 南條 暢聡, 辻本 良 沿岸海洋研究 58 (1), 81-86, 2020

    富山湾では400年以上も前から定置漁業が盛んであり,暖水性の回遊魚を中心に漁獲してきた.主要漁獲物であるブリ, スルメイカおよびホタルイカについて,漁獲変動と海洋環境との関係を調べた.ブリでは,日本周辺海域の海水温の上昇 に伴い分布域がオホーツク海まで拡大し,2000年代後半以降に北海道の漁獲量が急増した.また,南下期である冬季の富 …

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  • 津軽海峡シル地形上の海面にストリーク帯を形成する内部波の観測とモデル実験

    山口 卓也, 磯田 豊, 伊藤 海彦, 向井 徹, 小林 直人 海の研究 29 (3), 71-90, 2020

    <p>成層期の津軽海峡西口付近における合成開口レーダ(SAR)の人工衛星海面画像には,2~3 本のストリーク帯(同一水塊内の海面収束帯)を伴う内部波群が映し出され,その波長は数100 mのオーダであった。このような内部波群のほとんどは,浅いシル(海堆)地形付近で観測された。シル上に捕捉されたようにみえる内部波群の経時変化を捉えることを目的に,2017年の夏季,高周波計量魚群探知機を用いた25時間…

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  • 豊後水道の急潮と底入り潮

    武岡 英隆 沿岸海洋研究 58 (1), 19-43, 2020

    豊後水道は,豊かな水産物の産地であるばかりでなく我が国最大規模の養殖生産地でもある.これらを支えている急潮 と底入り潮の研究の歴史,それらの物理的特性,基礎生産や水産への影響などを総括する.

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  • 東シナ海と日本海の植物プランクトンの変化:衛星データを中心に

    石坂 丞二 沿岸海洋研究 58 (1), 53-55, 2020

    日本の縁辺海の東シナ海・日本海でも水温の上昇が報告され,温暖化による生態系の影響が懸念される.一方でこの海 域は人間による富栄養化の影響も大きいことが知られている.ここではこれらの海域での,衛星で測定したクロロフィル a 濃度の変化について報告する.過去の研究の10年スケールにおいても,最近の20年スケールの観測においても,東シナ 海ではクロロフィルa …

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  • 現場観測と人工衛星リモートセンシングによる富山湾の アマモ場の時空間変動の把握

    寺内 元基, 原田 恭行, 松村 航, 前田 経雄 沿岸海洋研究 58 (1), 75-76, 2020

    富山湾におけるアマモ場の時空間変動を明らかにするため,水中ビデオカメラによる底質の現場観測データと人工衛星 画像を用いて,氷見沿岸のアマモ場の抽出を試みた.2016年の水中ビデオカメラによる現場観測(6月下旬~7月上 旬,11月下旬~12月上旬の2回実施)で得られた底質情報を主に用いて(岩礁性藻場のみ2017年のデータを一部使 用),2016年3月17日に観測されたRapidEye …

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  • 沿岸海域の栄養塩濃度管理

    柳 哲雄 沿岸海洋研究 58 (1), 11-18, 2020

    世界の沿岸海域は1960年代以降,陸からの過大な栄養物質負荷により生じた,富栄養化による不健康な沿岸海域生態系 という状況に悩まされている.このような富栄養化問題の対策に関する世界の現状,富栄養化問題を克服するために行わ れてきた栄養物質負荷総量削減の結果生じた貧栄養化問題の現状,を紹介する.そして,沿岸海域における健康な生態系 …

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  • 物理・生態系結合モデルに基づく日本海の 溶存酸素(DO)濃度への生物学的寄与

    金 海珍, 広瀬 直毅, 高山 勝巳 沿岸海洋研究 58 (1), 57-58, 2020

    日本海の深層では,溶存酸素(dissolved oxygen:以後DO と省略)濃度が長期的に低下し続けている.DO 濃度の減少 に関してGamo et al.(1986)1)は3つの要因:1.深層・底層水の形成量が減少あるいは停止;2.深層に沈み込む有機物の 増加;3.深層水と底層水の鉛直混合の強化,を可能性として例示している.これまでの研究では,要因1がDO 濃度の …

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  • 富山湾の動物プランクトン

    井口 直樹 沿岸海洋研究 58 (1), 77-79, 2020

    富山湾では動物プランクトン生活史についての研究が1990年代に多く行われた.富山湾の動物プランクトンの生態的特 徴についてこれら結果に基づいて紹介する.その後1997年からは富山湾で動物プランクトンの生物量や種組成の長期変動 を把握するためのモニタリングが開始された.この動物プランクトンモニタリングの方法,結果の一部について報告す る.

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  • 物質輸送の観点から:陸から海へ

    張 勁 沿岸海洋研究 58 (1), 71-73, 2020

    地球温暖化が直接かかわる地球規模での変動把握に関する化学海洋学国際的な枠組みを紹介し,日本沿岸の海洋循環構 造,特に日本海に寄与する対馬暖流による物質とエネルギー輸送について概説した.こうした海洋循環規模での変動を背 景として,陸から海への物質輸送に関して顕著な特徴を持つ富山県と富山湾にズームインし,気候変動が陸から海への物 …

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  • 地球温暖化と藻場:日本海を中心としたアカモク分布の変化

    小松 輝久, 水野 紫津葉, 佐川 龍之, 高山 勝巳, 広瀬 沿岸海洋研究 58 (1), 61-63, 2020

    地球温暖化の影響は,水温上昇などを通じて固着生活を送る底生生物の分布域変化として現れる.長崎県の褐藻ホンダ ワラ類藻場(ガラモ場)では,温帯性から亜熱帯性への種組成の変化が既に報告されている.日本周辺ではホンダワラ類 アカモクは流れ藻を構成する卓越種で広域に分布する.そこで,沿岸の2000年2月と8月の表面水温分布をもとにアカモ …

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  • 温故知新:過去7000年にみられる対馬暖流の流量変動と駆動因子

    堀川 恵司, 小平 智弘, 池原 研, 村山 雅史, 張 勁 沿岸海洋研究 58 (1), 69-70, 2020

    日本海南部で優先する浮遊性有孔虫Neogloboquadrina incompta のMg/Ca 水温換算式を日本海13地点の表層堆積物から 作成した.また,佐渡沖で採取されたピスコンコア試料から,N. incompta を拾い,N. incompta のMg/Ca 水温換算式を使 い過去7,000年間の佐渡沖表層水温をおよそ100年程度の時間解像度で復元した.N. incompta …

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  • 深海の化学合成生態系動物群集の幼生分散過程

    矢萩 拓也, Chen Chong, 川口 慎介 海の研究 28 (4-5-6), 97-125, 2019-12-25

    <p>深海熱水噴出域を代表とする海底下流体湧出場には,深海底環境では「ありえない」規模の高密度で生息する動物群集がある。化学合成微生物を一次生産者とするこの動物群集が「深海底に飛び石状に分布する生息域間をどのように移動しているのか」という問いは,その発見以来40年にわたって研究者を魅了し続けてきた。最も一般的な学説は,底生動物が初期発生段階(卵・幼生期)に浮遊して移動する「幼生分散説」である。本…

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  • 初夏の噴火湾表層時計回り水平循環流の数値実験

    小林 直人, 磯田 豊, 堀尾 一樹 海の研究 28 (4-5-6), 51-74, 2019-12-25

    <p>初夏の噴火湾で観測される最も顕著な物理現象は,表層の時計回り水平循環流システムである。本研究では典型的な成層期を想定し,(1)河川供給に伴う淡水化,(2)津軽Gyre 水の密度流的流入,(3)海面熱供給の3 つを強制力とした数値モデル実験を行い,この循環流の形成過程を調べた。その結果,この循環流の励起に寄与する基本的な物理的要因は,海面加熱強制により生じる「地形性貯熱効果」であることがわか…

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  • サブメソスケール現象 ─これまでの成果と観測研究の展望─

    伊藤 大樹, 纐纈 慎也, 須賀 利雄 海の研究 28 (4-5-6), 75-95, 2019-12-25

    <p>海洋前線やメソスケール現象に伴い全球海洋に遍在するとされるサブメソスケール現象は,エネルギー輸送や生態系,物質循環において重要な役割を果たす可能性があることから,理想化したモデル実験や現実的な条件下のシミュレーション等を用いた研究が近年活発である。数値研究により力学的・生物地球化学的重要性の理解が進む一方で,時空間スケールの小さな現象であるために,現場観測による研究は少ないのが現状である。…

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  • 多様な湿潤密度を有する 礫質土砂環境の硬度評価の研究

    梶原 直人, 佐々 真志 海の研究 28 (3), 41-50, 2019-06-15

    <p>礫浜の潜砂環境としての底質硬度について,湿潤密度との関係は殆ど知見が存在しない。本研究では,粒径や形状が一定で,密度が異なる6種類の基質(細礫)を用いて,海水で飽和させた地盤の湿潤密度を測定した。同時に,4種のベーンと2 種のトルク計によるベーンせん断抵抗及びデジタルフォースゲージによる貫入抵抗を測定し,礫底の硬度測定法としての適性を検討・考察すると共に,礫質硬度と湿潤密度の関係を明らかに…

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  • 海洋大循環のエネルギー収支に関する数値モデリング研究

    浦川 昇吾 海の研究 28 (2), 19-40, 2019-03-15

    <p>海洋大循環と呼ばれる大洋・全球スケールの循環は,亜熱帯循環などに代表される風駆動の風成循環と海面浮力フラックス駆動の熱塩循環に大別される。後者の熱塩循環は,高緯度域での局所的な深層水形成とその他の広大な海域での深層水湧昇によって特徴付けられる深層循環である。本循環による多量の深層水輸送は多くの熱・物質輸送を伴い,気候形成・維持に重要な役割を果たすと考えられており,その駆動メカニズムに多くの…

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  • 海洋の炭素・窒素循環における微生物・ウィルス群集の役割に関する研究

    永田 俊 海の研究 28 (1), 1-18, 2019-01-15

    <p>溶存有機物を起点として細菌から原生生物やウィルスへとつながる微生物食物連鎖(微生物ループ)は,海洋の炭素・窒素循環の駆動システムとして重要な役割を果たしている。しかし,中・深層における微生物ループの変動や制御機構については未解明の点が多く,海洋生物地球化学モデルへの微生物過程の組み込みは依然として初歩的な段階にある。筆者は,1990年代に,深層における細菌の地理的分布に着目した研究を行い,…

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  • Thorpe 変位を用いた鉛直渦拡散係数の推定

    和方 吉信, 水江 謙二郎 沿岸海洋研究 57 (1), 15-19, 2019

    海底乱流境界層の乱流鉛直渦拡散係数を,混合距離理論を用いて推定する方法を提案した.地衡流下の海底近くに発達する乱流をラージ・エディ・シミュレーション(LES)を用いて解き,その出力結果の解析から新しい鉛直渦拡散係数の 推定方法を導出した.混合距離理論の混合距離としてThorpe 変位を用いることにより,渦拡散係数はKT=LT4/3 ε1/3のように計算できる.ここでLT はThorpe …

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  • センサによる硝酸塩鉛直乱流拡散フラックスの計測

    長谷川 大介, 田中 雄大, 松野 健, 千手 智晴, 堤 英輔, 中村 啓彦, 仁科 文子, 小針 統, 吉江 直樹, 郭 新宇, 長井 健容, 奥西 武, 安田 一郎 沿岸海洋研究 57 (1), 59-64, 2019

    新学術領域研究課題「海洋混合学の創設」において,海洋の基礎生産を支える栄養塩供給過程のうち,硝酸塩の鉛直乱 流拡散フラックスの正確な定量化を目的として,乱流計に小型の硝酸塩センサを搭載することで,センサによる硝酸塩鉛 直乱流拡散フラックスの計測を実現した.本稿では,本計測手法の詳細と,計測誤差を考慮したデータ処理手順につい て,実際の計測値を用いて議論を行う.

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  • 福岡湾の栄養塩濃度と植物プランクトン種組成の 18年間(1993-2010年)の変化

    里道 菜穂子, 江﨑 恭志, 多田 邦尚 沿岸海洋研究 56 (2), 133-141, 2019

    1993年から2010年までの福岡湾の栄養塩濃度と植物プランクトンの種組成の変化について検討した.溶存態無機窒素 (DIN)濃度はおおむね横ばいで推移したが,溶存態無機リン(DIP)濃度は経年的に低下した.クロロフィルa(Chl a) 濃度は1993-2000年には低下傾向を示し,2001-2005年は低位横ばいで推移した後,2006-2010年の期間は上昇し …

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  • 播磨灘における海洋環境と植物プランクトンの長期変動解析

    西川 哲也 沿岸海洋研究 56 (2), 73-78, 2019

    播磨灘に設けた19定点において,1973年4月から毎月1回,月の上旬に実施している海洋観測調査結果のうち,2008年12月まで36か年のデータセットを解析した.植物プランクトンの年平均細胞密度は,溶存態無機窒素(DIN)濃度の変動と同調し,1970年代に高く,1980年代前半に大きく低下した.構成種の大部分は珪藻であったが,珪藻の種組成は1980年代前半に大きく変化した.すなわち,それまで構成種…

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  • 激甚な産業公害から過栄養,富栄養へと急激に変化した 内湾の水質に対する植物プランクトン群集の応答

    山田 真知子, 多田 邦尚, 柳 哲雄 沿岸海洋研究 56 (2), 87-95, 2019

    将来の植物プランクトン組成を予測するためには,過去の水質環境とそれに応答した植物プランクトン組成が解明され なければならない.北九州市洞海湾は,魚影が認められないほどの著しい産業公害,これを脱却後は高濃度のアンモニアによる過栄養そして現在は富栄養と,水質改善が急速に進んだ内湾である.一方,植物プランクトン調査は栄養細胞について1980年から開始されたが,それ以前の産業公害期の植物プランクトン組成…

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  • 縁辺海や沿岸域における鉛直混合過程

    吉川 裕 沿岸海洋研究 57 (1), 5-13, 2019

    乱流は,現象そのものは小さいものの,鉛直混合を通じて大規模な海洋変動に影響を与える.これらの鉛直混合は,一 般に海底や海面付近の境界層で大きく,また内部重力波が砕波する密度躍層内でも無視できない.沿岸域や縁辺海域では,これらの層が全体に占める割合が大きく,外洋よりも混合の影響が大きいと考えられる.これらの海域における様々な規模の海洋現象をより正しく理解するには,混合をもたらす物理過程のさらなる理…

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  • 海底混合層内の懸濁粒子動態

    古市 尚基, 東 博紀, 杉松 宏一, 大村 智宏, 越川 海, 長谷川 徹, 山田 東也, 南部 亮元, 帰山 秀樹 沿岸海洋研究 57 (1), 21-30, 2019

    粒径別粒子濃度に関する現場観測を行い,海底混合層変動と懸濁粒子動態の関連性について検討した.観測結果からは 密度成層条件下において海底混合層が形成され,粒径区分毎の粒子濃度が海底混合層の外側で顕著に減少する結果(特徴 1),海水密度分布が一様な場合に各粒径区分の粒子が全水深にわたって広範囲に分布する結果(特徴2)が確認され, …

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  • 黒潮上流から続流の鉛直混合過程とその影響に関する考察

    長井 健容 沿岸海洋研究 57 (1), 43-58, 2019

    日本沿岸を流れる黒潮は,流域の気象や海象,生態系に多大な影響を及ぼす.これまでの研究によって,北大西洋のガ ルフストリームと同様に,表層で貧栄養である黒潮は,その亜表層では栄養塩を下流へ運ぶ栄養塩ストリームであること が明らかとなっている.本稿では,この黒潮の上流から下流である黒潮続流で発生する重要な鉛直混合過程と,その影響 …

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  • 海底地形上での潮汐混合を引き起こす内部重力波に関する考察

    日比谷 紀之, 永井 平 沿岸海洋研究 57 (1), 39-42, 2019

    潮汐流が海底地形と相互作用することで励起される内部重力波は海洋中における「乱流混合」を引き起こし,外洋だけ でなく沿岸域においても重要な役割を果たしている.本研究では,これまでほとんど議論されることがなかった「沿岸域 での短波の内部重力波」に関して考察を行った.その結果,沿岸域において粗い海底凹凸地形を考慮した場合,強い潮汐 …

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  • 沿岸環境と植物プランクトン増殖~現場観測と室内実験~

    多田 邦尚 沿岸海洋研究 56 (2), 97-103, 2019

    沿岸海域の海水中で植物プランクトン増殖の窒素源になると考えられるのはNH4 +,NO3 -,NO2 -,尿素および溶存遊離 アミノ酸である.これらの窒素源が実際の沿岸海域の海水中で,どの程度の濃度で存在するのかを検討した.さらに,複数の窒素源が同時に存在する環境下において,現場での優占種である植物プランクトンが,どの窒素源を利用するのかについて,主にこれまで著者のグループが得た現場観測と室内実験…

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  • 播磨灘南部における植物プランクトン群集構造の長期変動と 増殖特性の関係(Skeletonema 属を例に)

    帰山 秀樹, 本田 恵二, 長谷川 尋士, 宮川 昌志, 吉松 定昭, 多田 邦尚 沿岸海洋研究 56 (2), 79-85, 2019

    播磨灘南部海域における物理・化学パラメータならびに植物プランクトン細胞密度について1987年から2017年の期間に おける変動についてとりまとめた.水温,塩分,透明度に明瞭な長期変動傾向は認められなかった.一方で,栄養塩のう ち溶存態無機窒素の経年的な減少が顕著であった.植物プランクトン群集においては珪藻類の優占度が経年的に増加するこが明らかとなった.細胞密度の平年偏差の季節,経年変動を見るとN…

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  • 植物プランクトンの生理と窒素代謝に与える鉄の影響

    工藤 勲, 國分 治代, 宮本 真希子, 野入 善史 沿岸海洋研究 56 (2), 106-114, 2019

    現在,海洋における植物プランクトンの生長制限因子としての鉄の重要性は広く認識されている.しかしながら,亜寒 帯北太平洋域,赤道湧昇域,南極海において栄養塩が一年を通して豊富であるにもかかわらず,植物プランクトン現存量 の指標であるクロロフィルが低いというパラドクスに関して,この20年間に世界の海洋学者の間で活発な議論が行われて …

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  • ラグランジアン的にみた植物プランクトンブルーム

    木田 新一郎, 伊藤 貴充 沿岸海洋研究 57 (1), 73-75, 2019

    春季に起きる植物プランクトンブルームは海洋生態系を支える一大イベントである.これまで,ブルームの発生の有無 は海面混合層の深さがコントロールパラメータだと考えられてきた.しかし近年,乱流混合の強さの重要性も提唱されて いる.ブルームの発生メカニズムの検証にはNPZD モデルが幅広く活用されているが,海洋の流れ場と結合させる際, Eulerian Framework …

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  • 海底斜面上のtidal straining と懸濁物質の輸送過程

    遠藤 貴洋, Kirstin Schulz, 吉川 裕, 松野 健, 和方 吉信, 李 根淙, Lars Umlauf 沿岸海洋研究 57 (1), 31-37, 2019

    海底斜面近傍で,背景場の密度成層の斜面への射影として生じる水平勾配が,潮汐流の鉛直シアーによる変形“tidal straining”を受けることで,流れが斜面を駆け上る時に斜面下方の高密度水が乗り上げて成層が不安定化し,斜面を駆け 下る時に斜面上方の低密度水が乗り上げて成層が安定化する潮汐周期の変動が存在することが,夏季の東シナ海陸棚域に …

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  • 大阪湾における植物プランクトンの長期変動と 有毒渦鞭毛藻Alexandrium tamarense の大増殖

    山本 圭吾 沿岸海洋研究 56 (2), 63-72, 2019

    大阪湾における過去40年間の物理,化学環境の長期変動と植物プランクトン群集への影響について概観するとともに,近年大きな問題となってきた春季の麻痺性貝毒原因渦鞭毛藻Alexandrium tamarense の大規模増殖の要因について,同湾におけるモニタリング調査で得られた知見を合わせ考察した.大阪湾では水温,透明度で増加傾向,溶存無機態窒素(DIN),溶存無機態リン(DIP),クロロフィルa …

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  • 瀬戸内海表層水における1990年代と2010年代の溶存無機態 および有機態窒素濃度の比較

    朝日 俊雅, 阿保 勝之, 阿部 和雄, 多田 邦尚 沿岸海洋研究 56 (2), 123-131, 2019

    近年,瀬戸内海ではノリの色落ちに代表される低栄養塩濃度が問題視されている.一方で,瀬戸内海全域での栄養塩濃度の季節変動およびその経年的な変化はよく分かっていない.本研究では,1990年代と2010年代の瀬戸内海全域の各季節の溶存無機態窒素(DIN)および溶存有機態窒素(DON)濃度の測定結果を比較し,20年の間に起こった栄養塩濃度の変化について,その詳細を明らかにした.瀬戸内海全域,全季節の平均…

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  • トカラ海峡上流域から下流域におけるプランクトン群集組成, 現存量および生産力の変化

    阿部 美穂子, 小針 統, 本間 大賀, 金山 健, 加留 福太郎, 吉江 直樹, 長谷川 大介, 仁科 文子, 内山 正樹, 東 隆文, 中村 啓彦 沿岸海洋研究 57 (1), 65-72, 2019

    黒潮に沿ったラグランジュ的な海洋観測と標本採取を行い,トカラ海峡を通過する黒潮の上流域と下流域のプランクト ン群集組成,現存量,生産力を比較した.トカラ海峡より黒潮下流域では表層の水温や塩分が低くなり,亜表層の栄養塩 濃度やクロロフィルa 濃度が増加した.動物プランクトン分類群組成には地点間差が見られず,いずれの地点でも微小 …

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  • 太平洋側北極海における海氷衰退によるプランクトン群集への影響

    松野 孝平 海の研究 27 (6), 217-230, 2018-11-15

    <p>近年の太平洋側北極海における海氷衰退が,プランクトン群集に与える影響を評価した著者らのこれまでの研究を紹介する。太平洋側北極海におけるマイクロプランクトンおよび動物プランクトンの現存量は,海盆域と比べて陸棚域(チャクチ海)で高く,これは栄養塩豊富な太平洋水の流入に起因していると考えられた。チャクチ海の動物プランクトン群集の個体数およびバイオマスは,海氷衰退後の2007/08年には,海氷衰退…

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  • 石黒鎮雄博士の業績

    小栗 一将 海の研究 27 (5), 189-216, 2018-09-15

    <p>戦後間もない時代に中央気象台,続いて長崎海洋気象台に勤め,1960年に渡英した海洋学者,石黒鎮雄博士(1920-2007)は,2017年ノーベル文学賞を受賞した小説家,カズオ・イシグロ氏の父として紹介される機会が多い。しかし博士については,海洋の潮位や波高の研究に携わった研究者であったことと,人生の大半を英国で過ごしたこと以外,あまり知られていない。石黒博士は1940年代末から電子工学や物…

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  • GitとRedmineを用いた気象研究所共用海洋モデル「MRI.COM」の開発管理

    坂本 圭, 辻野 博之, 中野 英之, 浦川 昇吾, 山中 吾郎 海の研究 27 (5), 175-188, 2018-09-15

    <p>著者らの海洋大循環モデル「気象研究所共用海洋モデル(MRI.COM)」は,開発が始まってから20 年近くが経過し,気象研究所と気象庁の様々な部門で利用されるようになるとともに,ソースコードの大規模化・複雑化が進んだ。このような状況の下でも,バグの混入や意図しない影響を抑えながらモデルを効率的に開発するため,現代的なソフトウェア開発で用いられるツールと手法を取り入れ,開発管理体制を一新した。…

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  • 宗谷暖流沖合域の冷水帯を伴った日周期渦流の観測とモデル実験

    飯田 博之, 磯田 豊, 小林 直人, 堀尾 一樹 海の研究 27 (4), 155-174, 2018-07-15

    <p>2016 年夏季に宗谷暖流沖合域で実施したCTD ならびにXBT とADCP を用いた25 時間連続往復断面観測で得られた詳細な流れ場と水温場の時間変化データの解析によって,冷水帯を伴った日周期渦流が宗谷暖流沖合を横切る様子を初めて捉えた。観測された冷水帯下部は,ほぼ均一な高塩分水で占められており,その起源は日本海中層水であることが示された。数値モデル結果を使用したトレーサー実験によって,…

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  • 植物プランクトン動態および生元素循環に対する海洋酸性化の影響評価

    杉江 恒二 海の研究 27 (3), 125-140, 2018-05-15

    <p>大気の二酸化炭素濃度(CO<sub>2</sub>)の増加に起因する海洋酸性化は,世界中で進行している環境変化である。この環境変化が多くの生物に影響を及すことは明らかになってきたが,海洋生態系の基盤を成す植物プランクトンに及す影響,特に海洋酸性化とそれ以外の要因との複合影響については,ほぼ未解明である。そこで著者らは,鉄制限海域であるベーリング海海盆域においてCO<sub>2</sub>と…

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  • 熱帯と沿岸域の湧昇現象の変動とその予測の研究

    土井 威志 海の研究 27 (3), 141-154, 2018-05-15

    <p>熱帯と沿岸域における湧昇現象の変動は,海洋物理の重要な研究対象であるだけでなく,水産や気候の変動にも強く影響するため,豊かな応用可能性のある大変魅力的な研究対象である。特に,湧昇と気候変動モードの相互関係の理解を深め,その変動の予測に成功すれば,我々の日々の生活の安全・安心に直接的に貢献できる。本稿では,このような湧昇現象の研究の中で,今回の受賞の対象となった著者らの研究,1)熱帯大西洋の…

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  • 北太平洋亜熱帯循環系の海洋独自に発生する7~8年周期変動

    白鳥 健太, 山田 優貴, 松浦 知徳 海の研究 27 (2), 97-123, 2018

    <p>海洋大循環モデルを用いて,風応力時間一定の下で長期シミュレーションを行ない,北太平洋亜熱帯循環(ST)域の海洋独自に発生する長周期変動を調べた。ST域での経験直交関数解析から,空間モード1は黒潮続流の流軸の南北移動のモードで,空間モード2と3はST域内を7~8年の長周期をもって西南西の方向へ伝播する傾圧ロスビー波海盆モードであることが示された。STおよび黒潮再循環と黒潮続流再循環の強さの7…

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  • 太平洋数十年規模気候変動と海洋潮汐18.6年周期変動との関連性

    建部 洋晶, 長船 哲史 海の研究 27 (1), 3-18, 2018

    <p>海洋潮汐と気候との関連性を調べるにあたり,太平洋数十年規模気候変動に関する観測及びモデリングの先行研究をまとめ,今後展開すべき研究の方向性を議論した。北太平洋中緯度気候は,現実には大気を介した熱帯からの影響を多分に受けている。また,観測結果からその存在が報告されている約20年周期の気候変動は,大気海洋結合系自励振動として,潮汐変動がなくとも生じると考えられている。数100年間にわたるプロキ…

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  • 潮汐18.6年振動に伴う鉛直混合変動と海洋20年変動

    長船 哲史, 田中 祐希 海の研究 27 (1), 19-30, 2018

    <p>地球赤道面に対する月の軌道傾斜角は約5°の振幅をもって18.6年周期で振動している。これに付随した起潮力の変動に対応して,内部潮汐波の微細散逸過程に起因する海水の鉛直混合強度も同じ周期で変動していると考えられる。この鉛直混合変動が,北太平洋及びその縁辺海における海洋中の物理及び生物化学変量に見られる約20年周期の変動に寄与している可能性が指摘されている。この仮説を支持するいくつかの結果が観…

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  • 地球システムモデルに組み込む海洋生態系モデルの開発

    渡辺 路生, 野口(相田) 真希, 羽島 知洋 海の研究 27 (1), 31-41, 2018

    <p>人為的に排出された二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)のうち,大気に残留したCO<sub>2</sub>は地球温暖化を,海水に溶け込んだCO<sub>2</sub>は海洋酸性化を引き起こす。また,工業的窒素固定は,全球窒素循環を人為的に変化させるため,陸域・海洋での生物生産および炭素循環に影響を与えている可能性がある。現在,IPCC次期評価報告書に向け,人間活動が地球環境に与えている…

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  • 気候変動が水産資源の変動に与える影響を理解する上での問題点と今後の展望

    伊藤 進一, 船本 鉄一郎, 志田 修, 上村 泰洋, 髙橋 素光, 白井 厚太朗, 樋口 富彦, 小松 幸生, 横井 孝暁, 坂本 達也, 郭 晨颖, 石村 豊穂 海の研究 27 (1), 59-73, 2018

    <p>気候変動が水産資源の変動に与える影響を理解するために,これまで様々な研究が行われてきた。しかし,水産資源生物の生残にとって最も重要と考えられる仔稚魚期に,水産資源生物が実際に経験した環境を観測できないことが,1つの問題となってきた。本稿では,これまで行われてきた研究の概要をまとめるとともに,気候変動に対する水産資源の応答を調べる方法として,仔稚魚の耳石日周輪幅による成長履歴の推定,耳石酸素…

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  • 持続可能な沿岸海域管理法開発プロジェクトの概要

    柳 哲雄 沿岸海洋研究 56 (1), 3-11, 2018

    環境省は,2014~2018年度,環境研究総合推進費による“戦略的研究開発領域”S13「持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発,研究代表者:柳哲雄」を実施している.この研究は,瀬戸内海(閉鎖的沿岸海域),三陸沿岸(開放的沿岸海域),日本海(国際管理が必要な沿岸海域)の三海域を実験海域として,それぞれの沿岸海域管理のために解明が必要とされる自然科学的諸問題の答えを明らかにするととも…

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  • アマモ場海域に見られる多様な微細藻類群集の時空間分布と生物生産構造における意義

    辻 泰世, 門谷 茂 沿岸海洋研究 55 (2), 91-95, 2018

    本研究では,水深が浅くアマモが繁茂する汽水域における水柱,堆積物表層,アマモ葉上の微細藻類バイオマスの時空間変動を同時評価することを目的とし,北海道東部の汽水湖:風蓮湖において観測調査を行った.まず,水柱の植物プランクトン(PPL)と,海底から再懸濁した底生微細藻類(BMA)・アマモ葉上付着藻類(EMA)(両者を併せて,懸濁態底生系微細藻類(SMPB)と総称)の空間分布を調査した.風蓮湖では表層…

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  • 瀬戸内海における栄養塩濃度管理法

    西嶋 渉 沿岸海洋研究 56 (1), 13-19, 2018

    水質総量削減によって,瀬戸内海への窒素およびリンの陸域負荷は1980年代と比較してそれぞれ40%,61%減少したが,この減少量に対応した基礎生産量の減少は瀬戸内海全面積の約6%にすぎないChl. a 濃度が10μg l-1以上の海域で起こっていた.一方,瀬戸内海全面積の約94%を占めるChl. a 濃度が10μg …

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  • 沿岸海域における栄養塩濃度決定要因と堆積物

    多田 邦尚, 中嶋 昌紀, 山口 一岩, 朝日 俊雅, 一見 和彦 沿岸海洋研究 55 (2), 113-124, 2018

    沿岸海域における海水中の栄養塩濃度低下と栄養塩循環に係る海底堆積物の役割について,主に著者のグループが得た知見を総合して考察した.瀬戸内海は高度経済成長期には著しく富栄養化が進行したが,1973年の瀬戸内法の施行以降には,栄養塩濃度は徐々に減少している.特に無機三態窒素(DIN)濃度の減少は主には瀬戸内法の効果と考えられるが,それだけでは説明できない.著者らのこれまでの研究結果を総合して考えると…

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  • 瀬戸内海における栄養塩濃度等の水質変化とその要因

    阿保 勝之, 秋山 諭, 原田 和弘, 中地 良樹, 林 浩志, 村田 憲一, 和西 昭仁, 石川 陽子, 益井 敏光, 西川 智, 山田 京平, 野田 誠, 徳光 俊二 沿岸海洋研究 55 (2), 101-111, 2018

    1972~2013年の約40年間にわたる浅海定線調査データをもとに,瀬戸内海における栄養塩濃度などの水質や海洋環境の長期変化傾向を明らかにした.水温は温暖化の影響で上昇しており,特に秋季の上昇率が高かった.透明度は,大阪湾を除く瀬戸内海では1990年代以降,大阪湾では2000年以降に上昇した.瀬戸内海の栄養塩濃度は減少傾向であった.DIN濃度は,大阪湾を除く瀬戸内海では1970年代に急激に低下し…

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  • 海氷域の変動とその海洋循環に与える影響に関する研究

    大島 慶一郎 海の研究 27 (2), 75-96, 2018

    <p>海洋の大規模な中深層循環・物質循環は,極域・海氷域での海氷生成による高密度水生成が起点になっている。全海洋の深層に広がる底層水が作られる南極海のような極海では,観測の困難さによって,海氷生成及び中深層水の形成・循環は十分わかってはいなかった。衛星マイクロ波放射計データによる薄氷厚アルゴリズムが開発され,熱収支計算を組み合わせることで海氷生産量を見積もる手法が考案された。南大洋の海氷生産量マ…

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  • 北太平洋域における10年規模の気候変動と海洋低次生態系の応答

    野口(相田)真希, 千葉 早苗, 田所 和明 海の研究 27 (1), 43-57, 2018

    <p>北太平洋における10数年規模の気候変動に関連した海洋生態系の変化について,これまで多くの研究が行われてきた。その代表的な事例として,1976/77年に発生した気候シフトに関する研究が挙げられる。これらの研究では,観測や数値モデルによって,1976/77年に発生した気候シフトがプランクトンから魚類に至る海洋生態系に大きな影響を与えたことが示されている。また,ここ約半世紀の間,北太平洋の広域で…

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  • 日本海三階層管理の提案

    吉田 尚郁, 張 勁, 森本 昭彦, 柴野 良太, 広瀬 直毅, 高山 勝巳, 郭 新宇, 王 玉成, 眞野 能, 吉江 直樹 沿岸海洋研究 56 (1), 31-38, 2018

    日本海は多国間に囲まれる国際的閉鎖性海域である.また,その上流域には東シナ海が位置し,対馬海峡を通じて海水や熱,して様々な物質が日本海へと運ばれている.さらに近年は,地球温暖化が日本海の海水温にも影響を及ぼしていることが報告されているほか,中国における急速な経済発展が東シナ海を通じて及ぼす影響など,様々な変化にさらされている.このような状況にある日本海において,その沿岸海域の管理を検討するため,…

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  • 長崎県五島列島北部沿岸海域における栄養塩の季節的・空間的変動

    土屋 健司, 江濱 睦人, 安永 佳秀, 中川 裕子, 平原 南萌, 岸 正敏, 水林 啓子, 桑原 ビクター伸一, 戸田 龍樹 沿岸海洋研究 55 (2), 125-138, 2018

    東シナ海東部に位置する五島列島は日本有数の好漁場として知られているが,近年急激に漁獲量が減少している.同時に,クロメやノコギリモクなどによって構成される豊かな藻場も減少し,深刻な磯焼けが進行している.本研究では長崎県五島列島新上五島町東部海域における栄養塩の季節・空間変動を明らかにするため,2012~2013年にかけて各季節ごとに調査(全51測定点)を実施した.夏季から秋季にかけてPO43-は全…

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  • 沿岸域における二枚貝の二次生産量の現状と経験式の構築

    小森田 智大 沿岸海洋研究 55 (2), 87-89, 2018

    沿岸域の主要な分類群の1つである二枚貝類について,物質循環と関係するパラメーターの1つに二次生産量がある.本研究では二枚貝の二次生産量研究に関する既往の知見を取りまとめ,(1)報告件数の地域的な特徴から課題を抽出し,(2)経験モデルの精度向上を目的とする.筆者が取りまとめた全81報の文献について,ヨーロッパや北アメリカからの報告が大半を占める一方で,アジア諸国,オセアニア,アフリカでは報告数が1…

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  • 海草藻場における炭素循環

    渡辺 謙太, 所 立樹, 茂木 博匡, 門谷 茂, 桑江 朝比呂 沿岸海洋研究 55 (2), 97-100, 2018

    海草藻場は沿岸生態系の中で最も生産力の高い生態系の一つである.堆積物中への有機炭素貯留量は陸上を含めた他の生態系と比べても大きく,近年ではブルーカーボンという言葉と共に,重要な炭素貯留場であることが広く認識されるようになった.また,海草藻場が発達する沿岸浅海域は陸域由来炭素の分解の場であるためCO2の放出源であると認識されてきたが,河口域の海草藻場では年間を通じて正味のCO2吸収源になりえること…

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  • 沿岸海域の生態系サービスと里海のサステイナビリティ評価

    仲上 健一 沿岸海洋研究 56 (1), 39-47, 2018

    沿岸海域の生態系サービスの経済評価は,生物多様性の保全という観点のみならず,将来の地域計画策定においても重要な情報を提供する.本論では,生態系サービス研究の系譜を整理するとともに,沿岸生態系に対する人間活動の営為を基本としたシナリオによりその将来的価値は大きく変化することを紹介した.沿岸海域の生態系サービスを基本とした沿岸海域のサステイナビリティ性を総合的に評価することは,沿岸生態系の保全並びに…

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  • 有明海奥部,塩田川河口域におけるノリ色落ち原因植物プランクトンの出現動態

    松原 賢, 三根 崇幸, 伊藤 史郎 沿岸海洋研究 55 (2), 139-153, 2018

    珪藻類のSkeletonema 属およびEucampia zodiacus,渦鞭毛藻類のAkashiwo sanguinea,ラフィド藻類のFibrocapsa japonica は有明海奥部においてノリ漁期にブルームを形成し,ノリの色落ち被害を与える有害な植物プランクトンである.これら植物プランクトンの現場海域における増殖特性を明らかにするため,有明海奥部の塩田川河口域において,2008年4月…

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  • 干潟域における一次生産と無機化過程;高松市新川河口干潟域の調査研究から

    一見 和彦, 東薗 圭吾, 山口 聖, 山口 一岩, 多田 邦尚 沿岸海洋研究 55 (2), 79-86, 2018

    瀬戸内海備讃瀬戸に位置する新川河口干潟域において,長年にわたる調査研究からその一次生産性と無機化について再検証を行った.干潟の水柱および表層堆積物では,珪藻類が主体となって夏季に最大となる一次生産性を示した.干潟の堆積物表層で高い一次生産速度が得られることはすでに知られているが,水柱の一次生産速度も,単位面積当たりの値としては沿岸海域で観測されるものと類似したが,単位容積当たりのそれは高水温期を…

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  • 開放性内湾を対象とした沿岸環境管理法の研究:南三陸志津川湾の例

    小松 輝久, 佐々 修司, 門谷 茂, 吉村 千洋, 藤井 学, 夏池 真史, 西村 修, 坂巻 隆史, 柳 哲雄 沿岸海洋研究 56 (1), 21-29, 2018

    里海手法は,適度な人手をかけることにより,太く長く滑らかな物質循環と,大きな環境負荷をかけない漁業の両方の 実現を目指す沿岸域管理の手法である.外洋の影響を強く受け,海水交換が大きいリアス式の開放性内湾では,海面養殖が盛んである.このような湾の一つである南三陸の志津川湾を対象に,里海手法による沿岸環境管理法の開発に取り組んでいる.リモートセンシングで,魚介類の産卵・摂餌場となる藻場の分布を調べた…

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  • 海上風による慣性振動の励起と近慣性内部重力波 の海洋中への伝播に関する理論研究

    井上 龍一郎 海の研究 26 (5), 217-225, 2017-09-15

    <p>海上風によって混合層に励起される慣性振動のエネルギーの一部は,近慣性内部重力波として海洋内部を伝播し,最終的にそのエネルギーを散逸させる。この一連の過程を理解するために,本稿では,気象擾乱の海洋表層混合層での慣性周期へのエネルギー注入量の見積もり方法,混合層から海洋内部への近慣性内部波の放射過程の定式化,海洋内部での近慣性内部波の伝播の様子の定式化を紹介する。</p>

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  • 北太平洋乱流ホットスポットでの鉛直混合強度の観測的知見

    田中 雄大 海の研究 26 (5), 151-174, 2017-09-15

    <p>アルゴフロート観測を含めた近年の広範囲の観測によって,鉛直混合強度の時空間分布に関する知見が飛躍的に蓄積されている。特に,海底地形の起伏が激しい海域の海底付近や,外力(潮汐・風)の大きな海域で,鉛直混合が強化される傾向がある事が分かってきた。本総説では,北太平洋の乱流ホットスポットとして,ハワイ海域,伊豆・小笠原海域,黒潮・黒潮続流域,東シナ海,ルソン海峡・南シナ海,千島海域,親潮・混合水…

    DOI Web Site Web Site 参考文献162件

  • 北太平洋の中・深層循環とその変化・ 変動の観測的研究

    纐纈 慎也 海の研究 26 (5), 189-201, 2017-09-15

    <p>主に北太平洋の中・深層における観測に基づく大規模循環場の研究動向について調査を行った。他の海盆と比較すると比較的緩やかとされる北太平洋の中・深層における子午面循環にあっても,ある観測断面を横切る流れから推定される等密度面を横切る流れの長期平均についてこれまで得られている見積もり結果の各々の間には大きな差があり,その差は特に北太平洋中緯度以北で大きくなっている。こうした見積もりの不確定性は,…

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  • 海洋大循環モデルにおける鉛直混合パラメタリゼー ションと太平洋深層循環に関する研究

    羽角 博康 海の研究 26 (5), 203-208, 2017-09-15

    <p>海洋大循環モデルにおける鉛直混合の表現方法について,特に太平洋深層循環という観点に基づき,これまでの研究をレビューし,今後の方向性を議論する。深層における鉛直混合の主要因は内部潮汐であると考えられており,海底地形の起伏に伴う内部潮汐の励起と励起源近傍での散逸に焦点をあてた研究がこれまで多く行われてきた。今後は遠方伝播する内部潮汐の散逸過程を適切にパラメータ化することが大きな課題である。</…

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  • 海洋表層混合層における乱流混合に関する研究

    吉川 裕, 遠藤 貴洋 海の研究 26 (5), 239-250, 2017-09-15

    <p>本総説では,海洋表層混合層における乱流混合過程をとりあげる。乱流運動のエネルギー源を基に,表層混合層内の乱流を風成乱流(シアー乱流),対流,波成乱流(ラングミュア乱流)に分類し,それぞれの乱流のメカニズムと,付随する混合に関する最新の研究と課題を述べる。また,これらの乱流混合のパラメタリゼーションについての大枠を示し,現状と課題を述べる。</p>

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  • 全球規模の海洋環境再現の精緻化と鉛直混合に関する研究

    増田 周平 海の研究 26 (5), 209-215, 2017-09-15

    <p>海洋の鉛直混合が子午面循環をはじめとする海洋循環の動態に本質的な役割を担っていることが知られている。全球的な鉛直混合の観測の拡充に伴い,鉛直混合観測データを用いた海洋環境再現に向けての新たな挑戦がはじめられている。本論文では,その礎となる海洋学における数値モデルを利用したデータ統合研究の進展に触れながら,鉛直混合観測データを用いた海盆スケールの海洋環境再現の現状と将来的な鉛直混合観測の統合…

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  • 海洋深層の乱流混合過程に供給される内部波エネルギーのグローバル分布に関する研究の進展と課題

    丹羽 淑博 海の研究 26 (5), 175-188, 2017-09-15

    <p>海洋中・深層の乱流混合は,深層大循環の強さやパターンをコントロールする重要な物理過程である。この乱流混合の基になるエネルギーは,潮汐流や地衡流が海底地形の上を通過したり,大気擾乱の移動に伴って風応力が変動したりすることによって励起される内部波のエネルギーが乱流スケールにまでカスケードすることによって供給される。本稿では特に内部波の励起過程に着目し,近年,理解が大きく進展した潮汐起源の内部潮…

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  • 黒潮の流路・流量変動の研究

    中村 啓彦 海の研究 26 (4), 113-147, 2017-07-15

    <p>本総説の目的は,黒潮流路と流量の季節変動と経年・十年規模変動について,ルソン島沖から九州東岸沖までを俯瞰し,海域毎の共通点と相違点を認識することによって,より包括的な黒潮理解の枠組みを築く手がかりを示すことである。特に,季節変動を支配する力学を掘り下げる。例えば,黒潮流路の季節変動については,ルソン海峡での黒潮のループ流路,台湾北東方の黒潮の陸棚上への貫入,九州東方の黒潮小蛇行といった鍵現…

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  • 衛星による海洋基礎生産力の推定

    平譯 享, 高尾 信太郎, 鈴木 光次, 西岡 純, 渡邉 豊, 伊佐田 智規 海の研究 26 (3), 65-77, 2017-05-15

    <p>海洋の物質循環や生態系の時空間変化を考える上で,海洋植物プランクトンによる基礎生産を大きな時空間スケールで正しく推定することが必要不可欠である。そのため,海色リモートセンシングによる基礎生産の推定が行われている。本稿では,基礎生産を推定するためのモデルの発展と改良についてその概要を紹介する。また,海色リモートセンシングで得られたクロロフィル<i>a</i> …

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  • 鉄を含めた物質循環モデルの現状と課題

    三角 和弘, 津旨 大輔 海の研究 26 (3), 95-111, 2017-05-15

    <p>鉄は高栄養塩-低クロロフィル海域において基礎生産を制限する一方,窒素制限海域において窒素固定生物の生産を制限しており,海洋の物質循環を理解する上で重要な栄養素である。海洋の二酸化炭素吸収量の推定のため,3次元の海洋物質循環モデルが1990年代に発展した。しかし,鉄がモデルで考慮されるようになったのは,観測データが不足していたこともあり,2000年以降になってからであった。時空間的に限られた…

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  • 北太平洋亜寒帯における鉄の供給過程

    小畑 元, 金 泰辰, 西岡 純 海の研究 26 (3), 79-93, 2017-05-15

    <p>北太平洋亜寒帯は,1年を通して表層水中の栄養塩が枯渇しない代表的な高栄養塩・低クロロフィル(HNLC)海域の1つであり,海水中の微量必須栄養塩の鉄の不足によって植物プランクトンの増殖が制限されていることが知られている。このため,北太平洋亜寒帯域における一次生産を理解するためには,鉄の分布や供給過程を明らかにする必要がある。しかし,鉄は観測時に汚染を受けやすく,海水中の濃度レベルが極めて低い…

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  • 西部北太平洋亜熱帯域における海洋表層変動の解析的研究

    杉本 周作 海の研究 26 (2), 45-61, 2017-03-15

    <p>海洋表層には黒潮のような大規模循環があり,海域に固有の水温や塩分などで特徴付けられる水塊が分布する。筆者は,西部北太平洋亜熱帯域を対象に,海洋表層変動およびその気候変動における役割についての理解を深めるために解析的研究に取り組んできた。一連の研究を通して,(1) 冬季海面水温偏差再出現現象の三次元構造の理解,(2) …

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  • 日本の海洋データ同化研究

    藤井 陽介, 蒲地 政文, 広瀬 直毅, 望月 崇, 瀬藤 聡, 美山 透, 広瀬 成章, 長船 哲史, 韓 修妍, 五十嵐 弘道, 宮澤 泰正, 豊田 隆寛, 干場 康博, 増田 周平, 石川 洋一, 碓氷 典久, 黒田 寛, 高山 勝巳 海の研究 26 (2), 15-43, 2017-03-15

    <p>第2 回世界気象機関(WMO)大気・海洋データ同化シンポジウムが東京で開催され,それをきっかけにデータ同化夏の学校が開始されたのは1995年のことである。それから20年あまりの間に,日本における海洋データ同化の研究は,黒潮大蛇行の予測の成功や4次元変分法大気海洋結合データ同化システムの開発など,世界に伍する成果を上げてきた。そして現在では,海況予測等を目的とした海洋データ同化システムが現業…

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  • 貧栄養海域におけるピコ・ナノプランクトン 栄養動態に関する研究

    佐藤 光秀 海の研究 26 (1), 1-13, 2017-01-15

    <p>ピコ・ナノ植物プランクトンは外洋における主要な一次生産者であり,食物網の起点である。本論文ではピコ・ナノ植物プランクトンの組成と分布,栄養獲得,被食過程について著者らが行ってきた研究の内容と成果を概説する。はじめに,フローサイトメトリーにより代表的なピコ・ナノ植物プランクトングループの分布やサイズ組成を明らかにし,その生理的な特徴や環境因子と分布を関連づけた。つづいて,ピコ・ナノ植物プラン…

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  • 2段階のアクティブラーニングを用いた地域社会と連携した海洋教育

    吉江 直樹 沿岸海洋研究 55 (1), 11-15, 2017

    海に関わる次世代の人材を育成するためには,大学での高等海洋教育だけではなく,近年「海離れ」が深刻化している 小中高生に,海への関心を高めてもらう必要がある.そこで私たちは,養殖業生産額日本一を誇りながらも若年層の海離 れが進む愛媛県宇和島市において,地域社会と連携した体験型海洋環境教育のアクティブラーニングを実践することによ …

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  • 放射性物質と海洋生態系

    石丸 隆, 伊藤 友加里, 神田 穣太 沿岸海洋研究 54 (2), 143-149, 2017

    2011年3月11日の福島第一原発事故により大量の放射性物質が海洋生態系に拡散した.我々は同年7月以降,ほぼ半年ごとに練習船による調査を行ってきた.プランクトンネット試料のCs-137濃度は時間とともには低下せず,大きく変動した.原因は,オートラジオグラフィーにより確認された高セシウム線量粒子の混在であると考えられる.ベントスでは,事故当初は原発近傍とその南側で高い濃度のCs-137が観察された…

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  • 沿岸海洋関連の実務において期待される応用研究 -研究の高度化と総合化を目指して-

    柴木 秀之, 鈴山 勝之, 白木 喜章 沿岸海洋研究 55 (1), 51-60, 2017

    沿岸海洋域を対象とするコンサルタント実務においては,現地の流動・水質・生態系の状態を分析し,実現象を定量的 に説明することが可能な解析技術が求められる.多種・多様で複雑な実現象を主要な成分に分解し,各成分の論理的な説明と量的な再現を行うとともに,個別の成分を合成することにより,複雑な実現象そのものを高い精度で表現する.この …

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  • 水産高校としての教育の現状と大学への期待

    川添 博 沿岸海洋研究 55 (1), 45-49, 2017

    水産高校の多くは時代の変化や少子化の影響により,学校の統廃合が進み,「水産高校」から海について総合的に学ぶ 「海洋高校」へと変わってきている.しかし,水産業や海運業の後継者育成という役割は変わっていない.現在,各高校 は地域との連携やボランティア活動等の様々な取組を行い,学校の発展に向けて努力している.また,大学への進学を希望する生徒もおり,より専門知識や技術を高めたいと願っている.今後,大学と…

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  • 気象庁東経137度線の創始と増澤譲太郎博士

    黒田 一紀 海の研究 26 (6), 251-258, 2017

    <p>気象庁が1967年に始めた東経137度線の海洋観測は,2016年に50年目を迎えた。フィリピン海中央部に位置する観測線は,亜熱帯循環の主な海流系を横切り,その半世紀にわたる観測資料は,海況や物質循環および気候の長期変動に関わる有用な成果を産出してきた。本総説では,増澤譲太郎博士による137度線の創始を可能にした条件を3つ挙げ,それらに関わる経緯を詳述することにより,今後の本観測線の継承およ…

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  • 水圏環境リテラシー教育推進プログラムの成果と課題

    佐々木 剛 沿岸海洋研究 55 (1), 23-32, 2017

    2006年に閣議決定された第3期科学技術基本計画において「国民との科学技術対話」が盛り込まれ,高等教育機関では科学コミュニケーターの養成が活発化した.東京海洋大学では2007年より水圏環境リテラシー教育推進プログラムを立ち上げ,海洋を含めた水圏に関する科学技術対話を促進させる役割を担う水圏環境教育推進リーダーの養成に取り組み,水圏環境教育の理念に基づいた水圏環境リテラシーの普及を行ってきた.水圏…

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  • 放射性物質の分散シミュレーションに影響を及ぼす 沿海域海況変動過程とその再現性

    升本 順夫, 津旨 大輔, 郭 新宇, 内山 雄介, 宮澤 泰正 沿岸海洋研究 54 (2), 151-157, 2017

    福島第一原子力発電所から漏洩した137Cs 分散シミュレーションのモデル相互比較と,伊方発電所および浜岡原子力発電所周辺海域での仮想シナリオ実験から,分散シミュレーションに影響を及ぼす沿海域海況変動過程とその再現性について検討した.その結果,対象とする海域や季節によって重要な変動過程が大きく異なること,モデルによりそれらの再現性が異なることが分かった.より実用的な結果を得るためには,複数モデルに…

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  • 燧灘東部海域におけるクロロフィル鉛直分布の季節変動

    赤井 紀子, 大山 憲一, 益井 敏光, 宮川 昌志 沿岸海洋研究 54 (2), 203-213, 2017

    瀬戸内海中央に位置する燧灘東部海域の一次生産構造の特性を明らかにするために,クロロフィル蛍光の鉛直分布につ いて季節変動を調べた.さらに,燧灘の代表定点においてサイズ別(>20μm,8-20μm,<8μm)クロロフィルa (Chl. a)濃度,植物プランクトン出現群および栄養塩濃度を調べた.クロロフィル蛍光については,極大層が4月から6 …

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  • 大学院博士課程・ポスドクから地方公設試へのキャリアパス

    山根 広大 沿岸海洋研究 55 (1), 61-63, 2017

    水産・海洋系大学・大学院を卒業後,試験研究機関への就職を希望する学生や,水産・海洋系ポスドクにおける就職の選択肢の一つとして地方公共団体が設置した公設試験研究機関(略:地方公設試)がある.地方公設試は大学や企業とは研究スタンスが異なり,研究者個人の科学的興味というよりは,むしろ,各自治体の施策に基づいて試験研究が計画され,現場や行政のニーズに応えるための試験研究を行うことが必要である.地方公設試…

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  • 水産実験所における実習の高度化に向けて ~「教育関係共同利用拠点」と「水産海洋実践教育ネットワーク」~

    征矢野 清, 盛田 祐加 沿岸海洋研究 55 (1), 39-44, 2017

    水産実験所は,水産・海洋系の学部あるいは学科で学ぶ学生に,水産生物やその生息環境を体験的に理解させる場であり,将来,水産業や海洋産業に携わる研究者や技術者養成に必要不可欠な経験を提供する場である.しかし各大学の水産実験所で行われている実習は,実験所の教員の専門に偏っており,学生が体験できる内容は限られている.そこで水産・海洋系の大学間で連携した実習を展開し,これまで以上に幅広い経験と知識取得を可…

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  • 魚類の汚染機構

    重信 裕弥 沿岸海洋研究 54 (2), 173-179, 2017

    東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故に伴い放出された放射性セシウムが福島県沖の魚類に取り込まれた機構について,水産庁公表データと水産研究・教育機構の調査結果に基づき分析を行った.コウナゴ等の小型浮魚の放射性セシウム濃度は事故直後に高濃度が検出されたが,海水濃度の低下と共に速やかに低下した.高次捕食魚のマグロ・カツオ類の放射性セシウム濃度は,事故直後に数十Bq kg-1 wet …

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  • 海の出前授業:日本海洋学会講師派遣事業

    上野 洋路, 小埜 恒夫, 森岡 優志, 藤井 直紀, 藤井 賢彦, 轡田 邦夫, 原田 尚美 沿岸海洋研究 55 (1), 65-70, 2017

    ...日本海洋学会では,多くの日本人にとって身近な存在である海をきっかけに,小中高校生に「理科」そのもの,更には 海洋への興味を育んでもらう事が出来ないかと考え,主に小学校・中学校・高等学校からの要望に応じて「海」の専門家 である海洋学会員を派遣し,授業または講演を行うことができる仕組みを2016年に創設した.2017年2月末現在,登録講 師は39名,内容に関しては,海水・波・海流など海の物理に関する授業...

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  • 三陸沿岸の流況

    田中 潔, 羽角 博康, 小松 幸生, 伊藤 幸彦, 柳本 大吾, 坂本 天, 石津 美穂, 浦川 昇吾, 道田 豊 沿岸海洋研究 54 (2), 97-104, 2017

    三陸沿岸の流況を明らかにするために,高解像度の海洋物理観測を実施した.また,観測研究に連携させて,高解像度 モデルによる数値シミュレーション研究も実施した.その結果,小さいリアス湾であっても,その中では非常に組織的で ダイナミックな海洋循環が作られていることが明らかになった.さらに,このような基礎科学研究を,地域社会(地元の …

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  • 有明海湾奥西部の鹿島川感潮域における高栄養塩・高クロロフィル水塊と 沿岸の冬季珪藻ブルームとの関係

    山口 聖, 松原 賢, 増田 裕二, 三根 崇幸, 伊藤 史郎 沿岸海洋研究 54 (2), 193-201, 2017

    有明海湾奥西部域の冬季珪藻ブルームの発生要因を調べるために,2012年から2015年の11月-3月に沖合域定点観測を,2014年から2015年に鹿島川感潮域の観測を行った.結果として沖合域に位置するStn.1では,すべての年で水温が10℃を下回った時期に珪藻ブルームが発生し,それに伴い栄養塩が減少したが,その後もブルームは維持された.一方で河川から栄養塩の供給がある感潮域は,珪藻類の増殖とバイオ…

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  • 三陸の沿岸漁業を支えるブルーインフラの大津波後の復興過程*

    小松 輝久, 大瀧 敬由, 佐々 修司, 澤山 周平, 阪本 真吾, サラ ゴンザル, 浅田 みなみ, 濱名 正泰, 村田 裕樹, 田中 潔 沿岸海洋研究 54 (2), 117-127, 2017

    2011年3月11日の東日本大震災は,東北地方の沿岸に甚大なる被害を与えた.津波は,沿岸漁業の社会的インフラである,港,市場,漁船,養殖筏はもちろんのこと,魚介類の再生産の基盤である沿岸のエコトーンであり自然的インフラである藻場など(本論文ではブルーインフラと定義)にも被害を及ぼした可能性があった.そこで,岩手県大槌湾および宮城県志津川湾において,藻場の被害状況とその後の変化を調べた.海藻藻場の…

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  • 2011年東北地方太平洋沖地震以降5年間の 三陸沿岸大槌湾における栄養塩環境の変化

    福田 秀樹, 楊 燕輝, 高巣 裕之, 西部 裕一郎, 立花 愛子, 津田 敦, 永田 俊 沿岸海洋研究 54 (2), 105-116, 2017

    2011年3月11日の2011年東北地方太平洋沖地震に伴う大津波の襲来により,三陸沿岸の内湾域では海岸地形の変化や堆積物の流出といった物理的な攪乱が生じたほか,藻場や干潟の流出,漁業施設や都市機能の損壊など,湾内の物質循環系を取り巻く環境に変化が生じた.我々は震災以降,五年間にわたって岩手県のリアス海岸の中ほどにある大槌湾を対象に栄養塩類の分布に対する大津波の影響を検討してきたが,本論文では,既…

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  • 水産・海洋系学部・大学院の学生動向,教育の現状と連携の必要性

    梅澤 有, 福田 秀樹, 小針 統 沿岸海洋研究 55 (1), 3-10, 2017

    地方の都道府県に立地する大学の多くは,18歳人口の減少と大学進学率の停滞によって,地元からの大学進学者の割合が低下し,大都市圏から多くの学生が集まるようになっている.学生は卒業後に出身地に戻って就職をすることも多いため,今後も続くこの傾向は,地方大学の人材育成方針にも影響を与えうる.一方で,卒業生が,水産・海洋系の専門を活かして,大学院への進学や,公的機関に就職するだけでなく,多様な民間企業へと…

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  • 岩手県船越半島沖に集積した瓦礫における底生生物の分布

    土田 真二, 藤原 義弘, 高橋 幸愛, ソーントン ブレア, 河戸 勝, 屋良 由美子, 山北 剛久, 藤倉 克則, 北里 洋 沿岸海洋研究 54 (2), 129-133, 2017

    2013年10月7日,岩手県船越半島沖水深540m 地点において,無人探査機「ハイパードルフィン」による潜航調査を行ったところ,5箇所で集積した瓦礫を発見した.その場所は,発達した海底谷の入り口にあたり,瓦礫は互いに絡まった状態で塊となってパッチ状に分布していた.瓦礫は,缶類,プラスティック類,木片類,漁具類,その他に大別され,そこには,カイメン類,イソギンチャク類,クモヒトデ類,ウミシダ類,ヒ…

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  • 東海大学における海洋教育と独自の資格「海洋環境士」

    轡田 邦夫, 千賀 康弘 沿岸海洋研究 55 (1), 17-22, 2017

    持続可能な社会の構築に向けて豊かな地球環境の保全と新たな海洋開発の推進を両立させるには,海洋環境への正しい理解と実践が必要であり,その達成には「海洋に対する総合的な知識と共に海洋調査および環境分析に関する技術を有し,将来の海洋および地球環境の保全を担い,主体的に行動できる人材」が求められる.このような人材育成を目指し,東海大学海洋学部では本学独自の「海洋環境士」資格認定コースを2006年度(平成…

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  • 2011年北太平洋東北地方沿岸・沖合域における 福島第一原子力発電所事故に由来する放射性セシウムの動態

    熊本 雄一郎 沿岸海洋研究 54 (2), 135-142, 2017

    北太平洋東北地方沿岸・沖合域において2011年3月から12月にかけて測定された海水中溶存放射性セシウム濃度をとりまとめ,同年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故によって同海域に放出された放射性セシウムの動態を議論した.3月~6月に得られた測定結果は,高解像の海洋モデルシミュレーションで得られた結果と概ね整合的であったすなわち事故起源放射性セシウムの水平的な拡がりは,陸棚波に励起された南…

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  • 北海道オホーツク海沿岸域の海洋環境の季節変化と 海氷後退時期の経年変動がクロロフィルa 量に及ぼす影響

    葛西 広海, 永田 隆一, 村井 克詞, 片倉 靖次, 舘山 一孝, 濱岡 莊司 沿岸海洋研究 54 (2), 181-192, 2017

    北海道紋別市の氷海展望塔(オホーツクタワー)で行われている海洋環境モニタリングの1996-2014年のデータを用いて,オホーツク海沿岸域の表層の海洋環境の季節変動を示すとともに,冬季~春季の海洋環境の経年変動と海氷密接度の関係について解析した.オホーツクタワー周辺域の表層水温は2月中旬に最小,8月下旬に最大となった.表層塩分は1月上旬に最小(31.60)を示した後,6-10月は33台前半の高い水…

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  • 微量元素の高精度分析法の開発と海洋化学への応用

    宗林 由樹 海の研究 25 (6), 145-155, 2016-11-15

    <p>海洋の微量元素は,海洋生物の微量栄養塩,現代海洋のトレーサー,古海洋研究のプロキシ(代替指標)としてきわめて重要である。しかし,海洋の微量元素は,濃度が低い,共存物質が測定を妨害する,採水から測定までの間に目的元素が汚染混入するなどの理由により分析が難しかった。著者は,簡便かつ精確な新しい分析法を開発し,それらを海洋研究に応用してきた。本稿では,以下の二つの内容について詳しく述べる。(1…

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  • 春季黒潮続流域における黒潮水-親潮水二層構造の分布とクロロフィルa濃度の経年変動

    西川 悠, 碓氷 典久, 蒲地 政文, 田中 裕介, 石川 洋一 海の研究 25 (5), 133-144, 2016-09-15

    <p>多くの魚にとっての索餌場である春季の黒潮続流域上流の餌環境は,主として基礎生産量によって決定されている。したがって、各年の漁業資源量の予測精度を向上させるためには、基礎生産量の経年変動メカニズムを解明する必要がある。最近,親潮水が黒潮続流フロント周辺で黒潮水の下に潜り込んで層構造が形成されている所は,光合成に好適な環境であって,黒潮続流域の中でも特に生産性が高いことが報告された。この結果は…

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